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【2月のAudible読書メモ③】
『老人ホテル』原田ひ香
埼玉県の大家族で育った日村天使は、生活保護を受け自堕落な生活を送ってきた。大家族ファミリーとしてテレビにも出ていたが、16歳で家を出て、大宮のキャバクラ「マヤカシ」に勤める。そこでビルのオーナー綾小路光子と知り合った。数年後、訳あり老人が長逗留する古びたビジネスホテルにひっそりと暮らす光子と再会する。天使は、投資家だという光子の指南で、極貧人生から抜け出そうと、生きるノウハウを学ぶことになるが……。
みのみのさんにお勧めしていただいた一冊。
原田ひ香さんの小説はいつも人生経験豊かな人物から様々な教えをいただく内容が多い。今回もそうだ。専門書を読むのももちろんいいが、入り口としてこのような物語から入っていくのもいいと思える本だった。
いつものほっこりとした雰囲気ではなく、ラストは心拍数が高まる展開。
爽やかな読後感ではないが、天使の生い立ちを考えればその流れは納得できる。
*天使と書いて、エンジェルと読む。キラキラネームだということに気が付くまでに時間がかかった。Audibleだけに。
20代で一人暮らしを始める私がこの本を読んでいたら、どんな感想を持っただろうか。聞いてみたくなった。
『それもまたちいさな光』角田光代
デザイン会社に勤める悠木仁絵は35歳独身。いまの生活に不満はないが、結婚しないまま1人で歳をとっていくのか悩みはじめていた。そんな彼女に思いを寄せる、幼馴染の駒場雄大。雄大と宙ぶらりんな関係のまま恋愛に踏み込めない仁絵には、ある理由があった…。2人の関係はかわるのか? 人生の岐路にたつ大人たちのラブストーリー。
「幼馴染」にとても憧れがある私。どんなに願ってもそれだけは手に入れることができないもの、人だからだ。だから、幼馴染という設定だけで、ぐいぐい引き込まれてしまう。
少しネタバレになってしまうが、この物語はラジオが出てくる。
ラジオで発信する側の心持ちと受け取り手の描写にも興味をそそられた。
雄大が語る幸せについてのくだりは、強い共感を覚え、誰かとこの気持ちを共有したい気持ちにかられた。 だれかー。いませんか?
『走ることについて語るときに僕のかたること』村上春樹
走ることについて語りつつ、小説家としてのありよう、創作の秘密、そして「彼自身」を初めて説き明かした画期的なメモワール。
ここ2,3週間この本についてのnoterさんの記事をいくつか読んだ。また、日本語学校のクラスでも少しだけ話題になり、気になっていたので、ダウンロードしてみた。
走ることで得られる体力だけではなく、「まわりくどいところに真実がある」ことを証明するかのような毎日の積み重ねに圧倒され、感服の念をもたずにはいられない。
『川のほとりに立つ者は』寺地はるな
カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。
寺地はるなさんの小説にいつも私は教えをもらう。
上記にある、「当たり前」に埋もれた声だ。
毎回、はっとさせられる。
困難を抱えている人に誰もが単に寄り添えばいいという単純なものではなく、こういった視点を持つことの大切さを教えられる。
「他人に対する想像力」、「フィルターを通して我が子を見ている」などそこここにブックマークを押したくなるフレーズが出てくる。何度、スマホをポケットから取り出し、一時停止を押して30秒戻るボタンを押したかわからない。
松木が書いた小学校の卒業文集の内容が心に残った。
『ゴミ人間 日本中から笑われた夢がある』西野亮廣
えんとつ町は煙突だらけ。
そこかしこから煙が上がり、頭の上はモックモク。
黒い煙でモックモク。
えんとつ町に住む人は、青い空を知りません。
輝く星を知りません。
『えんとつ町のプペル』は、こんな独白から始まります。
2005年、西野亮廣が絵を描き始めたあの日から、「テレビのひな壇には出演しない」と言ったあの日から、何年間にもわたるバッシングが始まりました。
『えんとつ町のプペル』を書くキッカケとなった時代です。
えんとつ町は、夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる現代社会そのものです。
ファンタジーなどではありません。私たちの身の回りで実際に起きていることです。
黒い煙に覆われたあのとき、あの場所で、それでも西野が「星の存在」を信じ続けられたのはなぜか。
コロナ禍に多くの人が苦しむ2020年。映画『えんとつ町のプペル』公開を機に、今にも灯が消されてしまいそうな人に寄り添い、生き延び方を伝えることを目的として『えんとつ町のプペル』の裏側に秘められた想いを明かします。
読むきっかけとなったのは、こちらのnoterさんの記事です。
ふくふくさん、ありがとうございます!
がツンと頭を殴られたくらいの衝撃を受けた。
読んでよかった!
西野さんの頭の回転の速さ、世の中の変化への気づき、視点の置き方に
驚きの連続だった。
特に印象的だったところ
・子育てに見立てた絵本の販売戦略
・NYでの個展の話
・映画の声をある方に頼むときのエピソード
・絵本を全ページweb公開した時の話
特に絵本を全ページweb公開した時の話は、その理由がわかると非常に説得力があり唸ってしまった。
『八月の御所グランド』万城目学
第170回直木賞受賞作! 感動、感涙の傑作青春小説
死んだはずの名投手とのプレーボール
戦争に断ち切られた青春
京都が生んだ、やさしい奇跡
ホルモー・シリーズ以来16年ぶり
京都×青春感動作
女子全国高校駅伝――都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。
謎の草野球大会――借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。
京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとは――。
今度のマキメは、じんわり優しく、少し切ない
人生の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る傑作2篇
「女子全国高校駅伝」のほうは、私も絶望的に方向音痴なのでものすごく共感しながら聴けた。
高校生ランナーの二人の不思議な共有時間。京都が舞台だけに本当にありそうな気がしてくる。二人に生まれる爽やかな交流。体育会の部活経験がない私に疑似体験をさせてもらったような物語。
「謎の草野球大会」のほうは、ある話を思い出した。
昔の白黒写真を現代の技術で色付けすることによって見る人が、その写真に写っている光景を「昔のこと」から「自分事」にするというような話をどこかで聞いたのか読んだのか・・・。
「戦争に断ち切られた青春」と上記の紹介文の中にあるが、物語にするこによって、写真に色が付けられたように、まさに自分事に置き換えて思いをはせることができた。切ない思いが押し寄せる読後だった。
読んだらすぐにメモを作らないと、どんどん溜まりますね。
6冊分を振り返るのは大変でした。反省。
最後までお読みいただきありがとうございます。
また次のnoteでお会いしましょう。
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