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嘘日記

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全部嘘で日記を書いています。 日記をまともに書いてこなかったので、体裁として日記になっていない部分が弱点です。 1000文字程度の短いストーリー集としてお楽しみ下さい。
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2023年8月の記事一覧

噓日記 8/31 コロナ禍と学生生活

噓日記 8/31 コロナ禍と学生生活

俺がこのコロナ禍でやり残した高校生活。
キラキラした思い出を積み重ねていくはずだった。
もう終わるこの8月も本当なら友達とキャンプをしたり花火を見たり、それこそ彼女だっていたかもしれない。
それは幻想みたいなもので、あるはずだったのにという後悔と、もしコロナ禍じゃなくてもそんな道を歩めたのかという疑念のちょうど間にある。
でも俺はそれをちょっとだけ自分に都合のいいラインで線引きして、やり残した、や

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噓日記 8/30 無言開催リッツパーティー

噓日記 8/30 無言開催リッツパーティー

この世でまだ誰も成し得ていないことをしたい。
人に生まれたからには誰もが抱くそんな感情。
人がいなくなった校舎でここは誰にも触れられたことがないだろうと思しき場所を探しては触れて歩いた子どもの頃と同じ感覚。
それが不意に止めどなく溢れて、如何ともしがたくなったため、幼少期より共にそんな感覚を共有し続けた愚かな友人たち2人を自宅へ招き入れて無言リッツパーティーを開催した。
パーティーなんてものはスピ

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噓日記 8/29 妖怪と運転

噓日記 8/29 妖怪と運転

俺はいつも車を運転している。
安全運転に気を配りながら、どこか気を抜きかけてしまう自分を叱責しながらハンドルを握る。
これでも免許取得以来、無事故無違反だと考えると、まぁ悪くない運転をしているのではないだろうか。
そんな俺が運転をしていると、稀に見かけるものがある。
自分でも完全には飲み込めない出来事なのだが。
あれは夢か幻か。
車を運転していると、俺はたまにバケモノに出会う。
スピード違反をして

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噓日記 8/28 ガソリン代について

噓日記 8/28 ガソリン代について

最近、ガソリン代が高すぎる気がする。
俺史上過去最大風速でそんな気が過っている。
数年前まではこのくらいの金額で満タンだったな、と思っていた金額の1.3倍くらい高い。
マジでしっかり財布にダメージを与えるくらい値上がりしている。
この痛みを分かとうと、ガソリン代が高いという話をジジイに振ると大抵俺の時は60円しなかったという自慢をしてきてウザい。
今3倍になっているという事実から目を逸らし、人生を

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噓日記 8/27 美容院にて

噓日記 8/27 美容院にて

今日は美容院に行った。
良い加減長くなった前髪が辛くなったので、少しさっぱりして秋に備えようと考えたのだ。
美容院に行くと美容師が色々声をかけてくる。
どんな髪型にしますか?
どんな整髪剤を使いますか?
はっきり言う、知らん。
髪型の名前を覚えるのに脳のリソースを使いたくないし、どんな整髪剤を使っているのかも普段適当に買ったものを使っているだけなのだ。
聞かれても答えられないから、良い具合に……と

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噓日記 8/26 米騒動令和最新版

噓日記 8/26 米騒動令和最新版

満腹で死ぬほど米を食べたい。
日本人のほとんどがそんな欲求を持っているだろう。
我々のDNAには米が刻み込まれている。
肉を見ても、魚を見ても、漬物を見ても、それを食べる想像の横には必ず米が現れる。
呪いと一緒。
ずっーと一緒。
トロと一緒。
さて、そんな米が先日、某プロ野球チーム(中日ドラゴンズ)で禁止されるという事態が起こったそうだ。
実際の顛末では某外国人選手(ライデル・マルティネス選手)が

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噓日記 8/25 害虫

噓日記 8/25 害虫

これは友人の身に実際に起こった話だ。
私と彼は幼馴染で幼少期から多くの時を共に過ごした。
そんな彼がこの話を聞かせてくれた時のあの鬼気迫る表情が今でも脳裏にこびりついている。
話の時間軸としては今から約20年ほど前。
我々がまだ小学生だった頃に遡る。
当時は団地暮らしや社宅暮らし、家持ちなんて言い方をしてそれらの住居をコミュニティの軸としているきらいがあった。
まだ今よりも家制度が深く生活に根付い

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噓日記 8/24 歳下の男の子

噓日記 8/24 歳下の男の子

歳下の男の子が成功しているのを見ると、どうにも許せなくなる。
自分の器の狭さだとか、そんなちゃちな原因では断じてない。
俺は他人の全ての成功を妬んでいるため、歳下の男の子だけに妬み嫉みが湧くわけではないのだ。
そして、歳下の男の子の場合はただ単に妬むだけではない。
許さないのだ。
断じて。
成功した歳下の男の子の姿を目の当たりにすると可能な限り彼らの実家を攻め立てる。
一番攻められたくないところが

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噓日記 8/23 舌ピアス痛そう

噓日記 8/23 舌ピアス痛そう

痛そう。
何がって舌ピアスだ。
昼時、外食をしていたら向かいの席に座る男と目があって、何を思ったのか男は私を誘うかのように扇情的な目つきをしながら舌をだらりと見せつけてきた。
その舌先には銀色の光る粒が付いていて、それが舌ピアスだと理解するまで数瞬時間を要するくらいに私には縁遠いものだったのでじっと凝視をしてしまった。
メニュー表を眺めてパンケーキにアラザンなんてかかってたりしたかなと確認までした

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噓日記 8/22 虫の動画

噓日記 8/22 虫の動画

俺は虫が嫌いだ。
意思を持たない均一な目でシステマチックに蠢く姿を見ているだけで気分が悪くなる。
怖いもの見たさで虫の生涯を調べてみては、生から死、そして次代へのサイクルがあまりにも効率化されているのを目の当たりにして鳥肌を立てて怯えている。
だがあえて最近はその虫について、明確に意図を持って深く調べるようになった。
私は虫を知ろうとしている。
恐れとは不理解からくるものだ。
理解できない物事を人

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噓日記 8/21 日記の書き方

噓日記 8/21 日記の書き方

日記を書くのが好きだ。
日に一度、自分と向き合う時間がある、そう考えるだけで自分を愛してやれるような感覚が増す。
日記を書く時間というのは私にとってそのまま自己肯定感を培う時間なのだ。
そんな時間だからこそ私は自分の言葉に嘘をつきたくない。
飾ればいくらでも綺麗になる毎日を、自分の目で見たまま等身大の小汚さでちゃんと残していく。
魂だけをその言葉に宿らせる。
出来る限り飾らず、平坦で、それでもちゃ

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噓日記 8/20 カフェのモバイルオーダー

噓日記 8/20 カフェのモバイルオーダー

買い物の途中、若者の間で流行っているカフェに立ち寄ることがある。
自己弁護のために綴っておくが、私は期間限定のドリンクを注文するような尻軽ではなく、自分の中のお気に入りのドリンクを同じカスタマイズ、同じサイズで頼むような硬派な注文しかしない。
そのカフェは往々にして混雑しているので注文して商品を受け取るまで15分程度かかることが多い。
私はその時間がどうしても馬鹿らしく思えてならず、モバイルオーダ

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噓日記 8/19 フェス参戦

噓日記 8/19 フェス参戦

今日はフェスに行った。
めっちゃ嘘。
全然行ってない。
俺がフェスに行ったりしたら100%気絶してぶっ倒れる。
皆々様にご厄介掛けがちな若造になる。
だから俺はフェスには行かないし、ライブにも極力行かないようにしている。
マイケルジャクソンのライブよろしく、好きなアーティストが立っているだけで気絶する可能性があるからだ。
サンボマスターがポジション高めにギターを構えていたらそれだけで飛ぶ。
出来っ

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噓日記 8/18 テープの玉

噓日記 8/18 テープの玉

近所のパトロールをしていたところ、公園にて近所に住むガキが夏休みだからなのか備え付けのベンチにワラワラと小虫よろしく集っていたので何事かと近寄ってみた。
カードゲームなら仲間に入れてもらおうと思ったのだが、その中心にいたガキが握っていたのは歪な形をした奇妙な玉だった。
アクティブな遊びをする気配があったので戦力外の俺はそそくさとその場を離れようとしたのだが、ガキの中の一匹が空気も読まずに声をかけて

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