[衝撃] 雲の上に行ってみた話
私は生まれてこの方、飛行機に乗ったことがありません。
先日、北海道の稚内に住む親戚のおばさんから、
「近くに新しい空港ができた。開港日は、航空券を無料にして全国から来てもらい、稚内の魅力を知ってもらうんだって。私もおいでよ。久しぶりに会いたいな。」
そういえばもう9年も会っていなかった。
「無料」のことばに目がない私は、すぐさまネットからチケットの予約をした。
しかし、いままで飛行機に乗ったことはなく、とてもこわかった。
某テレビ番組のファンである私は、エンジントラブルや尾翼破損などの事故を数々目撃していたから、やばい乗り物だと思っていた。
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搭乗当日。
恐怖心MAXの私は、海外旅行でもいくのかと言われる程のデカリュックに、着替え・メイクセット・長靴・防弾チョッキ・宇宙食を限界まで詰め込んだ。
もちろん、飛行機初心者の私には荷物の重量制限なんて知らない。
重量オーバーで料金が1万円とられてしまったが、これも安全のためである。仕方がない。
離陸直前。
ガタガタと揺れる機内で、私は密かに死を覚悟していた。
となりで平然とした顔で寝ているオジサンをみて、少し安心した。
斜めになった感覚が気持ち悪くて、思わず目を閉じた。
ポーンという音とともに機体は安定した。
少しこころに余裕のできた私は窓の方に目をやった。
思わず心で叫んでしまった。アンビリーバボーってね。
未知の景色に感動していると降下のポーンがなった。
「飛行機って早すぎる...!!!」
しかし、ここからがまた地獄。
ジェットコースターを「あの程度の乗り物」と称し敬遠していた私にとって、冷や汗あふれる地獄の時間だった。
着陸ですっかり安心した私はすぐさまおばさんに連絡。
私「いまついたよ。」
おばさん「居間にはいないが。」
私「いや、いま稚内の空港に着いたよ。」
おばさん「冗談よ、空港で待ってるわ。」
ジャパニーズジョークが大好きなおばさんにやられてしまった。
私はおばさんと9年ぶりの再会と熱い抱擁を交わし、おばさん家で一日過ごした。
その日の夜は、昔話で盛り上がってとても楽しかった。
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翌日、別れの朝。
楽しい時間を過ごした人との別れは切ない。
おばさん「またおいでね。」
私「近いうちに絶対くるから。」
空港に着いて別れの涙を流していると、欠航のお知らせを耳にした。
外は真っ白。降雪によるものだ。
明日出社しなくてはならないと、私はとてもあせっていた。
これも冬の北海道の試練だ。
おばさん「仕方ないね。家までおくっていくよ。」
私「遠いし雪がやばいからいいよ。」
おばさん「いいから。」
私はおばさんの後ろに乗って、しっかりと腰につかまった。
真冬にバイクで大丈夫だろうかと心配になったが、レーサーだったおばさんの腕を信じることにした。
真っ白な景色しか見えない私にはとても長く感じた。
ようやく1時間かけて私の家に着いた。
私はせっかく家まで送ってくれたのだから、お茶でもしようかとおばさんを家に招いた。
家にあった大切な高級日本酒におばさんは驚愕した。
私はお礼として高級酒をせいだいに振舞った。
おばさんはひどく酔っぱらったみたいで、今夜は家に泊まることになった。
豪華な日の出とともに目が覚めた。
家には昭和の演歌と古びた小さなスナックのような空気が流れていた。
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