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#「異業種から建築に転職したい」知っておくと、いいかもしれない業界のこと

「理系じゃないと、建築関係の仕事に就くのはやっぱ無理なのかなぁ…」

よく聞かれるけど。

何で?全然無理じゃないよ
いつもそう、答えてきた。

理系じゃなくても、建築を知らなくても。
できる『仕事』が会社には必ず存在するから。
建築の仕事は、建築だけじゃない。

でも、閉ざされた業界でもあることは事実。

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久しぶりに連絡が来た友人にお家ランチに呼ばれ、商社系で働くマリの手料理をおいしく頂きデザート途中のこと。

聞き慣れた質問を投げかけられた。

マリはわたしがお土産に買ってきたスタバのフラペチーノを持ち、くるくる回すと「わたしが建築に転職したいって言ったら。アリサはどう思う?」と、遠慮がちに言葉を繋げて。

「マリが建築、ね。どしたー?なんかやりたいことでも出来た??」
わたしは、買ってきたニューヨークチーズケーキを口に入れつつ、聞き返した。

まさか建築業界へ移りたいなんて、初耳なんですけどね??そもそも、結婚して2年。就職して12年。普通に給料も待遇も良い超大手企業に勤めて管理職への昇進も見えているのに、何が突然そうなった??…わからなすぎる。

なにより。
わたしは今や、長すぎた建築業界から離れたくてしょうがない身なわけで。
転職が無理ではないことはわかっていても、だからっと言って勧めたくもない理由も確かにある。

不思議な感覚。


「んーー理想のイメージは店舗とか工房とか??に関われたらなって。形に残って、たくさんの人に使ってもらえるような、想いがカタチに残るものに関わってみたい。とは言っても…なんだかねぇ」

ふぅっと小さく息を吐くと、フラペチーノに再び口をつけるマリ。
知り合って6年ちょい。なんでやりたいの?なんて野暮なことはわざわざ聞かないけれど。店舗とか工房に関わってみたいなんて、今まで一度だって聞いたことはないけど。

だけど、だけど…マリが「美術」や「アート」を好きなことは知っている。
お客さんのために、日々奮闘してることも知ってる。

美術館だけじゃなくて、ディズニーランドの装飾や、映画に出てくるインテリア、備品にも目を輝かせていることを知っている。営業事務として、プレゼンターとして。ずっと夜遅くまで頑張ってきたことも、知っている。そのぶつけるエネルギーの矛先を、変えていきたいって話だ。自分の生き方として。

「設計に絡んでみたいってこと?それとも、施工とか??まさか自分の手で作りたい職人系、じゃないよね??マリのイメージはどんな感じ??」


20年近く建築の中で生きてきて、業界外からの転職を少しも無理だと思ったことはない。実際、何人もの異業種から来た人をみてきたし、むしろ建築出てる人間が珍しいぐらいの会社にいたこともある。

全条件を満たすのは難しくても、素人だろうが学部を出てなかろうが、必ずどこかで縁がある。

ただ、そのやりたいことは本当にそれは『建築』でなければならないのかー


「設計、になるのかなぁ??アリサがやってた現場生活はわたしには絶対無理!!やりたいとは思わない…っていうか、少しもできる気がしないww」

「そぉ?勤務状況は、今のマリと対して変わらないと思うけどねw」

ま、ゼネコンや現場管理は除外ってことww

「でも、だからって、公務員になりたいわけでもないから。とはいえ、建築関係の経験なんて1つもないから、何を基準に探したら良いのかわからなくて。何が出来れば良いのかもイメージつかない。もちろん、転職サイトには登録して。未経験OKのところや事務含めて探してもらったりしてるけど、いまいち決め手がなくて。インテリアデザイナーじゃちょっと違うし」


マリは両手でくるくると回していた、フラペチーノに口をつける。
フラペチーノを支える、すらっと伸びた指先には淡いピンクのネイルが光ってる。


なんていうか…この知的&美形なイケメンガールが、むさくるしい建設現場に作業着でいるイメージは、正直あんまり沸いてこないんだよね。でも…書類を片手にカツカツとハイヒールを鳴らし、スマートに打合せをこなして社内を縦横無尽に活躍するイメージは簡単に沸く。


「まぁ、今の給料付近からスタート出来るとしたら…経理とか人事系から会社にアピールするのが早いと思うけど。給料は下がるだろうけど、空間デザインとか内装の専門会社もいいんじゃない?プレゼンは得意だし、センスいいから必要なことはすぐに覚えられると思うし」

あまり軽々しく、安易なことは言えない。
マリの今後の生き方が変わってくることに、安易にわたしの意見を聞き入れてほしくない。氷山の一角でしかない、片寄った見方。そこで何を経験するのか?何が得られるか?なんて、やったその人にしか分からない。

結局、決めるのも受けるのも、やるのも、マリだけど。
旦那は嫌がりそうだ

「なるほどね~。そうなるとやっぱり、建設会社とか工務店??あとは家具屋さんというか。インテリアメーカーとか?ちょっと見せてもらったけど。なんかしっくりこなくて。モヤモヤして」

「ふーーん?」

そもそも、マリが今まで培ってきた能力と。この外見(見た目がいらん邪魔をする職種もある)を考えると、中途半端な建設会社には『超もったいない』と思っちゃう。社長たちに怒られそうだけどw

いや、見た目は仕事の実力とは関係はない!と思うけど、だけど!見た目が良いからこそ、叶う場所があるのも事実で。そして持ち合わせたスキルの相乗効果がのる。

まさかマリをただの事務員に配置する人は、いないとは思うけど…そんなのわからない。配属先で咲いて見せれば良いとはいえ、不安すぎる。

その能力が、活かされようがない場所に行ってほしくはない。能力が封じ込められるのではなく。新たな能力が、開花する可能性のある場所…今までやってきたことが生かせる場所。会社規模が大きい、小さいとかの話ではなくて。中身と体制と社員の質の問題…

企画から関われて、ある程度の裁量権があって…新規事業を立ち上げるとか?ベンチャー的な要素を含んでるところの方が、活きる気がした。

「…マリがやりたいことに直結するかわかんないけど。建築にどれだけの仕事の種類があるか知ってる??」


建築は、その会社に行かなければ絶対に出来ない仕事がある。
裏を返せば、絶対にその仕事がこない。出来ない会社がある。


「んんーーーっ??まず設計でしょ。で、アリサみたいに造る、壊す、直す。あ、あとインテリアコーディネーターとか内装やる人とか、行政で区画整理とか申請関係まとめる系。あとは不動産みたいにマンションとか売買するところ」

おぉーっ!なるほど、よく調べてるっポイ。

「うん、うん、だよね。で、その中で現場に直接関わりたいな、って思ったと??それとも、企画してイメージしたものを造ってもらって、運営管理したりする??あとは、素材や商品開発・発明とかもあるし。造ったものを広報的に広める分野ーまぁ、これはほぼ出版社とかの仕事だけど」


マリは切れ長の目を『きょとん』とさせると
手に持っていた、フラペチーノをテーブルにおいた。

「どゆこと?」

「こうゆうこと」

簡単な図形を書いてみた。

建築の仕事をざっくり分ける

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建築の仕事って、大きくこの4つに分かれる。
会社によっては、①企画・運営会社が②設計・監理を兼ねていたり。①から④まで全て1社でおこなっているところも、もちろんある。

会社の業として、組み合わせあるある
①企画・運営と②設計・監理
②設計・監理と③施工・管理
①企画・運営と④維持管理・修繕計画

細かいことをいうと、①〜④中にもそれぞれに『企画、設計、施工、維持管理』的な仕事があるのだけれど。外の大枠でくくると、こんな感じ。

応募する前に、ちょっと再確認

・この4つの中で、何の仕事をメインとしている会社なのか
・兼ねているか、専属か
・どんな建物実績が多いか
・異動、転勤の範囲は?

特に、大きい商業施設や駅、空港などを運営している会社は、各種専属のグループ会社が必ずいるから。大きいモノに関わってみたい人は、運営会社から求人情報を調べていくと、大概グループ会社のことも載っているから調べやすい。

時が経てば出向という形で、運営側と施工両方の会社の仕事を行き来することが出来る。もちろん、経験者が優遇されるけれどそれは大概現場の話で。実務的なものは下手な経験者よりも、やる気のある素人さんの方がパソコンやソフト、プレゼン力は高い人が多いということに気付いている上の人も多い。入社のアピールの仕方次第。

未経験からの建築へ転職/職種おススメランキング

未経験からの転職(特に女性)で、単純におススメするのは…

1位 ①の企画・運営と④の維持管理。
2位 ③の施工・管理
3位 ②設計・監理…


理由は単純、①と④は発注者と呼ばれる指示をする側だから。広く物事を見れて、他の会社での経験が活きる場所。事務的なことも多いから、スイッチがしやすく建築業務に関わりやすい。素人でも仕事をしながら建築のことに詳しくなっていける可能性がすごく高い。

『こういう風にしたいんです』ということを伝える資料を作成し、あとは専門会社がそれをカタチにしていくので、カタチになる過程を広く吸収していくことができる。

▶︎オススメ1位:企画・運営

①の企画・運営は、土地や建物を自社で管理していて『造りたい』の構想を練って、ちゃんと仕上がるかを監理する人たち。
基本設計まで自社でやって。主設計はコンペなどを行って、広くアイデアを募ったり他社に依頼したりも。構想だけ練って、主設計から外注するところもある。工事まで行くと施工する会社が監督に立つから。その監督や設計事務所と打合せや調整がメインの仕事。

ここで必要とされる主な能力は、協力会社を牽引できるリーダーシップやプロジェクト管理能力。そもそも、指示する側が何やるかわかってなかったり、ゴールを決められなかったりすると致命的だから。自分で企画を練ったり、裁量権内である程度自由に仕事を進めて行きたい人にオススメ。


▶︎オススメ2位:建物維持管理

④の維持管理はでき上がったものを健全に運営できるよう管理していく仕事。長期的に修繕計画を立てたり、コストカット・付加価値アップを考えていく仕事が多い。マンションやビルの維持管理は夜勤もあるところが多いので、ちょっとネックかもしれないけれど。ココも広く物事を見れて、多様な建物に関われる。他の会社での経験が、活きる場所。

管理する建物数も多く、日々の点検業務から出たデータなどから欠点箇所を見つけ出したり。10年単位での修繕計画や、エネルギーマネジメントと言われる電力消費量や環境問題などいろんな観点から、維持費のコスト削減提案など、数字に基づいた分析力とプレゼン力が試される場所。

ちょっとした修繕工事は、発注代行として代わりに施工会社とやりとりしたり。自ら現場に立つこともあるし、仕事内容的に企画・運営とちょっと被る部分も。建物だけじゃなくて空調や電気、配管などの設備系の知識も蓄えられちゃう。少しの異変に気付ける目を持っていたり、決められた仕事を時間内に確実にこなし、データ整理から問題点を見つけてみたい人にオススメ。


▶︎オススメ3:施工・管理

③の施工・管理は、きっと1番イメージしやすい『造る・壊す人たち』
各専門会社を取りまとめて、ただの紙の上のイメージを具現化していくところ。


ゼネコンと呼ばれる総合建築会社から始まり、業種の一部を請け負うサブコン、内装や電気、給排水などの専門会社と小さく枝分かれしていく。

①の企画・運営や②の設計事務所から仕事を請け負い、カタチにしていくのだけど。工期&納期そして天気や情勢に左右されるため勤務時間は長め。&繁忙期も一定じゃない。自由に休める雰囲気は…ちょっと難しいww

当たり前だけど、砂と埃にまみれて、日々起こる出来事に創意工夫しながら、解決し。無事仕上がった感動を味わうところ♫

抱える件数や規模は会社によるけれど、基本的に何人もの人と打ち合わせをしなければいけない為、自立型でコミュニケーションが高い人が望まれる。ココは、『体力に自信あり!』自分の手で造られていく過程をみてみたい!!1箇所でじっとしてることが苦手な人にオススメ。


ちなみに、ちょっと余談話。
日本を牽引する5大スーパーゼネコン(大林、鹿島、清水、大成、竹中)には社内に設計、研究開発部門、IT部門など多くの専門部門がある。大規模開発や超高層ビル、東京ドーム、国立競技場、東大寺やお城などの歴史的建造物も手がけながら、日々研究を重ね。日本の建築の未来を牽引しているスーパーゼネコン。当然だけど、建築に関係する人だけが社員ではないです。


こんな感じで大手であればあるほど、未経験でも狙える部署は多いと思う。(派遣や委託で繋がってるとこも多い)ただ大手は、学歴や他社での特出した経験が必要だったりするから…自分の実績と得意をどう掛け合わせて、スキマをどう狙っていくかが勝負。

もし施工分野で、今回のマリのように未経験者で華やかな女性に押すとすれば…内装工事を専門にやっている会社で企画デザインから受けている会社。理由は仕上げの工事は、美的センスと事務力があれば関わりやすい分野だから。専門知識が0でも、目に見えている分、努力で上がっていきやすい。

壁紙や床、インテリアなどを中心に内観・体感をデザインしていきながら、建築の仕事を覚えていきたい人にオススメ。


▶︎オススメしない理由ww設計事務所


あくまで個人的な見解だけど…未経験で、単独の設計事務所はオススメできない。なぜなら!!専門的すぎて、関われる仕事がなさすぎるのーーっ。あとは基本的に設計以外で現場に絡むことはほぼないから。(専任の担当者は別)

要は、設計以外に覗き見出来ることが少なすぎるのがおススメしない理由。プラスってわけじゃないけど…基本、建築学科卒の新入社員で溢れているから人にも困ってないことが多い。設計ってなんだかんだで、建築業界の花形なので…

『後々、行政書士等を取得して。独立の為に申請や法令関係に強くなっときたい!!』とか。『ここに関わらなきゃ、造れないものがある!!』などのハッキリした想いや考えがあるならば、チャレンジする価値はある。ただし、経理とか人事からが良いと思うよ。もしくはCADや3Dパースなどのツールを覚えてオペレーター的な立ち位置で狙うか。

だから、設計も覗き見したい!時は、工務店やハウスメーカー、ゼネコンなど社内に設計部があるところを選んでみよう、っていうのがわたしの勝手な解釈。

▶︎オススメしない理由wwCADオペレーター

少しズレるけれど。未経験からのCADオペレーターもおススメしないです。これも大切なお仕事ではあるのだけれど、実情ただ清書しているだけにすぎないから。現場から送られてくる手書きの指示書やイメージを専用ソフトで仕上げるのだけど…ソフトの使い方をいくら覚えたところで、生きる建築知識が得られることはほとんどないから。現場で確認できるとまた違うのだけど…だいたいリモート

次から次にくる図面を修正・仕上げていくことに追われて、ペンの太さやサイズなどは覚えられても、二次元を三次元に落とし込めるようになるのは難しい。

現場を見ることがほとんどないので、相乗効果が期待できないのが1番の理由になるかな。(社内にCAD部門があって、ここを踏まないと現場出れないって会社は別)

ちなみに、わたしも新卒で入った部署はCADオペだったけど、行政手続きや打ち合わせ同行などもやっていたから、現場にすんなりスライドできた。


何をするにも行く会社を間違えれば、やりたい仕事にはいつまで経っても届かない。積み重ねていく経験は、自分が目指す生き方から、大きく外れてない方がいいと思う。もちろん、途中で変わったってアリ。

文系だろうが、理系だろうが特撮系だろうが、関係ない。建築への中途入社を狙うあなたには、今まで重ねてきた何かしらの実績がある。今、苦労なく出来ること×行きたい職種の交点を見つければ、アピールできる突破口は必ず見つかる。建築に関する資格や勉強は仕事しながら覚えていけば良い。


あとは、お相手の会社との『運』と『縁』
30代半ば。せっかく入れたのに「入るところ間違えたっっ!!」ってことは出来るだけ、ないようにしたい♫調べて&聞いてみましょ。何かの参考になれば、幸いです。


ちなみに。コレに多く当てはまってきたら、今いるところから転職した方が良いかもよ?ランキング。センスと技術は積み重ね♪だけど、心の不健康は大敵デス

7位 長時間労働で自分の時間がない
6位 裁量権がない、融通が効かない
5位 役割があいまい
4位 単純に作業量だけが多く、時間に追われている感がスゴイ→不眠症気配
3位 社内にネガティブコミュニケーションが多い、過剰な叱責→不眠症に
2位 上司からの指示の矛盾と交差、どんでん返し多数→胃潰瘍に
1位 やりたい・必要だと思うことがルールや上長の意向等で出来ない→精神、身体は全滅

どんなに仕事が大変でも、メンタルの安全性が保障された会社では、続けていく意味・価値はあると思ってます。

なぜならその先には、きっと。
あなたの磨かれた才能と、大きな自己成長、新たなスキルのカードが増えていると思えるから

どうせやるなら、自分の血肉にしっちゃってこー

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