丸紅を勝手に5段階評価してみた~企業財務分析
挨拶
このページをご覧になってくれている方ありがとうございます。改めましてコブータと申します。私は米国公認会計士や簿記2級の学習を通じて会計のマニアになりました。企業の財務分析を行うことで皆様の投資判断の材料にしたり、就職、転職の企業分析にお役立ちいだだければと思います。他の方の記事と比べて一歩踏み込んで財務分析を行うので有益な情報を皆様にお届けできればと思います。今回は丸紅です!御三家の三菱系、三井系、住友系の解説をしてきたので次が最後の商社ですね!次回は伊藤忠を紹介していきますのでフォローしていただけると嬉しいです!この企業の分析をしてほしいとリクエストがありましたらコメント等に残してくれると嬉しいです!
企業概要
丸紅の前身は1858年の創業に始まります。㈱丸紅商店、三興㈱を経て設立された大建産業㈱が戦後、過度経済力集中排除法の適用を受けて商事部門を継承する第二会社として設立されました。丸紅も前身は戦前まで遡ります。やはり5大商社はどこも長い歴史がありますね。丸紅としてビジネスをスタートしたのは1949年からですね。
事業内容
丸紅の事業は下記の17個の事業に分けられています。
ライフスタイル
情報・物流
機械・インフラ
食料第一
食料第二
アグリ事業
フォレストプロダクツ
化学品
金属
エネルギー
電力
インフラプロジェクト
航空・船舶
金融・リース・不動産
建機・産機・モビリティ
次世代事業開発
次世代コーポレートディベロップメント
17個に事業が分かれているのは細かすぎでしょ!とツッコみたくなります。これだけ細かく分類できるほど様々な事業を行っているのが商社なのだと改めて理解できますね。特に食料第一、食料第二、アグリ事業は纏めても良いのでは?と個人的には思いますが・・・
さらに事業間で一部の事業をあちらに移したり、こちらに移したりしているようです。今回はさすがに多すぎるので各事業の内容は有価証券報告書をそのまま貼り付けておきます。
人員について
丸紅の従業員数内訳は下記の通りです。
従業員数は約4.6万人の大企業です。三井物産と同程度の規模ですね。その中でも情報・物流に約8,000人と一番多くの人材が割かれていますね。その次がアグリ事業、建機・産機・モビリティと続きます。情報・物流に多くの人材が割かれているのは今までの三菱、三井、住友系の商社には見られなかった傾向ですね。それ以外は大まかには同じような人材リソースの傾向ですね。
働きやすさについて
現在注目されている働きやすさですが、丸紅は子会社もかなり多いので今回は丸紅のデータのみ持ってきました。女性の管理職は8.2%と女性の管理職を推進はしているがまだ少ないなと思える割合ですね。丸紅も日本を代表する企業なのでここは頑張ってほしいですね。男性の育休取得率は66.7%と住友商事、三井物産の育休取得率とほぼ同じですね。今まで分析してきた大企業と比較すると働きやすさの改善はかなり頑張ってほしい点ですね。商社ではやはりバリバリ働くカルチャーが残っているような印象ですね。
丸紅の売上構成
丸紅は収益約9.1兆円の大企業です。三菱、三井、住友系の商社の方が多く収益を上げている印象でしたが住友商事よりも多くの収益を上げていますね。そんな丸紅は何で儲けているのでしょうか?
これまで分析してきた商社は収益のバランスがとても良かったです。丸紅に関しては、食料第二とアグリ事業で約半分の収益を上げています。その次に収益を上げているのはエネルギー事業ですが、その次は食料第一です。ですので丸紅は食関連のビジネスに強みを持っていることが分かりますね。ですが意外にもアグリ事業は2021年度と比較すると減収していますね。
食関連のビジネスを除くて割とバランスよくどの事業部も収益を上げていますね。アグリ事業部を除く殆どの事業が2021年度と比較して増収しています。唯一、金融・リース・不動産事業だけがわずかに減収でしたね。ですが、全体の収益は近年で過去最高を記録しています。
営業利益と当期純利益
収益が増えているのはとても良いことですが、丸紅の営業利益、当期純利益はどうなっているでしょうか。
収益が約0.6兆円増加しているのに対して、費用もしっかりと約0.5兆円増えていますね。売上総利益率は約11.4%と僅かですが、増えています。ですが売上総利益率が11.4%は低いと言えますね。
営業利益率が3%台なのはあまり良くありませんね。基本的にメーカーであれば営業利益率5%は仕方がないかなという印象なので商社であったら8~10%は欲しいところですね。丸紅は原価がかなり高くなってしまっています。効率としては、三菱商事や住友商事と比較しても半分の人数の従業員しかいないにも関わらず、収益は約9兆円と住友商事よりは収益を上げています。三菱系、三井系、住友系の商社で括るならば三井系に似た費用の構造になっていますね。
また支払利息は2021年度と比較すると約2倍になっていますね。ここは三菱商事、住友商事、三井物産と傾向は同じですね。これは支払利息であり、リース利息やデリバティブ等の金融負債の利息のようです。ですが受取利息やも増加している上、当期純利益は2021年度と比較しても増加しているので大きな問題ではないでしょう。
気になるのは有価証券損益ですね。ここが2021年度と比較して5倍に増加しています。この理由は子会社の売却によるものです。アグリ事業のGavilon穀物事業の売却の利益が大多数を占めているようです。この事業を売却したからこそアグリ事業が減収してしまったと考えることができますね。
最終的に当期純利益は2021年度と比較して約20%の増加と大幅増益になっていますね。当期純利益は2021年度と比較して増えているのは良いポイントですね。2019年度は赤字にもなっていましたが、コロナの影響からは完全に抜け出した状態ですね。丸紅も最高益を更新していますね。1株あたりの配当金も2020年度はわずかに減配していましたが、年々増加しています。配当性向は20~30%をキープしていますね。当期純利益が一気に増加した2021年、2022年には配当も利益が増加した分一気に増加しました。しっかりと株主に儲けた分の一部は還元する姿勢が見られます。今後も最高益を更新し続けられれば配当金の増加も期待できそうですね。また、配当性向がこれだけに抑えられているということは今後の丸紅の投資によってさらに利益が増え、株価の上昇と配当金の増加の両方取りができるかもしれませんね!配当利回りは3%はあるので、高配当株と言い切ることは難しいですが、中々の配当利回りではないでしょうか?
丸紅の倒産リスクは?
会社が潰れてしまう可能性があるか?を判断するには流動比率の分析はかかせません。流動比率とは流動資産÷流動負債で求めることができ、短期的な資金繰りに問題がないかが分かります。
儲かっている企業が倒産してしまうことを黒字倒産と言います。なぜ黒字倒産が起きるのか?それは企業が儲かっていても企業は基本的にお客様に後払いを容認しているからです。もちろん会社が払う場合にも後払いにしてもらうことが多いのですが、黒字倒産の場合は会社にお金が入ってくる前にお金を払う期日が来てしまい、支払いができなくなることから起こります。
つまり、サラリーマンで言うと預金残高に1,000円しかないのにクレジットカード10,000円分の支払い期日が来てしまったような状態です。その5日後に給料が振り込まれるとしても支払いが期日までにできないと企業は倒産してしまい株はパーになってしまう可能性があります。
このような罠にかからないためには流動資産と流動負債の比率を分析する必要があります。流動資産は現在持っている現金、1年以内にお金に変えられる現金を示しています。流動負債は1年以内に支払う必要がある現金と考えれば良いです。つまり、1年以内に支払いお金を現在の現金や1年以内に現金になる物で賄えるかが分かればいいのです。
丸紅の流動資産を確認すると約3.7兆円あります。その内棚卸資産は1.1兆円ですので流動資産の約30%です。率で見ると棚卸資産の割合がかなり高いです。一方で、流動負債は約2.8兆円と流動資産より0.9兆円少なくなっています。棚卸資産を除いた場合、資産は2.6兆円あり、当座比率は100%を切ってしまいます。
負債を詳しく分析すると2021年度には社債及び借入金が約1.7兆円ありました。そして2022年度に短期社債及び借入金は約0.5兆円ありました。1年以内の支払いは流動負債に分類されるので単純に考えると非流動負債の社債及び借入金は0.5兆円減って1.2兆円になるはずです。しかし、非流動負債のは約1.6兆円のままです。その差約4,000億円は新たに発行した社債及び借入金と推測できます。これを原資に流動負債を支払ったと推測することができます。
積極的な自社株買い
丸紅は積極的な自社株買いを行っています。自社株買いを企業が行う理由としては、世間に出ている株数を減らすことで株価を上げて投資家達に還元することが挙げられます。例えば時価総額が約16兆円で株数が30億であれば1株あたり約5000円になります。ですが株数を15億まで自社株買いで減らすと時価総額は変わらないので1株あたり10,000円になり投資家が儲かるわけです。株主は1株あたり5,000円儲かるので嬉しいですよね。
ですが、自社株買いにも落とし穴はあります。それはお金が余っているから自社株買いをしているのでは?という懸念です。自社株買いを行うということはそれだけ会社の現金が出てしまっています。
それだけの現金を使うのなら設備等に投資をしてさらに利益を増やして配当金や株価の向上に繋げてほしいという投資家の意見もあります。
つまり自社株買いを積極的に行うのは短期的には投資家からは喜ばれますが、目先のことしか考えていない、それだけ投資して利益を増やす手段がないとも取れます。ですが、丸紅は配当性向も30%を超えていないので単に株主還元の意味で積極的な自社株買いを行っていると推測できます。
まとめ&評価
2021年度と比較すると殆どの事業で増収を達成(減益している事業あり)
食関連のビジネスに強み。食は需要が一定なので今後も安定して収益を上げることができそう。
原価が多くなっているが、売上総利益率は微増している。
営業利益率はもうひとつ。当期純利益は最高益だが今後も増益し続けられるかは注視が必要。
配当のバランスは良い感じだが、減益したら配当が減る可能性がある。自社株買いも行っている。
短期的な資金繰りについてすぐには問題にはならないが流動負債、当座比率は注視が必要。
ここまで読んでいただきありがとうございます。コメントにどの企業の分析をやって欲しい等書いていただければ分析します!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?