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自分らしさを伝える準備ができているか? 社会で頑張る大人女子にこそ観てほしい ~かもめ食堂のススメ~

「じぶんらしさ」って求められていないよな、と大学を卒業して社会に出てから感じることが増えた。
久しぶりに会った友人との会話も「うちの会社終わってるから」と、いかに自分の会社の体制がおかしいのか、面白くおかしく語ってくれることもある。

社会で働くって大変だ。会社という大きな組織では自分はハグルマの一部として動かなければならないし、社内や社外の人間関係の板挟みになったりもする。学生時代は苦手な人とは距離を置くことができていたが、会社員ともなると限度がある。皆自分の気持ちと折り合いをつけて、何とか馴染もうと努力しているようだ。私自身も自分の気持ちはいったん後回しにすることが増えたが、自分を押し殺しすぎると体調を崩すってことも分かった。

そんなことを考えていた折に、「かもめ食堂」という映画に出会った。2006年公開と少し前の映画だが、フィンランドのヘルシンキを舞台に日本人女性が「かもめ食堂」という食堂を営み、そこでのあたたかな日常や人々との出会いが描かれている。

主人公のサチエは異国の地で食堂をひらき、おにぎりや生姜焼きなど日本食を現地の人に向けて提供する。はじめはなかなかお客さんが入らなかったが、毎日営業し、コップを磨き、夕方にはプールに泳ぎに行く。いつお客さんが来てもいいように準備をし続けていた。
そんな中で最初に来てくれたお客さんにはコーヒー1杯を無料で提供し、やがて常連になってくれた。

はじめはお客さんが全然いなかったかもめ食堂も、ついに満席になる日がやってくる。これもひとえにかもめ食堂らしさを貫きつつ、出会う人との縁を大切にしたマサエの芯の強さが功を奏したのだろう。

また劇中に出てくる2人の日本人女性も素敵だ。ガッチャマンの歌を通じて知り合い居候するようになったミドリや、お酒に強くて突然森に行ってくる行動派のマサエ。なぜヘルシンキに来たのか理由は明かされていないのだが、皆なにかを求めてここヘルシンキにたどり着いている。
ミドリはかもめ食堂で働いていく中で自分らしさを取り戻していき、かもめ食堂がもっと良くなるためにいろいろな提案をするようになっていく。マサエはヘルシンキで羽を伸ばし、やってみたかったことを全力で楽しむ姿が印象的だった。

この映画を観て、はっとしたことがある。
社会に出たわたしたちが私たちらしくいるためには、準備が必要なのではないか。会社でも仕事が手一杯のときにも頼まれた仕事に「YES」といっていないか、困ったとき誰かに相談しているか。一人で抱え込んでいても状況はなかなか解決しない。言葉にしてみてやっと伝わることばかりなのだ。

口下手なわたしは、誰かが察してくれて状況が改善するのではないかと期待している節がなかったか、そう思ったのだ。

友人や恋人関係でもそう。わたしのスキ・キライを伝えない限り、気の合う人と出会い、関係を深めていくことなどできない。自分の考えの合う人と出会うには、まず自分が何者なのかを知り、それを伝える術を持つことが大切だ。スキ・キライを伝えるためにも、それを自分で判断するための軸を持っていたい。

自分の意見を伝えても、それでも状況が改善しない、しっくりこないときは、きっと環境があわないのだ。そんな時は自分らしくいられる場所を探す旅に出たらいいと思う。思い切っていってみたかった場所に行くのもいい。ゆっくり養分を蓄えて、次にやりたいことを見つける。いくつになっても自分探しをしていい、そう思わせてくれる作品だ。

わたしも一度旅に出ようかと沖縄行きのチケットを探してみた。


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