読書感想『神様の裏の顔』藤崎 翔

清廉潔白で評判の元教師・坪井誠造が逝去した。
その通夜には子供から大人まで様々な人が参列し、悲しみの涙であふれていた。
坪井の娘、元教え子、同僚の教師、近所の主婦、アパートの店子…それぞれが坪井を思いその思い出を語りだしたとき、その思い出が疑惑の糸でつながっていく…。
本当に坪井は神様のような善人だったのか…それとも、その裏で巧妙に事件を繰り替えす犯罪者だったのか―――

なくなった故人を偲ぶお通夜の席で、その故人が実は犯罪者だったのではないか?そんな疑惑に取りつかれた参列者たちが、改めて個人との思い出を振り返るという…あらすじだけ聞くとしんみりしながらもぞわっと怖そうな印象を受けるが、文体としては割とコメディタッチでくすっと笑える仕上がりである。
元教師である坪井は、多くの教え子に慕われ、同僚教師にも尊敬され、所有するアパートの店子にもいい人だと認識されていた。
ところが、彼らの周りには不可解な死の気配に満ちているのだ。
昔の教え子が不可解な自殺をしていたり、同僚の不良息子が事故で大けがを負っていたり、隣人のご主人が謎の転落死を遂げていたり…
事件とも事故とも判断のつかない不穏な出来事の数々、それぞれの不可解な点が思い出話をするうちにすべて坪井につながっていってしまうのだ。
関わったすべての人がいい人だと思っていた坪井は、本当にみたとおりの善人だったのか…?
それぞれの登場人物が順繰りに故人との思い出を語りながら進むので最初は読者だけがあれ?なんかおかしくない??と気づいていくのも面白い。
そのうちに彼らはそれぞれの思い出が不穏につながることに気づき、疑惑を深めていくのだが…
疑惑の人はすでに故人のこの状況で、果たして彼らの疑惑に正しい答えは出るのか?
そして神様のようだった坪井は、本当はどんな人物だったのか??
二転三転する疑惑に思わずうなる一冊でした。

・天祢 涼『葬式組曲』

・町田そのこ『夜明けのはざま』

・本多 孝好『WILL 』

いつのころからかお葬式とか、葬儀屋題材の小説って増えたね?とか思ったり…。

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