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くらす場所。

今、暮らしている場所は生まれた場所。
若い頃は転々としていたが、今はここにいる。
私が子供の頃遊んだ場所で、今は息子が遊んでいる。
そこに共存する動物も、植物も、昆虫も息子に教えてあげられる。

周りは緑に囲まれて、庭と森の区別はつかない。
夏は湿度が高く、冬は雪が積もる。
年間通して曇りの日が多い。

蛍の光が何処かへ消えると、池では蛙が大合唱する時期。
夜になると、イノシシが土を掘り返しにくるし、
たまに、サルが庭を横切る。

夏の朝は意外とひんやり。
森を抜けてきた風は夏でも冷たい。
夏休み、半袖を着て田んぼの畦道をラジオ体操に出掛ける時間は肌寒かった記憶がある。
ラジオ体操が終わって、家に戻ると縁側で祖母が畑に育った大きな干瓢の皮をむいていて、どこまで長く剥けるのか、じっと見ていた。
軒下の物干しに吊るされ、冬の保存食になっていた。

鳥の声がせず、静まり返った朝は決まって雪が積もっている。
冬は朝の4時に窓を確認。
積もっていれば雪かきをしないと車が出せない場合も。
心配をよそに、息子は大はしゃぎ。

一年を通して、草取りに追われ、放っておけば後が大変。
刈った草を野焼きするため、雨の前の日には、至る所でノロシのように煙が上がる。
一人に一台の車が必須。最寄りの駅は徒歩三十分。電車は1時間1本。
バスの路線は更に待つ事に。
とても便利とは言い難い。

ではどうして住んでいるのか?

定年退職後に田舎に移住してのんびり生活をしたいという夢を語る方もいるけど、
私は、決まって「来るなら若いうちに」と言う。
体力、気力がないと住むことは出来ない。
一人暮らしのお年寄りも多い、ゆくゆくは都会にいる若者の家へ引っ越す。
または、施設に入っていく。
朽ちていく空き家を横目で見ながら、残された人たちは生活をする。
答えは、そこで先祖代々生きてきたからだ。
田畑を守り、墓を守っていく事がこの土地に染み付いた慣習だから。

その慣習を子供に引き継がせていくべきなのか、
草をむしりながら、呪縛のように考える。
それでも生きていかなければいけないのだから。
この場所で。

最後まで読んでくださってありがとう。感謝。

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