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メタバース元年、加速する新市場のトレンドとイノベーションのヒント

昨今「メタバース」という言葉が注目されています。私達VISITSは企業とイノベーションに関するテーマに以前から取組んでいますが、「メタバース」もイノベーションを考える上でひとつの重要な概念です。メタバースとは何か、そしてメタバースの先にはどんなイノベーションが期待されているのか。その疑問に答えるべく、本記事ではメタバース関連のトピックを紹介するとともに、メタバースにおけるイノベーションのヒントについて考察します。

メタバースとは

メタバースとは、広義における「インターネット上の仮想空間」を指した言葉です。ただし、メタバースが指す仮想空間では、多くの場合ユーザー同士がリアルタイムコミュニケーションや共通の体験を楽しめます。つまり、現実世界のような時間をインターネット上で体験できるということです。その体験はすでに、現実の補完ではなく現実の代替と言えます。メタバースは第二の現実世界となり得るものです。こう言い表すと、多くのミドル世代は『Second Life(セカンドライフ)』を思い出すかもしれません。実は他にも、メタバース“的”な発想のサービスはこれまでたくさん生まれてきました。ですから、メタバースが指す概念自体は、実はさほどイノベーティブというわけではありません。

では、改めてメタバースと再定義されて注目されているのは、具体的にどのようなものなのでしょうか。国内外のメタバースに関連する事例を紹介しつつ、考察していきます。

「Fortnite」―エンターテインメントをメタバースで楽しむ時代へ

Epic Gamesが配信するゲームFortnite(フォートナイト)は、メタバースの代表例として挙げられることの多いサービスです。メインコンテンツはバトルロワイヤルのルールに則ったTPSゲームですが、その他、特定のユーザー同士が集まって自由な遊び方を選択できる、カスタマイズ性の高いプラットフォームを有することが大きな特徴です。

さらに、近年は米津玄師やアリアナ・グランデ、星野源といったアーティストを招き、オンライン・ライブを実施。ゲームというジャンルを超え、ユーザーが多様なエンターテインメントを体験する仮想空間を提供しています。

また、Fortniteはマルチプラットフォームに対応し、コンシューマーゲーム機でも遊べるのが特徴です。小学生の間でも人気である現状を踏まえると、ネクストジェネレーションにとってメタバースは肌に馴染んだものとなっているかもしれません。

doublet×imma―メタバースが実現するダイバーシティ

アパレルブランドdoubloet(ダブレット)が2022年1月に開催したフィジカルショーは、バーチャルモデルimmaが現実の会場を行き交う驚きの演出が話題に。

本来immaは3DCGによって作られたモデルなので、この世に実在しません。体格がまちまちだったり、車椅子、義足を用いたりするモデルたちが等しくimmaのマスクをかぶってショーに登場することで、メタバースに広がるダイバーシティを表現したそうです。メタバースでは自由な容姿を選択することができ、身体のハンデを問わず行動できます。今後デバイスの操作性が改善されていけば、メタバースはダイバーシティを具現化するプラットフォームとなり得m。

BMW×NVIDIA―次世代3Dソリューションがもたらす製造業改革

NVIDIAが提供する「Omniverse」は、3Dデザインの仮想コラボレーションと物理的リアルシミュレーションを実現する画期的なソリューションです。複数ユーザーが共有仮想空間で3Dデザインを行うとともに、ワークフローの最適化を行います。このソリューションを活かし、BMWは“未来の工場”というビジョンのもと、生産ラインのシステム統合とデジタルヒューマンの活用などを進め、生産ラインの自動・効率化を進めています。オーダーに応じたカスタマイズさえもリアルタイムで3Dデータに落とし込み自動生産する構想は、製造の概念を覆すものです。作業者が工場に居なくても、仮想プラットフォームのデータを介して個別化された商品が生まれる時代の到来とも言えます。

NFTとメタバース―新しく安全な経済圏のポテンシャル

また、メタバースと並べて語られることが増えてきたのがNFT(Non-Fungible Token)です。NFTは仮想通貨の一種であり、誰が所有しているのか識別できる一種を指します。NFTは識別子をもった通貨として流通し、メタバース上でのデジタルコンテンツの売買などに役立ちます。所有者を証明するための手続きを簡略化できるだけでなく、すべての取引履歴が残る性質上、価値交換において生じるリスクや不正も軽減できるのが特徴です。今後NFTが浸透してくると、メタバースにおける経済活動や市場といったものが注目されていくでしょう。また、これまで複製可能であることが価値を低下させる原因となっていた音楽や絵といったデータコンテンツは、NFTで取引されることによってその呪縛から解放開放されます。NFTの普及によって、デジタルアート市場は目覚ましい成長を遂げています。

メタバース市場のリードカンパニーになるために

こういったメタバースへの潮流を受け、あらゆる領域の企業がメタバース事業について模索しています。しかし、従来の価値観や戦略をメタバースで再現するだけでは、メタバース上の市場競争で優位に立つことは難しいでしょう。
メタバースで事業展開する際のヒントは、人々が現実世界において解決し得なかった課題に着目することです。というのも、メタバースは身体から開放された精神が自由に体験を追求する場所です。物理的距離や空間などの障壁が解消され、今まで現実(リアル)において不可能だったことが可能になる。だからこそ、満たされなかった部分を満たせる。この観点から事業やマーケティングの方針を考えていくと、メタバースを最大限に活かした戦略が見えてくるはずです。

また、メタバース市場で成功するためには、イノベーティブなマインドとデザイン思考が必要不可欠です。物理的制限も身体的な限界もなく、価値基準すら柔軟に変化する第二の世界で消費者のニーズを的確に捉えていくためには、共感力とビジョナリーな戦略構築が求められます。 それこそ、これまでゲームなどの経験を通じてメタバースに馴染んだZ世代の感覚やセンスは大きなヒントとなるのではないでしょうか。

「こんな事が出来たら」という理想を起点にテクノロジーであらゆることが実現出来る、遠い未来のことのように思えていた世界がすぐそこまで近づいています。更にその先の誰も知らない未来に価値を提供する、そんなサービスをデザインしたいものです。

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