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「女性アーティストには"プロデューサーや作曲家になれ"と誰も言わない」『ショック・ドゥ・フューチャー』マーク・コリン監督・英メディアインタビュー

ジム・ジャームッシュ作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』にインスパイアされた

8月27日公開『 #ショックドゥフューチャー』は、1978年のパリで活動する作曲家のアナ(アルマ・ホドロフスキー)が、 #エレクトロ・ミュージック に出会う物語。音楽史におけるカルチャーの変化の瞬間をとらえながら、作曲の技術と、音楽への深い情熱を追求する。同時に、1968年に女性解放運動が始まった10年後の時代に女性作曲家が直面する音楽業界の #セクシズム もさりげなく映し出している。フランスでは1968年まで女性は自身の銀行口座ももてなかったほど、性差別的な社会であった。

音楽、ファッション、女性アーティストの成長物語と、現代の私たちが観ても非常にスタイリッシュで共感がもてる作品だ。音楽ファンから観ても楽しい小ネタが散りばめられている本作。

筆者は音楽に詳しくないので、今回は、UKのメディア「EYE FOR FILM」から発信された #マーク・コリン監督 のインタビューを日本語でまとめてみた。

■1978年に女性作曲家が直面した葛藤を映画にしたかった






―長年作曲家として活動してきたコリン監督ですが、音楽のアイディアを映画に表現したかったのですか? それとも映画を作りたかったのですか?

私は本当に監督をしたかったんです。実は、最初は私は映画を学んでいたんですよ。長い間、音楽の世界で活動していましたが、数年前に「今こそ映画に戻るべきだ」と思ったんです。でも、音楽をテーマにした映画を作るべきだと気づくまでには、かなりの時間がかかりました。それで、この脚本を書きました。

↑マーク・コリン監督は、国際的に活躍する音楽ユニット“ヌーヴェル・ヴァーグ”のプロデューサー。

―撮影中に音楽のイメージを持っていたのですか?

はい。1978年当時、エレクトロニックス音楽は、特にフランスでは非常に珍しかった。エレクトロニック・ウェイブとか、1978年以前のニュー・ウェイブのような音楽も作りたかった。実は、あるシンガーのために曲をかいていたんですが、「この曲は完璧だから、これを使えばいいんじゃないか」と思ったんです。それで、歌詞を少し変えて映画に使いました。


―エレクトロニック・ミュージックがフランスに入ってきたことは、監督にとっても重要でしたか?

音楽史におけるエレクトロニックの重要性を語るよりも、自分が知っていることについて話す方がいいと思いました。70年代にエレクトロニック・ミュージックをやっていた女性作曲家たちの話をするのはいいことだと思うし、当時のフランスで女性としてこの種の音楽をやることの障害については映画にしなければいけないと思ったんです。


―エレクトロニック・ミュージックの発展に貢献した女性たちについては、現在あまり知られていないようですが。

そう思います。しかし、彼女たちについての新しいドキュメンタリーが公開される予定で、認知度は高まっていますね。より多くの人が興味をもち始めています。私のこの映画もそういったムーブメントの一部になるといいなと思っています。

■女性アーティストには「プロデューサーや作曲家になるべき」とは誰も言わない






―アナが直面した性差別については、監督が見てきたことなのですか?

私が見てきたこと、そして読んだきたことが含まれています。容姿端麗でポップミュージックをやりたい女性アーティストには「シンガーになれ」とは言っても、「プロデューサーや作曲家になるべき」とは誰も言わない。

こういったことに関して、いつもおかしいと思っていました。音楽業界では、「あなたは見た目がいいから、シンガーかフロントステージの人になりなさい」というように、女性は外見が重視される。アナは歌手になりたいわけでも、スターになりたいわけでもない。ただ自分の音楽をやりたいだけなのです。

■ジム・ジャームッシュ作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』にインスパイアされた






―そういえば、モーツァルトやベートーヴェンなどの映画はありますが、現代の作曲家の生活を描いた映画はほとんどありませんね。

確かに。モーツァルトやバッハを題材にした映画はたくさんありますよね。ジャズやロックの映画もありますね。実は、#ジムジャームッシュ の『#オンリー・ラヴァーズレフトアライヴ 』という映画を見たときに、この映画のアイデアを思いついたんですよ。男がベッドルームで音楽をやっているシーンがあるんですが、ドラムやギターなど、60年代や70年代のロックを中心としたもので、私は、過去にエレクトロニック・ミュージックをやっていた人たちを映し出したかったんです。過去のエレクトロニック・ミュージシャンを題材にした映画を見たことがありませんし、存在しないんじゃないでしょうか。本当に美しいシンセサイザーの映画を観たいというのも、この映画を制作したひとつの理由です。

■インスピレーションさえあれば音楽は簡単に創ることができる






―本作は、創造することのプロセスを描いた作品としても興味深いです。

そうですね、私が見せたかったのは、特にポップミュージックにおける創造のプロセスです。多くの人々が、「一握りの天才から音楽がふってくる」と思っていますが、バンドを組んでいる人たちの間にある自由なエネルギーから音楽は生まれます。

例えば、この2人の女の子たちの間には、とてもクールで楽しい創造的なプロセスがありますよね。音楽は、インスピレーションさえあれば簡単にできてしまうんです。それを見せたかった。2人の女の子が一緒に音楽をやっているときのシークエンスは5分以上と非常に長いので、カットしてもいいかなと思ったんですが、みんなが「いや、それがこの映画の一番いいところだよ。だって曲を作るところなんて見たことがないから」と言ってくれたんです。

■創造のプロセスのなかでだけ自由な女の子たち






―2人の俳優、#アルマ・ホドロフスキー(#アレハンドロ・ホドロフスキー 監督の孫)と #クララ・ルチアーニ はシンガーソングライターでもあります。

彼女たちはシンガーソングライターで曲作りを分かっています。2、3回のテイクで、即興でやったようなものでしたね。映画の中では、常に男たちがやってきてアナを誘惑しようとしますが、曲を作るという創造のプロセスのなかでは、彼女は本当に自由なんですよね。


―セットの装飾や人々が着ている服など、当時の様子がよく表現されていることも印象的でした。

―撮影が始まる2年前には脚本を書いていましたが、制作チームを集めてから2ヶ月後に撮影を始めました。実は考える時間があまりなかったので、友達を集めたんです。デザイナーは昔からの友人ですが、衣装を担当した女性は初めての経験だったんですよ!でも、彼女は70年代のファッションが大好きで、「やってみる?」と聞いたら「もちろん!」と即答してくれました。仲の良い友人たちと一緒に作った映画なんです。

―では、撮影は楽しかったんですね。

本当に楽しかったです。「撮影を辞めたくない。続けたいんだ」って皆言っていました。とにかく、すべてが良かったですね。大きな問題もなかったし。彼らの仕事にはとても満足しています。次は、別の種類のドキュメンタリー・フィクションを撮影する予定です。

■『ショック・ドゥ・フューチャー』プレイリスト






アナとクララが作曲する『Future Shock』はハマります!

■『ショック・ドゥ・フューチャー』背景






1970年代後半。当時はエレクトロ・ミュージックの世界的なブレイク前夜。シンセサイザーやリズムマシン、シーケンサーなどの電子楽器が普及し始め、日本でも #YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)が結成された頃。未来的な音の響きに心躍らせる女性ミュージシャンのアナと友人たちを、エモーショナルに描く。主演は映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキー(『エル・トポ』)を祖父に持ち、モデルとしても活躍するアルマ・ホドロフスキー。男性優位の音楽業界で奮闘するアナを熱演。監督は音楽ユニット「 #ヌーヴェル・ヴァーグ 」の活動でも知られるマーク・コリン。スロッビング・グリッスル、スーサイド、ディーヴォ、ザ・フューチャーakaヒューマン・リーグなど、70年代後半を象徴する楽曲の数々も聴き逃せない。(プレス資料引用)

■STORY






1978年、パリ。若手ミュージシャンのアナは、部屋ごと貸してもらったシンセサイザーで、依頼されたCMの作曲にとりかかっていたものの、納得のいく曲が書けずにいた。すでにプロデューサーと約束した締め切りは過ぎ、明日の朝クライアントに提出しなければならない担当者は、何度も急かしにやって来る。なのに、シンセサイザーの機材が壊れ、修理を呼ぶ羽目に。しかし、修理に来た技術者が持っていた日本製のリズムマシン(ROLAND CR-78)に魅せられたアナは、「これがあれば、ものすごい曲を作れる」と頼み込んで貸してもらう。そこへCM曲の収録用に依頼されていた歌手のクララが現れ、話しているうちにアイデアが浮かんだ2人は即興で曲を作り始めた。果たして、大物プロデューサーも参加するはずの今夜のパーティまでに、アナは未来の音楽を完成させることができるのかー。(プレス資料引用)

https://chocfuturjp.com/

■公開情報






8月27日(金)より新宿シネマカリテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次公開

©2019 Nebo Productions -The Perfect Kiss Films -Sogni Vera Filmschocfuturjp.com

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