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在庫を持たずに始められるプロダクトブランドのススメ
岡山県西粟倉村と東京、その2都市に拠点を置く「nottuo」というデザインファームがあります。
「既成概念に囚われず自由な発想と行動」という意味を持つこの社名ですが、その名の下で、会社哲学でもある「デザインを楽しむ、楽しんでもらう。」をより育むべく、プロダクトやイベント、店舗などを実験的に開発・運営する「drill(ドリル)」という社内プロジェクトを展開しています。
今回は、nottuo株式会社・代表の鈴木 宏平さんに、その取り組みについてお伺いするとともに、「EMARF」でプロダクトを制作し販売すること、そしてプロダクト販売につきまとう「在庫の壁」をどう乗り越えたか、などについて話を聞きます。
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▶︎ まずはじめに、「drill」について教えてください。
「drill」とは、「なんでもやってみよう」というコンセプトの下、2020年10月に始まった社内プロジェクトです。ここ西粟倉に完全キャッシュレスのお店を作ったり、イベント開催、プロダクト開発をしたりと、様々な実験をしています。
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「これやりたい」「やってみる」というアクションは、めぐりめぐって本業のクライアントワークで生かせるはずなので、その思いに蓋をせずどんどんやってみようという取り組みです。
▲2020年11月に岡山県西粟倉村にオープンした「drill store(ドリルストア)」。
▶︎ その一貫として、「EMARF」でプロダクトを開発されたということなんですね。きっかけを教えてください。
当初は、NCルーター屋さんに外注しようと思っていたのですが、開発段階のプロダクトを小ロットで開発することに付き合ってもらうことになかなか苦戦しました。
「EMARF」の存在は(VUILD COOの)井上さん伝いに知っていたので、一点からでも入稿データがそのまま切り出せる「EMARF」を使ってみようということになりました。商品として出しているのは、スツール(シナ・ラワン)とベンチの2種類です。
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▲「drill」のWEBストア
▶︎ ペイントがかわいいですね。
ありがとうございます。製造業って本当に難しくて、量を作らないとコストが下がらない。
完成度の高いものを作りたいとはいえ、塗装までやると値段が跳ね上がってしまうので、完成品のプロダクトを売るというよりは、「最後はお客さんが組み立てて好きな色に塗ったらいいじゃん」という発想から、セミDIYのプロダクトとして売り出すことになりました。
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▶︎ 具体的な製造の流れを教えてください。
「drill」では、プロダクトごとに作家さんとコラボレーションしているのですが、今回制作したスツールとベンチは、企画から「EMARF」への入稿までは弊社が行っています。その後、「EMARF」で加工した部材を大阪の木工所「Royal System」さんへ直接配送してもらい、そこで職人さんに仕上げてもらう流れです。
というのも、今回作ったものはビスなどを使わずにホゾではめ込んで組み立てるものなので、コンマ数ミリでの微調整が必要となり、寸法がシビアなんです。
今回使用したシナベニヤの板材そのものにも寸法の誤差があるので、プロダクトとして成立させるために、最後は職人さんの手で調整し、梱包・発送してもらうということをやっています。
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▶︎ 理想とのギャップはありましたか?
そうですね。「EMARF」を使えば職人さんの工数がほとんど無くなると思っていたので、そこは理解不足でした(笑)。やっぱり最後は人の手がいるんだという気づきがありました。
▶︎ 小ロットでということでしたが、在庫数はどれくらいになるのでしょうか?
36板1枚につきスツールは3台、ベンチは2台切り出せるので、加工の際にオーダー分以外で出たものが在庫になるという仕組みです。
以前、服飾と雑貨のブランドをやっていた時に製造業の難しさを学んだので、在庫は最小ロットしか持たないようにしています。
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▶︎ 具体的に、製造業の難しさとは?
ゼロから立ち上げるブランドを如何に流通に乗せてブランド価値を高めていくか、ということですね。当時は受注会形式で販売していたにも関わらず、それでも大量の資材などの在庫を抱える体験をしたので、今回は絶対に在庫は持ちたくないなと(笑)。
会社として、ものをつくることで得られるノウハウは欲しいけれど、メーカーになりたいわけではなかったので、だからこそ今回は「ほとんど在庫を持たない」スタイルでのプロダクト開発を意識しました。
▶︎ 「EMARF」を販売に活用してみていかがでしたか?
プロダクトの開発・販売と「EMARF」の組み合わせは、フェーズによってメリットとデメリットの両方があると感じました。
当初お願いしようと思っていたNCルーター屋さんは、基本的に平面のやりとりで、認識の齟齬やコミュニケーションコストもあったので、「EMARF」を使うことで自分の手元でコントロールしやすくなり、とてもスムーズに開発を進めることができた点がメリットでした。
一方で、「コミュニケーションコストを排除する」という小ロット生産のメリットが、量産段階に入ると反転してしまうことも今回見えてきました。
※専門のサポート体制がございますので、量産をご希望の方はEMARFサイト内のお問合せフォームよりご相談ください。
量産段階に入ると、例えば色味の観点で材の選別が必要になったりと、どうしてもデジタル化できない「人間のやりとり」が必要になってきます。そのすり合わせが現状の「EMARF」だとできないため、量産フェーズに入ったら、別の手段が必要かなと思っています。
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▲「EMARF」のメリット図解
▶︎ 今後「EMARF」で作ってみたいものはありますか?
家具は今回作ったので、小物みたいなものを作ってみたいですね。どの程度の細かいものまでできるだろうか、と。また、今は合板がメインですが、無垢材も入ってきたりと、今後はサービスの幅がどれくらい広がっていくかに期待しています。量産もしやすくなったらいいですね。
▶︎ 「drill」としての今後の展望を教えてください。
「nottuo」という会社で海外進出したいですね。田舎拠点でどれだけ自由にできるか、という点で僕たちは世界でのトップランナーになりたいです(笑)。
今年こそ海外コンペに応募しようと考えたりしていますし、「drill」のプロジェクトも、昨年のアートフェア出展がきっかけとなり、シンガポールのセレクトショップで、POP-UPというかたちで商品を置いていただきました。こんな感じで今後も広がっていったらいいなと思います。
▲シンガポールのセレクトショップ「shouten」でのPOP-UPの様子。
▲nottuo株式会社では、WEBデザイナー募集しているそうです!
記事を読んで興味を持っていただけた方はぜひ募集ページを覗いてみてはいかがでしょうか。
Photo by nottuo株式会社
Thumbnail photo by shouten
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