読書感想『快挙』白石一文

俺の一番の快挙は、みすみと一緒になった事だ―――

写真家を目指す俊彦は、撮影中にたまたま出会った『小料理屋 須磨』の店主・みすみを撮影する。
彼女に惹かれた俊彦は、その写真を届け、ほどなく彼らは結婚することになる。
自分の夢をかなえるためにそれだけに打ち込んでほしい、というみすみは俊彦が写真以外の仕事をすることを嫌った。
やがて、写真から小説へ転身した俊彦だったが、才能があるのに目が出ず次第に二人の関係にはひびが入っていってしまう。
人生の荒波にもまれ、順風満帆とは程遠い日々の中、それでも俊彦のつかみ取った『快挙』とは?


俊彦の目線で十数年の夫婦生活を追いかけながら進む夫婦小説である。
みすみは俊彦を支えることに全力を注げる、少し古風な女性なのだが、頑張りすぎる彼女は子供を流産してしまう。
そのたびに傷つきボロボロになる彼女を気遣いながら、俊彦は必死に自分の才能を生かした生き方をつかみ取ろうと藻掻くのだ。
彼には文才があるのだが、如何せん運がなく、うまくいきそうでいかないことが何度も繰り返される。
そんな中での流産や、転居、病気など人生におけるあらゆることが徐々に二人の間にひびを入れて行ってしまうのである。
それでも『夫婦』である彼らは、その関係性を続けていくための、決断と選択をしていくのだ。
夫婦とは、一緒に生きるとはどういうことなのか、俊彦にとって『快挙』とは何だったのかをじんわり考えさせられる一冊になっている。
二人の行動や選択に、微妙にえ?と思う場面もあったのだが、まぁ、世の中いろんな人がいるからなぁと自分とは違う人としてそこは気にせず、俊彦という人にとって何が大事で、必要なのか、ということを読み解いていくのがいい。
なんかいいことが起きてすっきり良かったね!!って思える本ではないのだが、最終的に俊彦が穏やかに自分の手にしたものを慈しんでいることが伝わってきて読後感は非常に良かった。
うん、人生はままならないけど、幸せにはなれるのだと思わせてくれる一冊

こんな本もオススメ


・白石一文『かさなりあう人へ』

・一穂ミチ『光のとこにいてね』

・辻村深月 『スロウハイツの神様』

誰かを想えるって良いな~~って思わせてくれる本ですね。

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