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【マスコミ研究会・企画×文芸小説】   新宿編①「再会」 作:雅哉

企画概要

 マスコミ研究会の分科会の垣根を超えたコラボ企画。今回は「君とのデート大作戦 ~もうスケジューリングには困らない~」企画(以下スケジューリング企画)とのコラボ小説を執筆。

 スケジューリング企画では、「予定を立てるのが苦手」という悩みを解決すべく、事前に設定を考えた上で理想のスケジュールが実行可能か、体当たり取材を決行...! 
 一方の文芸分科会ではスケジューリング企画内で考えた「行先」と「行く人物の設定」を基にオリジナルの物語を考えた。
 企画の内容は、フリーマガジン「ワセキチ」にて。(下にリンクを添付しております)
 
 今回、スケジュールが組まれた舞台は「新宿」と「台場」。それぞれの場所で、どんな物語が生まれるのだろうか。

人物設定・新宿編

 2人は中学の時の同級生。大学に進学したのを機に会おうということになる。中学の時の親友だった2人は、多少のブランクも大丈夫と思い、張り切ってスケジュールを立てる。しかし、高校も違う2人は今まで過ごしてきた環境が大きく異なり、話題も合わなくなっていた。
 今更解散もできぬ状況で、気まずさと少しの寂しさを抱えながら彼らは弾まない会話を行っていく。


「再会」 作:雅哉

Side B
「男二人で都庁かよ......」
「でも、なんか東京って感じしない?」
「ははは......」
 いや、もっと他のとこあっただろ。そういいたくなるところをぐっと堪える。こいつってこんな奴だったっけ? 大学進学を機に久しぶりに会ったかつての同級生に俺は動揺していた。
中学で知り合ったこいつは3年間クラスが一緒で、サッカー部でも一緒だった。くだらないことをしているうちにそれぞれ別の高校に進学することとなり、あっという間に高校3年間も過ぎ去って、大学生になったのだからと再会したのだ。
 俺はこいつとは違い地方の大学に進学した。東京に残ることにこだわりはなかったし、のんびりした地方生活に少し憧れていたというのもある。やつはどうやら東京の生活があっているみたいで、昨今の風潮に乗った感じの中性的ないでたちで待ち合わせていた。中学ではあんなに泥にまみれ汗臭かったやつが、ふんわりと香水をまとい青白い顔をしていたら誰だってびびるだろう。そこからどうも雲行きは怪しかった。今だってそうだ、何だって男二人で都庁なんかに来ておもしろいんだか。
「見てみて~、人が小さい」
そんなに無邪気に言われても。
「お~ぅ」
相手に今日の予定委ねてしまったからな......。あの頃はどんな話をしてたっけ。かすむ中学時代の思い出がなんとも言えない感情になって俺を襲っているようで、うまく会話ができない気がした。

Side A
 今日は中学の同級生と久々に会うことになった。僕らを隔てていた3年間は短いようで長いものだったみたいだ。彼は当時から変わらないさっぱりとした軽装でやって来た。短く切りそろえた髪にさわやかな笑みを浮かべる彼は女子人気も高かったし、僕自身少し憧れていたところもなくはなかった。そんな変わりない姿にホッとする。
「なんかお前変わったか?」
「そうかな?」
といいつつも、僕自身変わったと思う。中学の時みたいにガンガン運動して日に焼けたいとは思わないし、身なりにも気を遣うようになった。ただ、そのことを指摘されるのも気恥ずかしかった。
「男二人で都庁かよ」
その言葉にドキッとする。
「でもなんか東京って感じしない?」
集合場所を新宿にしてしまったから、高い場所と言えばここしか思い浮かばなかった。夜景がきれいで女の子を連れてくると喜ばれるのだ。だけど、今は昼間だし彼も僕も男だ。選択を間違えたみたい。しかしそうは言っても来てしまったのだから、帰ることもできない。
「見てみてっ。人が小さいよ......」
動揺を悟られないように声をかける。今日の残りのプランは変じゃないだろうか? 久々の東京を楽しんでもらおうと張り切ったのはいいけれど、女の子とは違うのだから相場が分からない。僕の心の中では静かに暗雲が立ち込めていた。

小説の2人の詳しいスケジュールは…

 ワセキチ掲載企画である「君とのデート大作戦 ~もうスケジューリングには困らない~」では、小説に出てきた2人が組んだスケジューリングが実行可能か、サークル員が体当たり取材。以下のリンク先ではその様子をレポート記事でまとめております。
 どんなスケジューリングを立てたか気になる方は、ぜひチェックを!