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”職種の曖昧さ”時代の終焉と始まり

大学生の頃、飲み会でよく知らない社会人の先輩(広告代理店勤務)と同席になり、特に共通の話題もないので「広告代理店の営業って大変なんすか?」と聞いたら、

「俺は営業じゃない。アカウントエグゼクティブだ。二度と俺のことを営業と言うな」

と説教された。

私は心のなかで、(ア、アカウントエグゼクティブゥ・・?)とつぶやき、二度とこの先輩を「営業」と呼ぶのをやめようと思った(というか二度と会わないでおこうと決意した)。

思えばこの頃から「職種」というモノに興味を持ち、私が最初に選択した仕事「リクルートの求人広告の営業」にも繋がる。

ただ、リクナビの検索ボックスの「職種」を眺めれば眺めるほどよくわからなくなるし、 なんというか、ツッコミどころが満載だ。

「営業」という曖昧さ

昔、日経新聞で「世の中の新入社員の70〜80%は営業職に配属される」という記事を読んだ記憶があるが(うる覚え)、「営業」という職種、言葉の意味だけに向き合うと何をしていて、何ができる人なのかさっぱりわからない。

「商材を売る人」のことを「営業」と表現するのが一般的だと思うが、商材が有形なのか無形なのか、新規顧客に売るのか既存顧客を回って注文を取ってくるだけなのか、商材の価格や希少性等で「できる」の幅がまったく違う。

「商材を売る人」の定義でいえば、アパレルショップの店員も営業だし、スーパーのレジ打ちも営業に入っても良い気がするが、それらは求人サイトでは「販売員」という職種に分類される。

「マーケター」も広すぎる

学生がなりたい職業ランキングで常に上位争いを演じている(和田調べ)「マーケター」も定義が広すぎる。

P&G等出身の有名人の本を読むと、彼らがやっている仕事は「プロダクトマーケティング」だし、Web広告代理店が顧客に提供している職能は「セールスマーケティング」という仕事になる。

この2つの職種は共に「マーケター」と呼ぶことが可能だが、実際やっていることはまったく違う。前者はおカネを使う仕事で、後者はおカネをもらってくるのが仕事。おそらく、多くの学生がなりたいのは前者なのだが、後者の職を得たことで「わたし、マーケターになった!」と言っている人が多い印象(和田主観)。

「エンジニアになれば安泰」なわけがない

エンジニアも、それ単体が名刺に書かれているだけでは何をしている、できる人なのか、さっぱりわからない。

私がしている仕事や属している業界からすると「ITエンジニア」なのだろうが、機械を触る人もエンジニアだし、車の整備士もエンジニアである。私の祖父はお寺などにある鐘の金型を作る仕事をしていたらしいが、その仕事だってエンジニアだろうに。

「エンジニア」と書いておけば相手が「ITエンジニア」と判断してくれるだろうという態度は、傲慢にすら感じる。(また、私からするとただの「プログラマ」なのに「エンジニア」と名刺に書いているケースもある)

市場価値が高いのは「人が使いやすいITシステムを構築できる人(ITディベロッパー)」や「膨大なデータを分類して価値ある仮説を導く人(データサイエンティスト)」であって「プログラムを書ける人」ではないことを理解しないまま、プログラミングスクールが流行っているような気もする。(通っている人は周りにいないから実態はよくわからないが)

市場価値が高い人ほど職種名がよくわからない問題

営業職でいえば「ルートセールスとして決まった顧客からいつもと変わらない注文を取る」「電話でアポイントを取れる」「有形商材を売れる」「無形商材を組み合わせて顧客課題を解決できる」等を全部「営業」としてひとくくりにされている。

また、営業キャリアを積んで成果を出した人は、自社の商材を販売することに留まらず「自社の商材を販売してくれる代理店との業務提携」や「自社の商品を販売してくれる代理店の買収」といった仕事もしたりもするが、こういう仕事ができる人はなんという職種名に分類されるのだろうか。

私の古巣のGoogleでは前者は「BD(Business Development)」と呼ばれていたが、BDと言われてピンと来る人は日本のビジネスパーソンのなかにどれくらいいるのだろうか。学生のなかにどれくらいいるのだろうか。

市場価値が高い人ほど適当な職種を名乗ってくる問題

これもコトを複雑にしている事象な気がする。が、気持ちもわかる。

できることが増えれば増えるほど、説明が面倒になってくるし、自分がやっていることが世間一般的に浸透している職種でうまく分類できなくなる。

併せて「俺はアカウントエグゼクティブだ!」といった職種名にプライドを持つような気持ちもなくなる(よくもわるくも)。

自分の周りを見ても、市場価値が高いなと思う人ほど「いちお会社を経営してまーす」「フリーターでーす」「YouTuberでーす」「どぶ板営業でーす」とか言っている(ユーモアも含めて)。

何をできるのかが問われる時代かつ定義できる仕事はAIに代替される時代

with COVIDの時代は、ただ会社にいって座っていれば参加している感が出る時代の終焉で、自分が「何をできるのか」が問われる時代になっていくのだろう。

併せて、例えば「決まった会社に訪問してほぼ同じ注文を取ってくる」など、職務範囲を定義できる仕事はどんどんAI(実際にはAIを使わずともITシステムで代替できるが)に代替されていくのだろう。

上記、ほぼ決まった未来を「面白い」と思うのか「不安だ」と思うのか。反応は人それぞれ。ただどちらの感情になるにせよ、上記はほぼ、決まっている未来。

私個人でいえば、近い将来、子どもたちに「パパの仕事って何?」と聞かれたときに、なんと答えようか。

いまから考えておこうと思う。

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