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【アプリ開発経緯】なぜ言葉を覚えるためのアプリを作らなければならなかったのか。

我が家には聞こえる長女と難聴の次女がいます。現在、次女は人工内耳をして聞こえる世界と聞こえない世界を行ったり来たりしていますが、最初はほとんど聞こえていなかったので、言葉の発達がとても遅れてしまいました。詳しくは娘の難聴についてまとめたブログ「いつか、きっと -someday soon-」にまとめてありますので、よろしければご一読ください。この体験がなければ、Vocagraphy!はこの世に無かったと思います。

難聴児を持つご家庭であれば、家中のモノに名前を書いた紙を貼った経験が一度はあるのではないでしょうか。我が家にも、「つくえ」「いす」「ドア」「ソファー」と書いた紙を家具に貼っていました。また、言葉カードを見ながら動物や乗り物の名前を覚えたり、毎日絵日記を書いたりと、難聴児は小さいころから忙しい日々を送っています。聞こえる長女が小さい時に、「言葉を教える」という事をここまで意識はしていませんでした。

ある日難聴の次女を幼稚園に送って行く時に「ねこじゃらし」が生えていました。私は指文字で「ね・こ・じゃ・ら・し」とやって見せました。その時は娘も何となく発音してくれます。しかし、帰り道に聞いてみると、もう忘れてしまっているのです。こんな感じで、毎日言葉を覚える努力はしていますが、なかなか定着しない日々が続きました。

「そうか、写真を撮って名前を書けるアプリがあればいいんだ!」

▶︎世界中のどこかに便利なアプリがあるはず

ダウンロードしたアプリで写真に名前を入れましたが・・・

私はiPhoneを使っていますが、写真に名前を書けるアプリくらい何かしらあるだろうとApp Storeをひたすら検索しました。日本語だけでなく、英語のアプリも全て検索対象にしました。

写真を加工するアプリ、単語カードアプリ、言葉カードアプリ、どれも素晴らしいアプリですが、「帯に短し、襷に流し」。私と難聴の次女が必要としている目的を果たすものはありませんでした。

写真にテキストを入力できるアプリは確かにいろいろあります。最初はそれを使い、早速「ねこじゃらし」の写真を撮り、テキストを入れて娘に見せていました。しかし、「何だか手間がかかる」「これなら紙に印刷した方が使いやすい」といった感想でした。まぁ、そもそも療育用に開発されたアプリではありませんから、仕方ないですね。

▶︎オリジナル言葉カードがアプリ開発のヒントに

我が家では、写真サイズの紙に画像とひらがなを印刷してオリジナル言葉カードを作っていましたので、それを元にアプリの企画書を作り始めました。市販の名前カードもたくさん購入しましたが、そこに書かれているイラストだと娘がピンとこないようなんです。しかし、自分のモノであれば、写真をみて「これ、私のだ!」とモチベーションも上がります。何に使うものかも、直感的に理解しています。

我が家のオリジナル言葉カード

このオリジナル言葉カードの場合、下のひらがなの部分、つまり「答え」を手で隠して「なーんだ?」とクイズを出します。これもアプリの機能にあったら便利ですね。

また、すでに覚えた言葉と、まだ覚えていないカードを仕分けする必要もあります。写真のようにファイルに入れれいる場合、いちいち入れ替えなければいけません。アプリなら、覚えたか、覚えていないかをチェックしておく項目があると良いなと考えました。

「ん〜、何だかアプリのイメージが湧いてきた・・・・」

▶︎まずは、企画書を作ろう!

英語で書いた最初の企画書

思いついたアイディアは、残念ながらどんどん忘れますね(笑

そこで、企画書を作り「見える化」することがやはり重要です。自分で作った企画書を繰り返し見ていると、新たなアイディアがどんどん出てきます。このような作業を繰り返し、自分の思いが可視化されたと感じたところで、すでにお付き合いのあったアプリ開発企業の「株式会社 夢現舎」に持ち込みました。

私は聴覚障害者が抱える課題は世界共通だと考え、最初から企画書を英語で作ることにしました。アプリやホームページを英語に対応させて全世界にリリースすることも最初から決めていました。現在、日本も含めて10ヶ国でダウンロードされています。

この無謀な企画を快く共同開発を受け入れて頂いた飯田社長、プログラマーのてっちゃん、本当にありがとうございます!!

本来であればアプリの仕様書をカッチリ作成し、それに基づいて開発が進みます。しかし、このアプリの詳しい仕様は私の頭の中にあり、しかも作ってみないと分からないことも多くありました。そのため、ざっくりした私の企画書を元にプロトタイプを作ってもらい、それを実際に娘と使ってみて、「もっとこうしたい」「ここは、こうしよう」といった感じで開発を進めました。開発する側としてはこんなに迷惑な進め方はなかったでしょう(汗。

しかし、リリース前のアプリを使っていて、娘がとても楽しく言葉を覚える姿を見て「これが欲しかった!」と心から思いました。気がついてみたら娘の誕生日が近くなっていたため、その日にアプリをリリースする事を決めました。

▶︎なぜ、アプリを作らないといけなかったのか・・・。

ずばり、「楽しく言葉を覚えたい!」からです。

勉強って、辛い思い出しかありませんし、鉛筆と紙を机に置いた瞬間に子どもはテンション下がりますよね(笑。

同じ勉強をするにも、スマートフォンを手に取り、アプリを触っているだけで子どものモチベーションは上がります。私にも理由は分かりませんが、アプリにはそんなチカラがあるように思います。

他にも理由はあります。

  • いつでも、どこでも、言葉を覚えることができる

  • フォルダで分類することで、上位概念を理解することができる

  • クイズの解答を記録することで、理解度を把握することができる

  • 一つの言葉に複数の画像を登録できる

  • メモを書く事で、言葉の意味や関連した事柄と結びつけることができる

他にもあるかもしれませんが、デジタルコンテンツにすることでたくさんのメリットがあることが分かります。

ちなみに、このアプリは難聴児だけのものではありません。発達障害のお子さんの療育や失語症の方のリハビリといった障害のある方だけでなく、外国語の習得や受験勉強など障害のない方の学習にも使えます。

ぜひダウンロードして使ってみてください!
Vocagraphy! 公式サイト
https://blw.jp/
(iOS/Android)
※無料/アプリ内課金なし


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