見出し画像

Radiomics超入門:はじめに

こんにちは。

「Radiomics超入門」では、Imaging Biomarker Standardisation Initiativeリファレンスマニュアルを元に、その概要、プロセス、技術について解説します。Radiomicsの各種画像特徴の計算には「RadiomicsJ」を使っていきます。

Radiomics

Radiomics(レディオミクス)は医用画像から得られる特徴と、分子生物学的な特徴との関係を紐解くための手段の一つです。分子生物学的な特徴というのは、例えば、CTやMRI画像から見た人体のマクロな解剖構造だけでなく、代謝あるいは染色体やDNAなどのミクロな情報を含みます。Radiomicsは、がん研究などで大きな伸びを示している[Lambin2017]、とても興味深い研究分野です。

画像バイオマーカー・画像特徴・特徴量

従来から、何らかの指標になる特徴は「バイオマーカー」と呼ばれてきました。バイオマーカーとは、「正常な生物学的プロセス、病理学的プロセス、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定・評価される特性」[Atkinson2001]とされています。

バイオマーカーは、組織サンプル、細胞プレーティング、イメージングなど、様々な情報資源から測定されます。特に、イメージングから取得できるバイオマーカーは、イメージングバイオマーカーと呼ばれることが多いです[OConnor2016]。

イメージングバイオマーカーには、専門家の解釈を必要とする定性的バイオマーカーと、数学的定義に基づく定量的バイオマーカーがあります。定量的イメージングバイオマーカーは計算を自動化できるため、ハイスループット解析(大量のデータを処理する解析)が可能です。

このような(ハイスループットの)定量的バイオマーカーを、定性的イメージングバイオマーカーと区別するために、ここでは、画像バイオマーカー(image biomarker)と呼ぶことにしましょう(IBSIリファレンスに倣って)。

画像バイオマーカーは、ボクセルの体積やピクセルの平均信号強度など、画像の内容(領域)を定量的に特徴付ける情報です。歴史的に、コンピュータビジョン分野と密接な関係があり、画像バイオマーカーは画像特徴(image features)とも呼ばれます。

本解説では、生命科学や医学に限らず、より一般的に適用できるように、バイオマーカーではなく、特徴量という用語を使用することもあります。これらは同じ意味であることを前置きしておきます。

本解説のコンセプト

本解説では、Radiomicsの研究を紹介するのではなく、具体的な手順や、扱われる画像特徴(画像バイオマーカー)について重点的に解説を行っていきます。画像バイオマーカーを計算するための画像解析や処理は、研究者の職人技で行われるプロセスを含んでいます。何か画像処理を行う際に、必ず処理ごとにパラメーターを設定しなければなりませんし、手順の順序も変わることがあります。このような条件の違いは計算結果となる特徴量へ少なからず影響を及ぼすものです。

Radiomicsは、計算処理のガイドラインや特徴量の定義がまだそれほど広く普及しておらず、情報として乏しいため、「未開拓の領域」[Caicedo2017]と言われてきました。そこで本解説では、IBSIリファレンスマニュアルを基に、画像バイオマーカーのコンセンサスに基づく推奨事項、ガイドライン、定義などを紹介し、一般的なRadiomicsの処理スキームを解説することで、このフロンティアの一端を切り開く取り組みを後押ししたいと思います。

本解説の活用により、Radiomics研究の再現性の向上や応用の発展が広がることを期待しています。

Image biomarker standardisation initiative

画像バイオマーカー標準化イニシアチブ(Image biomarker standardisation initiative, IBSI)は国際的な共同研究組織です。画像バイオマーカー標準化イニシアチブは、Radiomicsを対象として、ハイスループットな定量的画像処理・解析から得られる画像バイオマーカーの標準化を推進しています。


記事一覧

以降のシリーズからは、具体的な内容について掘り下げていきます。
次のような目次(随時更新)になります。


RadiomicsJの引用はこちら

Kobayashi, T. RadiomicsJ: a library to compute radiomic features. Radiol Phys Technol 15, 255–263 (2022). https://doi.org/10.1007/s12194-022-00664-4

RadiomicsJのリンク

https://github.com/tatsunidas/RadiomicsJ


Stay visionary


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?