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小さな部屋の中、あの頃のまま

大人になってから、学生時代に好きだったものが妙に懐かしい。妙に、そしてほとんど本能的で衝動的に。
ちなみに大人になってからというのは、たぶん「母」という役割が自分の大部分を占めるようになり、「自分」というのを見失い始めてからのことを指します。
学生時代に部屋に飾っていたあれやこれをネットで探したり、
それだけでは飽き足らず当時の部屋の間取り図を詳しく書き出してみたり。

最近の具体的な収穫物としては、
My Birthdayという当時の愛読雑誌をメルカリで買ったり、
エンジェルブルーの靴下をしまむらで買ったり。

中学生の時、ラノベが流行っていて、もちろんわたしも好きで読んでいた。
当時親友が大興奮の様子で貸す、というより半ば押し付けてきた紅玉いづきさんの『ミミズクと夜の王』。わたしも「こんなに面白くて幻想的で、素敵なお話がこの世に存在するのか」と衝撃を受けた。久しぶりに思い出して、だけど内容を細かく思い出せなくて、図書館で借りてきた。
貸出カウンターで受け取ったその文庫本の装丁を目にして、「そうそうこれこれ。」と。娘は「ママ、これ、こわい本なの?」と。
そんなことないよ、夢みたいに美しいお話だよ。と思いながら十数年ぶりにページを捲り始めたのが今日の夕食後。
そこから、途中寝かしつけをはさむも、続きを読みたくて読みたくて寝落ちできずに布団から飛び起きて一気に読んでしまう。

言葉にできないほど、ただただ美しい。
2LDKの賃貸の、固い合板のフローリングから、
お話の中のその世界に飛んでいける。
そこではわたしは母でも妻でもなく、ただのわたしとして、美しいお話を享受するだけ。しあわせ。

8月はなんだかものすごく長かった。やっと9月。でもそんなのはただの区切りでしかなく。

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