若葉ことり

北海道在住。創作にまつわるあれこれや身の周りの事を、自分らしく、書くところ。 できるの…

若葉ことり

北海道在住。創作にまつわるあれこれや身の周りの事を、自分らしく、書くところ。 できるのなら、あなたの心を揺さぶってそっと寄り添いたい。「#スポーツがくれたもの」コンテストにて、グランプリ受賞。 お仕事もご相談ください。(ページ下部「クリエイターへのお問い合わせ」よりお願いします)

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運動音痴の私が、走った。

私はスポーツとは無縁の人生を送ってきた。 とにかく、運動音痴である。 高校の時の100m走のタイムは23秒で、ストップウォッチに刻まれたタイムを見た体育の先生に 「お前、真剣に走れよ!」 などと言われたりした。真剣だっつーの。 中学の時は、部活動強制加入だったのだが、とにかく運動は嫌だったし、吹奏楽部も筋トレをすると聞き、消去法で美術部にした。本当は帰宅部がよかったなあ。 そんな私が、スポーツをした経験として、ただひとつだけ、胸に残り続ける競技。 それは、かつてテレビ朝日系

    • 小さな部屋の中、あの頃のまま

      大人になってから、学生時代に好きだったものが妙に懐かしい。妙に、そしてほとんど本能的で衝動的に。 ちなみに大人になってからというのは、たぶん「母」という役割が自分の大部分を占めるようになり、「自分」というのを見失い始めてからのことを指します。 学生時代に部屋に飾っていたあれやこれをネットで探したり、 それだけでは飽き足らず当時の部屋の間取り図を詳しく書き出してみたり。 最近の具体的な収穫物としては、 My Birthdayという当時の愛読雑誌をメルカリで買ったり、 エンジェ

      • 【詩】生命のかけら

        暑い午後惰性で皿を洗っていると 流し台に黒く光る目玉 艶々と光を受けてこちらを見据えている 互いの視線が交差し 9秒ほど寿命が縮んだ 心臓が元通りに拍動を再開した途端 その黒い目玉の正体に気付く なんだ、ただのすいかの種だ さっきまでむしゃむしゃと食らっていただろうが 流し台の前に立ったまま、人差し指でほじくり落としたその種 やけに艶めかしいのはなぜだろうな 身体は勝手に皿洗いを続けている 皿を流した水と共に目玉は排水溝へ消えたが 夏はまだ続く

        • 放課後、空き教室で

          大学受験は自己推薦だった。 小論文と面接があった。 日本文学を専攻できる学部を志望していたので、必然的に国語の先生に面接官役をしてもらうことが多かった。 ちなみに、高校受験の時の面接では、 「卒業後はネイルの専門学校に行ってネイリストになります」と言っていた。それが結局自分の原点に立ち返って文学なのだから、よくもまあ同じ人間の考えることがたった3年で変わるなあとあんぐりする。 閑話休題。 その日の面接官役の先生は、中年の男の先生だった。その先生の授業は受けたことがなく、話

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          Last Love Letter

          今年もまた、ひとつ、としをとり。 きっともう十数年、欠かさず「誕生日おめでとう」を言ってくれていた親友はいま都会の片隅で押し潰されていて、 もう三年もその言葉を聞いていない。 誕生日についてわたしが考えるのはいつもそのことだ。 三年前は、来るべきものが来なかったので、呆気にとられた気分だった。まさかそんな、狐につままれたようなとはこのことか。 二年前は、期待しないように必死で。 去年は、確か。もしかしたら、この日なら。一縷の望みを懸けるならこの日しかない。そう、思っていた

          Last Love Letter

          ただの日常、いまは非日常

          久しぶりに家の周りを散歩した。 半年ぶりくらい。 ずうっと家に籠っているうちに 夏も秋も知らないうちに過ぎていて、 もう冬のはじめだった。 冷たい空気で肺が洗われて気持ちがいい。 辺りをきょろきょろと見回しながら、 ゆっくり20分ほど歩いた。 家の玄関をくぐると、またいつもの日常に戻った。

          ただの日常、いまは非日常

          【詩】静かな鍛錬

          空っぽでただ怯えている 空っぽでただ募らせている しかし、堂々と生きたい やはり 空っぽに気付き 空っぽを恥じず 静かに、生き様を求めはじめ 吾を讃える そういえば、一昔前 清く、正しく、美しくと 言い聞かせていたような 小さい脳味噌を絞り どう在りたいかを吾に問う 問い続けよ、嘆かずに

          【詩】静かな鍛錬

          【詩】砂漠

          風が吹いても哀しくて 嵐が来ても気が付かない 砂漠になった気分が続いている ならば雨が降れば歓喜するだろうか 1年後さえ分からない時代が怖いんだ 1度きりと歌う声がしても 1年後さえ分からない人生が怖いんだ 隠れて泣いてやり過ごそうとしてる 明日さえ分からない時代が怖いんだ 誰も守ってくれないと知ったから 明日さえ分からない人生が怖いんだ それでも君を守って生きてくんだ 砂だらけでごめんよ

          【詩】砂漠

          【詩】死に物狂い

          シャンプーしているとき いいフレーズが決まって飛び出す いい匂いがしてるからかな 5分後には忘れている でもそれは いいフレーズであって こころやたましいは、宿っていない 5分後には忘れている 寝ても覚めても焼き付いているような わたしのさけびは どこに潜んでいるのだろう 夜中になるまで待って 目を背けたい過去にまみれながら 探すしかないのか 否、死に物狂いになれ

          【詩】死に物狂い

          【詩】世間知らず

          秋を生きる 世間知らずで生きる もう、傷つき易い少女ではないが 夜半が訪れる 世間知らずで生きる ずっと、死を恐れなくなるまで 愛を知っている たとえ世間知らずでも 眠りにつく瞬間、後悔ばかりしていても 本を読み映画を観ても 追体験だけでは 世間知らずのまま 外、 街は、大きく 人は、さまざま 新しいものが生み出され続ける ここで静かに、詩を生み出す

          【詩】世間知らず

          【詩】にちようびはおやすみ

          無・重力になれるピンク色の入浴剤 右側に鎮座する我が子 18分以内の保湿を命ずる そのうちに来てね王子様 懐かしいフォントと灼けるようなキャッチフレーズ 夢・気分の時代が靴の底に閉じ込められてた 牛蒡を切ればお正月のにおいがするよね 好きだったピーコートは脱いだそばから盗まれて 夜明け前にドーナツ5つ こたつの中の寝言でばれてしまう嘘 趣深い大和のリズムに漂う京都の旅物語 次から次へと投げられるお題目に水引をつけて 伝わらないゼスチュアするのは唇が腫れたから 君の咳ごと飲み込

          【詩】にちようびはおやすみ

          【詩】啓示

          ただ横たわるだけの生命維持 心臓も制御できず、 肉体の主は息を殺し、 カウントダウンに暇がない それに支配されているが ある日啓示を受ける わたしはわたしである、と どんな魔物にも侵せない、と いつも自由だった、 支配などされてはいなかった、しっかりと 精神の主は自分を生きることにして、 小さな幸福を見出した

          【詩】啓示

          【詩】渦中

          ステンレスのように思っていたきみのこころ 潤そうとしてた そして、ある夜 言葉にならない音を立てて 暗いアスファルトの上に崩れ落ちた きみを操れず じぶんを偽れず 撒き散らされていた渦の真ん中 いつだってわたしがわたしのまま 求めて求めて求め、疲れ、 美しい能力を犠牲にしながら腐敗を始めた 頭蓋骨の中から 電信柱の陰から 削ぎ落した記憶だけがすり替えられる そのうちに きみのこころは新幹線に乗り何処かへ向かっていった

          【詩】渦中

          【詩】暗号

          白紙に戻す 白紙に戻す 捲ればすぐに 巻き戻るのだが 小さな秋が蘇り ぎゅっと抱き締める、何も言えず 声を上げて泣くかもしれない あれこれ関連付けてはならない ただ、移ろうだけ 行き止まった夏が蘇り 暑いままの夜を彷徨う、完璧を求めて 逆走を許さないかもしれない 持ち去られた証の、その代償

          【詩】暗号

          【詩】予感する日

          いつもより早い帰り道、 宝石みたい太陽の粒が降り注ぐ祝福と カラスが鳴く、つくしが揺れる 綿毛の風が吹けば青い匂いの午後 知らぬ間にもう会うことのなくなる誰か 思い出す度 悲しく感じる人生だったけど 今は爽やかに感じられる どうしてかしら 出会い、別れれば、次は予感 そうやって始まってゆくと 灯台に導かれた 変わる変わってゆける 進む進んでゆける 立ち止まって、振り返るばかりだったの 四半世紀よりもっと過ぎたって どうしてかしら ただこの先を見つめて 全てを受け入れ

          【詩】予感する日

          【詩】ステンドグラスの夢物語

          いちごソーダと拙い幻想を流し込んだステンドグラス 幸せを閉じ込めておける そんな物語 森の中に棲む心優しき罰 摩天楼を見下ろす風に羽が生えた命 首都高流してくドライブレコーダー くだらないんだよ全部 自由なんてとっくに失われてる時代の 遠くの夜の煌めきだけが他人事のよに美しくて 吸い込んだ煙草の先が共鳴するだけ 何も傷つけられやしない それでいて 私ばかり血が滲んでいく 心臓に刺さったステンドグラス 霞ばかり集めた箱庭と 逃げ出してった神様を 冷めかけたコーヒーで流し込む

          【詩】ステンドグラスの夢物語