読書感想『Timer 世界の秘密と光の見つけ方』白石 一文

君が死ぬことは、僕が死ぬことだ。

89歳までの健康長寿を保証する世紀の発明"Timer"
現在88歳のカヤコは、目前に迫る死について疑問を持っていた。
その日が来たら私の心と身体はいったいどこへ行くのか? 
知らないままにその日を迎えることに疑問を持ったカヤコは、Timerを開発し失踪したサカモト博士を探すことにする。
装着したTimerを外すことが出来れば不老不死にもなれるという噂まであり、その秘密を知りたいと願うカヤコは夫婦で情報を集め始める。


死、を89歳に設定できてしまう世界で、それを目前に迎えた夫婦がそもそも『死』とは何なのかを考えながらTimerの秘密に迫る話である。
ストーリーとしては単純で、Timerの秘密を探るために関係がありそうな事象を調べていきながら本質に迫っていくのだが、この本はその部分は割とどうでもいいような気がする…。
死とは何か?についての作者の考察を議論の俎上に載せるための物語なのではないかと感じた。
一言で『死』とはいっても、誰にそれが起こるかでその事象の持つ意味が全く違うという見解には納得だし、年老いてお互いとしか密な付き合いのない夫婦にとって片割れの死は自らの死と同義であるという考え方もおもしろかった。
小説を読んでるというより哲学書読んでるみたいな印象のほうが強くて、物語の内容があんまり入ってこなかったから余計にそう思うのかもですが…
Timer発見のきっかけや、Timerを発明し失踪したサカモト博士残した謎の言葉や、そして動けば容易に繋がっていく世界にTimerの意思を感じたりと、なんだかとっても超越的なお話でした。
そうか、自分と他者のことってこんな捉え方もあるのね…と、個人的には目から鱗みたいな考え方で興味深かった。
ちょっと読む人は選ぶかもしれないけど、個人的には面白かった。
うん、最初から最後までかなり不思議な一冊でした。

こんな本もオススメ


・白石 一文 『松雪先生は空を飛んだ 』

・森 博嗣『女王の百年密室 GOD SAVE THE QUEEN 』

・『列』中村文則

何が起こってるのかしっかり把握出来てる自信はないんだけど読んでる間は面白いんですよね…説明は…ちょっと難しい…
あと読みながら「松雪先生~」をやたら思い出したのは、作者が一緒だったのね!?とこの記事書いてて気づきました(笑)
「松雪先生~」もめっちゃ面白かったけど、感想がうまく書けなかった本です、はい

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