「誰に届けるか」を考える。
今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
マーケティングにおける、最も広範囲に影響するフレームワークに【WHO-WHAT-HOW】というものがあります。「誰に、何を、どうやって届けるか」を考える枠組みですね。
今回は、このWHOを深掘りしてみたいと思います。
WHOを定める意義
有名マーケターの森岡毅氏はその著書の中で、ターゲットを選ぶ理由を3つ挙げています。
総マーケティング予算÷ターゲット人数=一人当たりのマーケティング予算です。この、「一人当たりのマーケティング予算」を十分なものにするためにWHOを定めます。
皆さんは、「パレートの法則」というものをご存知ですか?
「2:8の法則」とも呼ばれていますが、「売上の8割は全体の2割の顧客の売上によるもの」などというように、ある特定の要素2割が全体の8割の成果を生み出していると言われています。
上記の例で言えば、売上の8割を占めている2割の顧客にマーケティング予算を充てた方が成果が出そうですよね。
消費者それぞれのニーズはそれぞれ微妙に異なるものです。最大公約数で全消費者を喜ばせようとすると、誰にとっても中途半端なプロダクトが出来上がってしまいます。そのために、どの消費者のニーズを満たそうとするのかを検討する必要がある。ということのようです。
WHOの決め方
WHOを決めるときによく使われるのが「ペルソナ」ですよね。顧客の解像度を上げる時や、プロジェクトメンバーの間で共通認識を作るときに用いられます。
WHOの定め方について、公式テキストでは、以下のような記述があります。
ペルソナの作り方のヒントについては、以前書いているので下記の記事を参照ください。
2種類のWHO
ところで、WHOには2種類あることをご存知ですか?
「戦略ターゲット」と「コアターゲット」です。
「戦略ターゲット」とはマーケティング予算を必ず投下する最も大きな括りを指します。この戦略ターゲットを設定するときの注意点としては、目的に対して母数が小さくならないようにすることです。
例えば、1000万円の売上を目的に単価1万円の商材を売る場合を考えてみてください。売上は単価×購入人数で決まるので、最低でも1000人をカバーできる括りにしないといけませんよね。
「コアターゲット」とは戦略ターゲットの中で、さらにマーケティング予算を集中投下するターゲットを指します。
コアターゲットの割合は、先に紹介したパレートの法則よろしく、おおよそ2割程度になるケースが多いです。
コアターゲットの見つけ方
ターゲットは2種類に分けられることがわかりました。では、どうやってそのターゲットを定めるのでしょうか?
既出の森岡氏の著書にその定め方が記載されているのでご紹介いたします。
以下の6つのパターンのいずれかでコアターゲットを見つけることができるそうです。
①ぺネトレーションについては、自社商品が行き届いていないグループかつ、ニーズがあると思われるグループを見つける手法です。ぺネトレーションは正確には世帯浸透率を指すものなので、世帯単位で考えるもののようです。
例えば、独身世帯・夫婦のみの世帯・子連れ世帯などのようなセグメントで、空白地帯ができていないかを考えてみるのが有効です。
②ロイヤルティについては、ユーザーの中の自社シェアを拡大することはできないか。を検討します。ポイントカードなどで、他社に浮気させないようにする手法がこれに当たります。
③コンサンプションについては既存ユーザーの使用量を増やすことはできないか。を検討します。
「味の素」は容器の穴の数を増やして、使用量を増やしたそうです。
(「中の人」はこの夏の暑さのせいでエアコンを多用するようになり、電力使用量が増えています。笑)
④システムは端的に言うと、クロスセルを狙う手法です。無印良品やバルミューダのようなライフスタイル提案と相性が良いですよね。あるいは、「iPhoneを使っているから、PCはMac。」のような事例が当てはまります。
(Airdropが便利すぎて、Apple製品のシステム使用から抜け出せない「中の人」です。)
⑤パーチェス・サイクルは、既存使用者の購入サイクルを上げることはできないか。を検討します。
よくある例としては、美容サロンなどで「3週間以内の再来店で10%OFF」にしたり、飲食店で会計時に有効期限のあるクーポンを手渡すなどが挙げられますね。
⑥ブランド・スイッチはもうそのまんまですね。他社のシェアを奪いに行く手法ですが、少々ハードルは高めです。
直近では、とあるウェブサイトをノーコードで作れるツールがブランド・スイッチキャンペーンを実施していました。
2種類の消費者インサイト
最後に、消費者インサイトの種類についても触れておきます。
以前の記事でもインサイトの重要性については記してきました。
以下の記事を参照ください。
消費者インサイトとは端的に言うと、消費者自身も気づいていない真実のことです。ここを衝くと、消費者を動かすことができると言われています。
さて、インサイトも2種類に分類することができます。
消費者の認識を大きく変えるインサイトを「マインド・オープニング・インサイト」、消費者の感情を大きく動かすインサイトを「ハート・オープニング・インサイト」と呼びます。
マインド・オープニング・インサイトについては、森岡氏の著書の中で洗剤「アリエール」の例が挙げられているので、ここではもう一つ、別の事例を紹介しますね。
永谷園の「冷え知らずさん」の生姜シリーズは、商品の宣伝よりも「生姜がいかに冷え対策に効くか」をPRすることで「手軽に冷え対策をしたい」というインサイトを捉えることに成功しました。
(この事例は、パブリックリレーションズの成功例として『ベーシック・マーケティング』という書籍で紹介されています。)
ハート・オープニング・インサイトについては、森岡氏の著書の中で、USJがクリスマスに行ったキャンペーンを紹介しています。ここでは、近所の神社が行った結婚式のプロモーションをご紹介します。
「親を幸せにする結婚式」というコピーで行われたプロモーション。結婚式を挙げようとする人で「自分たちが幸せならそれでいい」と思っている人は少ないはず。両親に認められて幸せになりたい。今までの感謝を伝えたい。と思っている人に向けた強烈なメッセージだなと「中の人」は感じました。
まとめ
WHOを定めることを、マーケティングでは「ターゲティング」と呼びます。
「ターゲット」は日本語にすると「標的」や「目標」になりますよね。照準を合わせることは、戦略や戦術の方向性を定めることに直結します。
なので、戦略や戦術を定める上で最も重要な要素です。
どんなに戦略や戦術が素晴らしかろうと、標的なしでは空撃ちしかできません。一度立ち止まって、「私たちは誰に価値を届けるのか」を考えてみるもの良いかもしれませんね。
あとがき
今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今回で、20週連続投稿です!<イェーイ!
皆さんのリアクションが励みになっております。
さて、今回触れたWHO-WHAT-HOWというフレームワークは事業全体に関わる非常に広範囲に影響を及ぼすものです。それゆえ漠然としていて、抽象的です。なんとなく腑に落ちない。とか、いまいち理解しきれない。どうやって実務で使うの。とかモヤモヤすることが多いものです。
そんな中で、最も重要な要素である(と「中の人」は思っている)WHOについて掘り下げてみましたが、結果抽象的なような気もします。。。
ところで、いよいよ来週に迫りましたFlashセミナー。
現在、鋭意準備中であります。読者の皆さんと交流できることを楽しみしています!
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