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特別研究員コラム⑩:モデリング             ~憧れの上司が部下の内省を深める?~

 皆さんこんにちは!VCラボ特別研究員の黒木です。いつの間にか連休も終わり、5月も半分が過ぎました。5月病が流行する季節です。私も学生+社会人で緊張やプレッシャーが続き、ペースダウンしているのが自分でもよく分かります。やらなくてはいけない仕事、解決しなくてはいけない課題に埋もれて、どうにも行き詰ってしまっている状態から抜け出す方法を考える日々か続いています。そんな時にふと思い出したのですが、大きな企業で働いていた時、同じ部署に沢山の同僚がいて、周りから信頼されている優秀な同僚や上司を観察して、自分と何が違うのか考えていた時期がありました。しばらく考えて、明らかに、この対応が違う!と感じる部分があったら、真似してみていた時期があります。毎回ではありませんでしたが、真似してみた結果上手くいったこともありました。今の自分の一部になっている程身についてしまったスキルや考え方もあったりと、行き詰まりから抜け出せた感覚を持つことができたように思います。そこで今回は、5月病からも抜け出せる?!モデリングについて書いてみようと思います。

職場におけるモデリング

 モデリングって、聞いたことがあるようでない言葉ですよね。モデリングは心理学用語で観察学習とも呼ばれます。

社会的学習理論(モデリング理論)とは?
「社会的学習理論(モデリング理論)」とは、自分が直接体験した事柄ではなくても、他者の体験を観察・模倣すること(=モデリング)で学習できることを説いた理論です。カナダ出身の心理学者で「自己効力感」を提唱したことでも知られるアルバート・バンデューラ氏によって、1970年代に確立されました。それ以前は、行動主義心理学における学習、つまり学習には自分自身で体験することが必須だという考え方が主流でした。代表者を観察することでその他の大多数に学習させることができるとした社会的学習理論は、心理学だけでなく、教育学や社会学へも影響を与えました。
社会的学習理論により、学びの可能性も広がりました。学習者が直接体験したことだけではなく、他者の行動を観察し、模範することで学習が可能であると明らかになったことで、学習のアプローチも大きく変わることになりました。社会的学習理論における一連の学習プロセスは、次の四つに分類できます。
(1)観察対象に注意を向ける(注意)
(2)対象の行動内容を記憶に保持する(保持)
(3)対象の行動を模倣する(運動再生)
(4)行動に対するモチベーションが高まる(強化と動機付け)

日本の人事部:https://jinjibu.jp/keyword/detl/1462/

他者を観察することで深まる内省と内発的動機付け

 皆さんは、憧れている先輩や上司が、自分と何が違うのか観察したことありませんか?「観察すること」がきっかけとなり、自分の思考や行動との違いを見出すことで、内省が進むように思います。なぜなら、自分に何らかの課題があることを認識していて、その課題が具体的になんなのか、どんな解決策があるのか、心のどこかで知りたいと思っていて、自分に備わっているもの、補ってよりよくしたいものがなんなのか、自分自身に問うているからこそ、他者との違いを観察しようとする、と考えているからです。憧れの存在と自分との違いを観察し、「自分にもできるはずだ」と真似してみようとする。自分に課題があることに気が付き、それが何であるのかを、他者と比較することで内省しながら見つけていく。そして、自から進んで、憧れの人を真似ることで、これまでより一歩成長した自分になる。憧れの人に少しでも近づこうとすることは、自らの課題を認識し、克服するための内発的動機を高めることができるように思うのです。私はモデリングを上手く活用することで、自分の世界や可能性を前向きに広げてくれると感じています。そして、憧れの人と重なり合いがどんどん増えていき、自分の仕事の幅も広がっていく楽しさがあるようにも感じます。

上司という存在は良くも悪くも手本となりうる

 モデリングについて考えるたびに、真似をされる「上司」という立場にいる存在が、いかに職場や部下の成長に影響を与えるかも、考えなくてはいけないと感じます。バンデューラの実験では、子供に攻撃的な動画を見せると、子供はそれを真似るという結果から、負の影響を与える行動も真似られてしまうことが分かっています。感情的な叱責、こだわりが強すぎて非寛容的な手順などが当たり前になっている職場環境では、部下もそれを受け入れて、真似るようになり、その環境が当たり前になっていく可能性があるということになります。反対に、上司がモデリングを意識して、広めたい行動や考え方を積極的にやっていくことで、部下もそれを真似て、どんどん広がっていく。前回の記事に書いた五十六流マネージメントにもつながるように思います。上司として、何をするか?ばかりではなく、自分の職場がどうなっていて欲しいか、また理想とする職場にするために、自分がどうありたいか、を深く考える必要があるように感じています。自分がどうありたいか、仕事を通して何を実現したいか、何のために働くのか、少し哲学的な問いを自分自身に投げかけることは、どう行動するか、と同じくらい、大事なことだと感じています。真似をされる上司自信も内省する必要がありますね。

部下の内省を深める”観察対象としての上司”

 大の大人である部下に言葉を使って叱責しても、内省を促したり、自発的な行動に繋げることはなかなか難しいものです。ところが、部下の心に響くような上司の態度や仕事への姿勢は、必ず部下が見ています。上司である自分自身が、憧れの存在となるように意識して行動すると、部下は自らを省みて、自ら進んで重なろうとしてくれる。そう信じて、行き詰ったときも、四面楚歌な時も、腐らず自分を律しようと思うと、ちょっと前向きになれる今日この頃です。


父を見習って早寝早起きを…時々実践中です♪

特別研究員プロフィール
黒木 貴美子  (クロキ キミコ) 
ビジョン・クラフティング研究所 特別研究員
精神保健福祉士