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チビさきみのこべや⑪『セミナーを振り返るwith特別研究員黒木さんpart1』

みなさま、こんにちは。VCラボのチビさきみです。
今日は、VCラボ特別研究員の黒木さんと、9月8日に開催した産業ダイアローグ研究所SDラボとVCラボの合同セミナー『「VUCA時代の対話」オープン・ダイアローグの経験から』について、振り返ってみます。

VCラボ特別研究員の黒木さんは、日本企業と外資系企業の人事での経験を活かして、「自分や家族の生活を大切にしながら、健やかにやりがいを持って働くことをサポートしたい」と、現在、大学院で産業臨床を学んでいます。

この振り返りでは、オープンダイアローグ・対話をどのように捉えるのか、人事の視点とカウンセラーの視点の違いも浮き彫りになりました。VCラボのサービスやカウンセリングの有効性をさらにご理解いただくためのヒントになりそうです。

なお、黒木さんが再び学ぼうと思った経緯は、こちらの動画からどうぞ。
 



人事を経験したから感じるオープンダイアローグの可能性

チビさきみ(以下、チビ):さて、今回のセミナーでは、オープンダイアローグそのものにも関心が集まっていましたが、人事時代に実際のコミュニケーションでもっと工夫できることがあると感じられた黒木さんは、どのような感想をお持ちですか?
 
黒木さん(以下、黒木):オープンダイアローグのように、聴き手がいったん受け取って、なんでも話せるオープンな環境で受け止めてもらえる、それに対してポジティブな、よいフィードバックが返ってくるというコミュニケーションスタイルは、職場では意識的に行うコミュニケーションだなと思いました。普段はやはり一方通行で、否定的なコミュニケーションというものがどうしても増えてきてしまうのかなと思います。オープンダイアローグのロールプレイをやってみて、そう感じました。
 
チビ:ほお…、普段の「一方通行・否定的」なコミュニケーションとは具体的にどのようなものですか?
 
黒木:例えば休職をしている方から復帰をしたいと申し出があった場合を想定すると、会社としては、復帰後の業務など、もうすでに決まったことをご本人に伝えるという形で。ご本人が納得する・しないというところをきちんと聴くというようなコミュニケーションはあまりできていなかったんじゃないかと、自分自身の過去を振り返って思います。例えば、復帰を「今はしないでください」なのか「してください」なのか、ご本人の希望よりも、「こういう部署でこういう仕事をしてください」という会社側が、どちらからかというと一方的にきまったことをお伝えする、そこに、ご本人の意見や気持ちを反映させるようなコミュニケーションはとられていなかったです。まあ、そこで、ご本人が反対の意見をおっしゃったとしても、それは「会社として受けられません」というような、受け止めるよりはご本人の意見を否定するような形のコミュニケーションになってしまっていたんじゃないかと、今思い出すと感じています。
 
チビ:正解というか、会社側に答えがあって、そこに向かっていく話なんですね。
 
黒木:そうですね、その通りだと思います。人事の仕事をする中で、自分の気持ちというか、その社員に共感するとか、あの場面で出てくることもなかったし、言葉にすることもなかったということなんですかね…。あの段階的に、例えば、新入社員が「ちょっと悩んでます」と話をしようとしてくれているときは、なるべく聴くようにしていたし、「もうちょっと頑張ってみようか」というような励ましたり、できていることを褒めたりというコミュニケーションが多いんですけど、もうそれ以上進んでしまって、じゃあご本人が次の身の振りを考えなきゃいけないという段階になると、決定事項をお伝えする、「もう決まったことなので、受け入れてください」ばかりになってしまうコミュニケーションだったじゃないかなと振り返ると思います。
 
チビ:人事のお立場で、いろいろなお仕事があって、やることもサポートしたい人もたくさんいるという中だと、会社としてはどんどん方針を決めて、そこに則って進めていくということが必要なんですね。ただ、オープンダイアローグは、「ご本人のことをご本人のいないところで決めない」という大原則があって、この辺りは実際の職場では難しいことでですか?
 
黒木:実は、そこのジレンマは、人事にいるときから若干感じていて。人事に相談してくる方って二パターンあって、一つは、「自分では上司に言えないので、人事から言ってください」という方もいらっしゃるんですけれど、すごく頑張っているからこそ、評価に響くのが嫌だとか、自分の立場が変わる、下がってしまうことを恐れて相談すること自体を躊躇されたり、ご本人が「他の人には言わないでください」と前もって条件付けして相談に来られる方もいらっしゃって。ただ、ご本人が「言わないでください」と言っていても、人事としては放置しておくとリスクがありそうだと判断したら、やはり少し情報の共有範囲を広げざるを得ない、で、広げた結果、ご本人のいないところで動きが出てしまって、ご本人が勘付いちゃうということも結構ありました。そして、それが余計にご本人の心理的負担にもなっている状況が割と起こりやすい環境だったなと思うんです。なので、ご本人を入れて話ができる環境は、すごいご本人にとって安心できるんじゃないかなと、セミナーでロールプレイをやってみて、自分が実感したことです。
 
チビ:確かに、オープンというより、クローズという感じがします。正解、方向性も決まっているし、会社としても決め打ちでやっていくし、話自体もクローズでというところですね。
 
黒木:(大きくうなづく)
 
チビ:だからこそ、オープンダイアローグの可能性というものがすごく感じられるのではないでしょうか。一方で、「誰にも言わないでください」と言いながら相談に来る人は、その場ではクローズを望んでいます…。黒木さんという人事の人だけに話をしたいという、そういう気持ちは、結構困っている人にはあると思います。でも、そういった希望がある中で、オープンダイアローグは、2人だけということはなく、1対1ではないので、オープンダイアローグに持っていくには、結構ご希望とギャップがありますよね。
 
黒木:本当に、その通りで…。そのギャップをロールプレイをした後に考えてみたんですが、割と職場のコミュニケーション自体がクローズ。何か決めるって言った時に、オープンで皆で話し合いましょうと、そういうことを大事にしている会社もあるんだろうけれど、やはり「何かを決めましょう」というときはクローズなコミュニケーションになりがちで、オープンにすることのメリットやオープンにすることの大切さみたいなものを感じる機会自体が、職場にいると、そんなにないんじゃないかなって思うんです。だから、いざ自分が困った時の相談の仕方も必然的にクローズになっちゃう。オープンで決めた方が自分が納得しやすいという感覚が持ちにくいのが職場なのかなと思ったんです。
 
チビ:まさに曖昧にしておかないというところですね。
 
黒木:(うなづく)
 
チビ:でも、きっと、オープンダイアローグは曖昧にしておけるということによって、オープンダイアローグの目的である対話を続けるということができる、決めないからこそ続けられるというよさがあると思うと、さきみが言っていました。そうすると、やはり職場で取り入れていくには場面を選びそうですね。
 
黒木:場面も選ぶし、それに慣れる時間も必要なのかなという風に感じました。
 
チビ:そうですね、オープンダイアローグをやっていく人たちが慣れるということも必要かもしれないです。さきみたちはカウンセラーで、ご相談者とじっくり向き合って、曖昧にしておいた方が可能性が拡がることや曖昧にしているからこそ見えてくるものがあることを知っているから、曖昧にしておくことにすごい慣れちゃって平気なところがあります。当たり前にやっているけど、例えば、さきみが、調子が悪い部下のご様子を管理職に伝える時、管理職はまず「良くなるかどうか」を知りたいし、「いつ良くなるか」を知りたい。でも、良くなるとは思うけど、その良くなり方は管理職の思い描く通りではないかもしれないし、部下が元気になったときに復帰したいと思うかどうかもわからないって。さきみはカウンセラーとして、いろいろな可能性を含みながら待っていられるけど、会社としては、人員確保とか現実的な問題があるから、管理職が知りたい気持ちもわかるって。このギャップを埋めていくにはどうしたらよいのかというのもあるし、と。
職場復帰の場面など、セミナーで米沢先生が話していた「どういう配慮や職場の整備といった工夫ができるか」みたいなところでは、今すぐでも、オープンダイアローグを活かせそうです。でも、復帰の判断という場面では難しい気がして…、とも言っていました。
 
黒木:判断が必要だからですかね…。クローズじゃないと判断にならない…。休職中にご本人と対話を続けるということを重ねていたならば、判断自体が少し変わってくるかなと、可能性は感じるんですよね。判断のそのタイミングだけで、一発勝負でオープンダイアローグをやろうとするとうまくいかないかもしれないけど、そこに至るまでのご本人の思いを聴き手がちゃんと受け止めるという作業を重ねると、判断はどうなるのかなという思いはあって、そこに可能性を感じるところでした。
 
チビ:そうですよね、土壌づくり、関係づくりの段階で使えるとよいですね。
 
黒木:うんうん。
 
part2に続く…


たくさん話して、たくさん笑った黒木さんとちびさきみ



VCラボ特別研究員 黒木 & VCラボゆるキャラ ちびさきみ


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