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第35回読書会『蟹工船』を読んで(3)

今日は小林多喜二『蟹工船』の第3回でした。4から5の途中まで音読で読みました。今日はその報告記事としたいと思います。

ふと思いますが、『蟹工船』を音読で読み通した人というかグループっているのかなって思いました。それほど、不衛生極まりない船内、モノのごとく扱われる労働者、監督の極悪非道ぶり、どれをとっても凄まじい表現だったからです。

「蟹つぶし」で労働者を競わせて、勝ったものには賞品を、負けた者には焼きを入れるというルールを作って監督が労働者を酷使していました。学生はこの様子を子供の頃に寺でみた「地獄」の絵のようだと言っています。

それだけではなく、今日読んだ章では思わず鼻をつまみたくなるような「匂い」をすごく感じた回でした。

汚れた猿股から立ち上る匂い。
蟹の匂いが染み付いた、ムレた体から匂う鼻につく体臭
衣服をストーヴで炙るとそこから虱が出てきて跳ね、それを潰すと人を焼いたような匂いがする……

などなど。読んでいるだけで気持ちが悪くなるし、背中が痒くなってきます。

事実、音読のあとで参加者の皆さんとお話ししていた時、「ちょっと表現があまりにもひどく、気持ちが悪くなってしまいました」という方もいらっしゃり、そう言われるのももっともな内容でした。

しかも、それを黙読しただけでなく音読していたのですから……。

ある参加者の方が、「現代のVRで蟹工船に乗っているみたいでした」とおっしゃっていました。「VR!」たしかに、匂いにしても、今にも臭ってきそうな書き方で、労働者の生き様にしても、本当にそんな人たちが船の中でウロウロしていそうな感じがありありと伝わってきました。

「およそ100年後を生きる人間にそう言わしめる小林多喜二はなんて小説家なんだ!」と多喜二の言葉の力を感じました。

どんなにICTの技術が発展しても、人間の書く言葉はそれを越え、後世を生きる人間に伝える力を持つんだと思いました。それは凄惨な表現のなかで見つけた小さな光る真珠のようなものなのかもしれません。

5の途中まで読んで、前半の蟹工船がどんな場所かということはよくわかりました。これからどうなっていくのか、楽しみです。

今日、気持ち悪くなってしまった方も、どうかこれに懲りずに、また読書会にきてくださるとうれしいです。

次回は10月16日(土)JST 1900ー
課題本 『蟹工船』小林多喜二 5の×から

では、また!




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日本語教師でライターが日常をみつめるエッセイです。思春期子育て、仕事、生き方などについて書きます。

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