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STP分析を活用したペルソナの設定方法

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
今回はペルソナについて記述してみようと思います。
先週、「ペルソナの設計がうまくできない」というお悩みに触れることがありました。
確かに、ペルソナって正解が分かりにくいですし、ちゃんと作ろうとすると調査費用や時間もかかります。正直、「中の人」もちゃんと設定できるかと問われると答えに窮します。
しかし、ウェブ解析士でも上級ウェブ解析士でも認定レポートの課題には必ず出題される内容なので、避けては通れない……。
そこで、ペルソナ設計の自主練をしたので、その思考プロセスをこの場をお借りして共有しようかなと思います。

ペルソナって何?

そもそもですが、ペルソナってなんなんでしょうね。笑
公式テキストではその概要を以下のように説明しています。

商品やサービスを購入するであろう「理想のユーザー像」を設定します。
年齢・家族・住まい・仕事などの基本情報と併せて、ライフスタイル・対象商品やサービスに対する意識や行動・情報接触の傾向などを設定します。商品やサービスの内容や調査の目的によっては、複数のペルソナを作ることが必要な場合もあります。プロジェクトの関係者が協力してペルソナを作成することによって、お客さまの課題・生活行動の考察・自社が提供する価値を共有でき、ユーザー像がさらに明確化され、ユーザーへの理解が深まります。

『ウェブ解析士認定試験公式テキスト2022』p127より引用
太字は「中の人」による

要するに、ペルソナとは自社のお客さまへの考察と、自社が提供する価値を(事業メンバーで)共有し、ユーザー理解を促すために作成する「理想のユーザー像」ということのようです。

ペルソナの作り方

ペルソナの意義は理解できましたが、ではどうやって作り上げていくのでしょう。公式テキストでは以下の考え方が参考になると紹介されています。

(前略)紀貫之の「土佐日記」の「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。」や、夏目漱石の『吾輩は猫である』などの例を挙げられます。
また、村上春樹は『職業としての小説家』の中で、小説のキャラクター作りを「オートマこびと」と名付けています。キャラクターを作るとき、村上春樹は無意識下の「『オートマこびと』たちがなんとかあくせくと働いている」として、それをせっせと文章に書き写していくと記しています。しかし、それがそのまま作品に組み込まれることはなく、何度も書き直され、もっと意識的にロジカルな作業を繰り返すとも書かれています。では、なぜ原型の立ち上げについては無意識的で直感的かということについては、そうしないと「生きていない人間像」ができてしまうというのです。

『ウェブ解析士認定試験公式テキスト2022』p81より引用
太字は「中の人」による

ペルソナを作るときは、まず仮面を被る=顧客になりきって、無意識的かつ直感的にイメージするということのようです。理解はできますが、実践するとなると経験値やセンスがものを言いそうですよね。
う〜ん。
その他にも、ネット検索を利用すると、既存の顧客データから統計的に定量データを抜き出し→該当者にインタビューするなんて手法や、調査会社に依頼するなんて手法が紹介されています。
どれも「蓄積された(1次)データ」や「ペルソナにかけられる予算」がある前提のような気がします。実際の現場では、経験上、そういった前提がない場合も多いです。
と、いうことで、過去の記事で紹介したフレームワークを活用してペルソナを作ることができないか。というチャレンジをしてみました。

STP分析を活用したペルソナ設定の手順

話は単純です。「顧客=ターゲット」を具体化したものがペルソナなわけですから、ターゲティングの流れでペルソナまで落とし込んでしまおう。というわけです。
STP分析については過去の記事で触れているのでそちらを参照ください。

①セグメンテーション

まず、題材を何にするかですが「中の人」が自主練をしてみて、わかりやすいなと思った「カメラマン・フォトグラファー」を使っていきましょう。
プロによる写真の需要ってどんなところにあるかなって考えてみた結果、まず「個人利用(to C)」と「商用(to B)」に分けられました。
そして、被写体が「人」「物」「風景」に分けられるのでは。ということでこの2軸でセグメント分けしてみました。その結果が下図です。

カメラマン・フォトグラファーの市場セグメント

②ターゲティング(+再度セグメンテーション)

セグメント分けができたら、自社はどのセグメントを狙うのか決定します。本来は自社の資源などを勘案しながら決めていくのですが、今回はエイヤー!で「A」のセグメントを狙うことにします。
「Aセグメント=個人利用の人物写真」な訳ですが、もうちょっとニーズを絞り込めないかなと思いまして、ライフステージという軸を追加してみました。下図の通りです。

個人利用の人物写真の需要がありそうな市場

もう、この時点で朧げながらユーザー像見えてきませんか?
あとは深掘りするだけなのです。例として「ニューボーンフォト」をターゲットセグメントにしてみましょう。

③定量データを固める

ここでは、自社の持ちえる1次データや政府統計などの2次データを活用しながら定量データを固めていきます。
拠点が東京にあるカメラマンなら、移動コストなども考えて1都3県くらいが商圏になるでしょう。ということで、顧客の居住地を仮に「千葉」としてみましょう。
さぁ、ひとつユーザー像が見えてきました。この調子で行きます。
生後間もない子供の写真ということで、マジョリティなのは既婚者であると想定されます。
依頼者はおそらく女性でしょう。ニューボーンフォトは生後1ヶ月前後で撮影されるらしく、産後休暇を利用して依頼することが想定されます。
厚生労働省発表の『人口動態統計』によると、2016年時点の初産平均年齢が30.7歳だそうです。

さぁ、ここまでで【・千葉県在住 ・既婚 ・女性 ・31歳前後 ・産後休暇中】とだいぶ、デモグラフィックデータが出来上がってきましたね。

④定性データを固める

ここまでくると、定性データもなんとなく見えてきませんか?
ここでは、前提条件や見えてきた定量データを基に、イメージを膨らましていきます。

例えば、Googleトレンドで「ニューボーンフォト」を見てみると、爆発的に検索数が増えたのは2018年末〜2019年初頭で、そこからじわじわと右肩上がりです。ということは比較的新しい文化なのかも知れませんね。「流行に敏感」という特徴がありそうです。

Googleトレンド「ニューボーンフォト」

さらに、流行に敏感ということは「美容やファッションに関心」があるかも知れません。
いわゆるミレニアル世代ですから、世代の傾向として「写真を日頃から撮影」「SNSで写真を共有」などといった行動も推察できそうです。
これらをまとめると、以下のような人物像になります。

STP分析を活用して作成したペルソナ

⑤解像度を上げていく

可能であれば、STEP4で出来上がったペルソナに近しい人物に聞き取り調査を行うなどして解像度を高めていきます。STEP4の段階でだいぶ絞り込めるので、知人に協力してもらうのもいいかも知れません。
実際にペルソナをマーケティングに生かすには「ニーズ・ウォンツ」「ペイン・ゲイン」を把握し、そこから「インサイト」を抽出することが重要です。そのためには更にターゲット像の解像度を高めていくことが求められるので、実際に「生きた人」の話を聞くというのは重要な工程です。

まとめ

STP分析でのターゲティングの流れからまずは定量データを固め、そこから見えてくる定性データを固めるというのが、今回自主練習の中で思いついた手法です。
所感ですが、「ペルソナ設定がうまくできない」要因はいきなり具体性を持たせようとすることなのではないでしょうか。
市場全体を見据えて、少しずつフォーカスを絞るように具体性を持たせていく方が比較的イメージを作りやすいのではないかなと。
また、公式テキストでも「妄想ドリブン」なんて言葉が使用されていますが、いかに想像力を働かせるかが重要なんですよね。フレームワークを活用すると言いながら結果、「聞き取り調査を行い、想像力を働かせましょう」という落とし所になってしまったのも、それだけ重要だということなんでしょう。
ウェブ解析士の皆さんは、おそらくウェブ制作や運用にペルソナを用いることが多いと思いますので、ペルソナ設定の際に使用デバイスについて言及しておくのも良いかも知れません。どんな分析にしろ、分析結果の用途=分析の目的を持って行うことが重要です。

あとがき

ペルソナって、ウェブ解析士のレポートでも上級ウェブ解析士のレポートでも作らなきゃいけないのに、公式テキストでは概論しか触れられていないのでなかなか設定ハードルって高い気がするんですよね。
なので、今まさに取得に向けて励んでいる方々の助けになればいいなぁと思って記事を綴っています。
実際には、Googleアナリティクスのユーザーレポートで「ユーザー属性」や「インタレスト」をベースにして作る人のほうが多いのかなぁ。
Juicerという解析ソフトではAIが自動で作ってくれたりしますしね。(笑)
ただ、注意しなければいけないのは「理想のユーザー像」という点です。実際にサイトに来ている人が理想的とは限らないので、自社が狙うターゲットユーザーという視点で考えることが重要じゃないかなと「中の人」は思っています。
今回も長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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