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今年読んだ本のことなど(2022)

 今年は10年以上続けていたTwitterアカウントを消したので、ちょっとした呟きで本を取り上げる機会がなくなった。だからこれは備忘録のような、読書記録のようなものだ。相変わらず積読は増えるばかりで、手を付けて途中でやめた、やめている本も多い。もともと気移りで飽き性なのでこんなものかも知れない。

  1. バリント入門

  2. 治療論としての退行

  3. ハリー・スタック・サリヴァン入門

  4. 個性という幻想

  5. 封印された叫び

  6. 日本の医者

  7. 新しいカウンセリングの技法

  8. ケースワークとカウンセリング

  9. ルポ 虐待サバイバー

  10. アルジャーノンに花束を

  11. 駅の子の闘い

  12. 長い江戸時代の終おわり

個別に記事を書いた本はタイトルにリンクをつけて列挙しておく。

 中井久夫が亡くなったのは個人的に大きな事件だった。思えばサリヴァンもバリントも中井からだ(リストの両入門書に中井は関与していない)。とはいえ中井自身の手によるもので今年買ったのは6くらいで、あとは家にある既読の本を眺め返すくらいだったが、私にとって中井は定点なのでそういうものとして今後も手元に残るだろう。

 今年は、洗練された支援技術や理論、アカデミアやジャーナリズムから疎外されている困りごとや悩み、引いては人間存在そのものを見出そうとした年であったと思う。9,10,11はいずれもそういう私の渇望を潤す良書だった。その関連で言えば、セラピーの適応を非常に狭い層に限局している事実を指摘するバリントの存在は私にとって精神分析を学ぶモチベーションを支えていたけれど、その理解を継承する後進に出会えなかったこともあって、結果的には精神分析的な知見へのコミットメントを縮小させることになった。

 「既存の政治経済・社会システムに対する一定の理解がないと、個別支援の背景に社会問題を見出したときに有効な問題提起が出来ない」というのは、私の中で脈々と続いている考えなのだけれど、12はその関心を満たすものだった。もうちょっと折り目正しい本も読むべきではある。なおマンキューミクロは挫折中。4はサリヴァンの未発表論文集で内容も難解だけれど、昨今の心理界隈の社会志向に乗っけるような(明らかに意図的なタイトル等)紹介の仕方が、上記のような理由で好きになれなかった。

 今年は年の瀬に大きな挫折を味わった。それは知識で乗り越えられるものだったかも知れないが、自分の対人関係のパターンに由来しているのは明らかだった。今後も支援者の立場に踏み留まるためには自分のパターンを見直して必要な変化を促さなくてはいけないが、本を読むこともその全てではないが一助になるだろう。来年もそういういい本に出会えることを願ってやまない。

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