妄想は誰にでも懐くのよ
「もうこうなったら結婚しようよ。」
夜中の2時。伝えて来たのは同性の友達。
「え…。」
*
その夜は合コンだった。
安い居酒屋。暗黙のサラダの取り分け。上辺だけをなぞるような会話。お酒だけはよく進んだ。
男性が3人もいたのに誰にもときめかず。
勿論、成果はなし。
誰かを好きになる心、もう死んだのかしら。
*
解散したあと、友だちと2人BARに行って飲み直した。
男性についてあーだこーだ感想を言ったり、将来の不安について愚痴ったりするこの時間が一番楽しい。
「私たち、絶対結婚できないよ。」
なんて互いを弄りあって、笑いながら帰路につく。
この時間を失う時がいつか来るのだろうか。
そんな未来がチラついて悲しくなる。
*
私を置いて結婚しないで欲しい。
私じゃダメか?
彼女は、そんな気持ちで、思わずプロポーズしてしまったらしい。
私と同じ気持ちじゃん。
夜中、独身女二人で、
もし一緒に暮らしたら、という妄想を膨らませる。
子どもは欲しいから里親になろう。
他の友達が集まれるよう、リビングが広めの所に住みたい。
犬は柴犬かチワワを飼う。
ゲーム部屋と2人の個室が欲しい。
…え?これ理想だな。
二人で言い合ううちに幸せな気分になった。
「にっちもさっちもいかなくなったら、よろしくね。」
合コンで上手くいかなかったことなんて、もうどうでも良くなっていた。
*
妄想は、幸せなことだけ考えとけばいい。頭の中でだけでも自由でいたい。
男とか女とか結婚とか出産とか一先ず置いといて。
妄想は誰にとっても味方だし、懐くのよ。
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