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噓日記 8/27 美容院にて

今日は美容院に行った。
良い加減長くなった前髪が辛くなったので、少しさっぱりして秋に備えようと考えたのだ。
美容院に行くと美容師が色々声をかけてくる。
どんな髪型にしますか?
どんな整髪剤を使いますか?
はっきり言う、知らん。
髪型の名前を覚えるのに脳のリソースを使いたくないし、どんな整髪剤を使っているのかも普段適当に買ったものを使っているだけなのだ。
聞かれても答えられないから、良い具合に……という最悪の答えしかできない。
俺は髪を切りたくて美容院に行くのだ。
俺は美容院に行きたくて美容院に来たのではない。
何度もこの美容院に通ってはいるものの、俺の薄味の会話のせいで美容師とは何の関係性も築けていない。
美容院に行くというステップ自体は、自分自身をリセットするような感覚がして好きなのだが、美容院で話しかけられることはどうしても慣れない。
シャンプーをするときにオシャレですね、なんて言われると何と言えば良いのか分からない。
そうだろ、とも言えないし、この服はどこのブランドでなんて説明するのも気持ちが悪い。
だからへへッと気味の悪い笑みを浮かべることしかできないのだ。
パーマをかけてもらう時なんて最悪だ。
耳になんか保護用のシャワーキャップみたいなものをつけられるのだが、美容師は普通にめちゃくちゃ話しかけてくる。
正直よく聞こえない。
ほぇ〜、そうなんスネ、ティヒヒという三つの返答だけでどうにかやり過ごしているが確実にコミュニケーションは取れていない。
その日の混雑具合とかを教えてもらっても正直知らん。
俺が行くときに混雑してないなら別にどうでも良い。
混雑しているときに行った客にザマみろと思うことしかできない。
俺は本当はもっと優しい子なのに。
あとパーマの様子を見ます、とかいって俺の髪の様子を見てくる。
こちとらAGAが心配だから出来ることなら女の子に髪の毛を見られたくないのだ。
なのに無遠慮に見てくる。
俺が美容院で自発的に聞きたいことなんてただ一つ、俺の髪はまだ大丈夫ですか? それだけだ。
あとはもう何でも良い。
寝たふりをしたい。
若い女性美容師がマッサージしてくれるときにだけ起きるからあとは寝てると思ってくれ。
肩を揉んでくれる時のかたぁい♡だけを聞きたくてこの美容院に通っているんだ。
あとはどうでもいい。
終わった後に鏡で後ろから見せられても俺には何とも言えない。
だってこんなふうにして欲しいというビジョンがないから。
俺は女性美容師のかたぁい♡を聞きにきているのだ。
最近硬さが足りてないから、それだけを聞きたくて。

どりゃあ!