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5フォースに対抗する 交渉力UPと参入障壁の構築方法

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
過去の記事で、5フォース分析はSCP理論という経済学理論をベースに成り立っているということを書きましたね。フレームワークの成り立ちがわかって理解したつもりでした。しかし、分析にかけて、そこからどういった行動策を導くのかといったところがイマイチ自信が持てませんでした。と、いうことで、今回は5つの力に対抗するための策を調べてきたので、それについて記していきます。
以前の5フォース分析に関する記事はこちらです。

5フォース分析とは

改めて、5フォース分析とは何を分析するフレームワークなのかをおさらいしておきましょう。公式テキストでは以下のように説明されています。

5フォース分析は、事業の競争環境を分析するためのフレームワークです。
市場における「競合他社」「買い手」「売り手」「代替品」「新規参入」のそれぞれの力が影響する度合いを分析します。
業界のプレイヤーを整理し、競合他社との競争力、買い手の交渉力、売り手の交渉力、代替品の脅威、新規参入の脅威を判断します。この5つの力を分析し、業界の収益構造や競争要因を発見します。それぞれのプレイヤーに対して事業に有利な活動を行い、力の大きさを見極めて対応した活動を行います。

『ウェブ解析士認定試験公式テキスト2023』

言わずと知れたマイケル・ポーター先生の『競争戦略論』に端を発するフレームワークなのですが、要するに「交渉力を高める」=自社に有利な商売をする、「新規参入させない」=これ以上競合を増やさない、「直接競合、間接競合との競争に勝つ」=顧客に選んでもらう、という施策の方向性を検討するためのフレームワークになります。
「競争に勝つためには」という点については、以前記事にしていますので、そちらを読んでいただくとして、今回は、「交渉力を高める」方法と、「新規参入させない」方法について検討してみましょう。

競争に勝つための方法についてはこちらの記事をご参照ください。

交渉力を高める方法

まずは、取引相手に対して交渉力や対抗力=バーゲニング・パワーを持つ方法について検討していきましょう。

売り手に対して交渉力を持つ方法

売り手に対して交渉力を発揮する方法としてよく知られているのは2通りの手法です。

ひとつは、同一の物資の調達ルートを2つ以上確保することです。かのトヨタ自動車においても実施されている手法です。仕入れを一つの企業に依存してしまうと、価格交渉や納期調整、数量調整などあらゆる交渉において先方の言い分を飲まされやすくなります。しかし、複数の企業から調達しているのであれば、両社を比較してより有利に交渉を進めることができます。

もうひとつの方法は「人質」をとることです。というと、なんか物騒ですが、実際に社長令嬢を誘拐してして言う事を聞かせるわけではないです。(笑)経済学で「人質」と呼ばれるものには、以下のようなものが挙げられます。

「人質」の例
株の持ち合い、経営陣も含めた人材交流(出向など)、技術提供など

長期的な取引になるケースではこうして、互いに人質をとることで相互依存関係を築き、裏切り行為ができないようなメカニズムを作るのだそうです。
こうなると、「評判」も人質に数えられることがあります。
例えば、トヨタ自動車のような大きな企業が、部品供給元のA社に対する行動は、その他の部品供給業者が見ていると思われます。すなわち、少しでも悪辣な行為があれば、「一事が万事=我が社にも悪い行動をとるかもしれない=取引をやめよう」と思う企業が複数出てきてもおかしくありません。そのような相互監視の仕組みも交渉力を左右すると言われています。

買い手に対して交渉力を持つ方法

買い手=顧客に対して交渉力を持つ方法で有名なのは「スイッチング・コストを高める」と言う方法です。
スイッチング・コストとは、顧客が他の商品に乗り替えようとした時にかかる費用(有形無形問わず)のことです。
例えば、銀行口座を一つ作り、そこで給与の受け取り・公共料金の支払い・クレジットカードの引き落としをおこなっている場合、わざわざ銀行を乗り換えるのは相当めんどくさいですよね。
また、「中の人」はPCはMacbook、スマホはiPhoneをずっと使っているのでわざわざWindows PCやAndroidスマホに乗り換えることはまずないと思います。OSが違うだけで操作性がだいぶ変わりますし、Airdropが使えなくなるも嫌ですしね。だから、機種変を考えるとき、多少高くてもApple製品を検討して購入します。完全にバーゲニング・パワーをApple側に持ってかれている状況です。(苦笑)

新規参入させない方法

新規参入させないためには、参入の障害「参入障壁」を高めることが有効と言われています。では、参入障壁にはどのようなパターンがあるのか見てみましょう。

規模の経済性

参入障壁になり得る大きな要因が「規模の経済性」です。規模の経済性とは、生産規模が大きくなる=生産量が増えると、生産単価が下がると言うものです。規模の経済性には、鉄鋼業界のように一度に生産する量を上げる方法と、半導体のように「経験曲線効果」を生むものがある。経験曲線効果とは、累積生産量が増えるに応じて、生産単価が下がると言うものです。まぁ、工夫・改善を繰り返しながら生産していれば自ずと効率が上がりますので、そうなりますよね。
と言うことで、規模の経済性を活用して参入障壁を高めようとする場合、他社に先駆けて大量生産を行う必要があります。

ブランド化=差別化

二つ目に考えられる方法は、差別化を行うことです。製品に対するブランドイメージが強固なほど参入障壁が高くなると言われています。
例えば、コーラ飲料の最大手コカ・コーラがある市場に対して、コーラ飲料製品を新規参入させるのは容易なことではありません。
と言うことで、強固なブランド・イメージ(第一想起を取れるくらい)を形成すると、自ずと新規参入を防ぐ役割を担ってくれます。

資金条件をつける

これも規模の経済性に近いものですが、装置産業のような初期投資に莫大な費用がかかる場合、それだけで新規参入数を減らすことができます。その他、既存企業が活発に広告投資することで、新規参入=既存企業に匹敵する広告投資を覚悟すると言う条件設定を行うことができるそうですよ。
と、言うことで「この業界はお金がかかりますよ」と喧伝することで、新規参入を減らすと言う方法ですね。

資源利用の独占権

これは競争上有利になる事を事前に行うことで、新規参入しようとする企業を牽制する方法です。例えば、鉱山の独占利用権や、特許技術を保有していてその技術がなければ生産できない製品を作ること、小売業であれば、他社が羨む立地に店舗を構えるなどですね。
「あそこと競っても勝てないよね」と思わせる手法と言えますね。

流通チャネルを押さえる

商品を流通させるためのチャネルを先に押さえてしまうと言うのも参入障壁を高めるのに有効な手段だそうです。
ハイブランド(LOUIS VUITTONやCOACHなど)が、百貨店で1階の人通りの多い区画に大きな店舗を構えているのは、他ブランドの参入を防ぐ効果があるからだと言われています。また、この手の話をする際によく取り上げられるのがビール業界の話です。キリン、アサヒ、サッポロの寡占市場だったビール市場に後発として挑んだサントリーですが、先発企業に問屋を押さえられていたために、問屋の確保に苦労したと言われています。

多ブランド展開

もうひとつ考えられる、参入障壁を高める方法が、一つの企業が多くのブランドを展開することです。既存企業が少しずつ傾向の違った商品を複数展開して市場を埋めていくことで、新規参入する余地を削っていくと言う方法です。
身近な例でいくと、インスタントラーメンなどがその典型と言われています。コンビニや、スーパーのインスタントラーメン売り場には実に多様な商品が所狭しと陳列していますが、ほどんどの製品が、業界上位5社によるものです。

おまけ

そのほかにもテレビ電波のような法律による規制によって、新規参入を防ぐテレビ業界など、公的規制を利用して参入障壁を高める方法もあるのですが、コントロールしづらいので参考までにそんな方法もあるのだなと読み流してください。

まとめ

自社の競争力を判断するフレームワークとして5フォース分析が役に立ちます。今回は、分析して「で、どうするの?」と言うところにフォーカスして考えられる選択肢を挙げてみました。
大まかには、「競争に勝つ」「新規参入させない」「交渉力を高める」の3つの方向性があり、参入障壁を上げる6+αの方法と、買い手・売り手それぞれへの対処法を挙げました。
5フォース分析で行き詰まったら、自社の置かれた状況で、この中から取れる方法はないかなと考えてみてください。何かヒントになるかもしれませんよ。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
「わからないから調べよう」と思って書き出した記事はタイピング速度が上がりますね。「この知的好奇心を満たしたワクワクを伝えたい!」みたいな。(笑)
来週はどんな記事を書こうかなぁ。リクエストもお待ちしていますね。
それではまた来週お会いしましょう。

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