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全国各地にきっと〈神戸〉や〈三宮〉があるだろう

神戸の中心あたりを〈三宮〉と呼ぶというのは、全国的にはどのくらいの人が知っているのだろう。

そもそもなぜ〈三宮〉という地名なのか、そしてなぜ〈神戸〉なのか。
その理由となると、神戸の人でも知らない人は案外多いかもしれない。

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神戸に〈生田神社〉という古社がある。
卑弥呼の時代の西暦201年の鎮座というから相当に古い。
地元では親しみ込めて「いくたさん」と呼ばれている。

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古来どの神社も、神社に仕える人や神社に供える米などを作る荘園を持ち、それらを「神戸(かむべ、かんべ、かのと、ごうど)」と呼んだ。
生田神社にも当然神戸があったが、読み方は「かんべ」→「こんべ」→「こうべ」と変化していく。
これが神戸市の名の由来である。

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その生田神社を囲むように〈一宮〉から〈八宮〉まで八つの社があり、これらは生田裔神八社と呼ばれる。
裔神だから、生田神社の血筋、子神という地位になる。

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このうち〈三宮神社〉のあるあたりが〈三宮〉だ。

三宮神社は、幕末の「神戸事件」の舞台となった。

神戸事件
慶応3(1867)年、三宮神社前で岡山備前藩の隊列をフランス兵が横切り、銃撃戦に発展。
神戸は諸外国に占領されたが、新政府は備前藩士1名を切腹させ解決した。

この三宮神社、現在「三宮」と呼ばれている地域より少し西にずれていて、駅でいえば三宮駅より元町駅の方が近い。

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それもそのはず、元町駅は当初三ノ宮駅という名で開業し、その後800m東にできた新駅が三ノ宮駅に、当初の三ノ宮駅は元町駅になったのだ。
町名としては三宮神社の地に「三宮町」が残るが、駅の移転とともに〈三宮〉が指す地域は東に移り、本来の三宮は今は〈元町〉と呼ばれている。

三宮三ノ宮
同じ場所に5社6線の三宮駅があるが、駅名はまちまち。
・JR:三ノ宮
・阪急、阪神:神戸三宮
・地下鉄西神山手線、ポートライナー:三宮
・地下鉄海岸線:三宮・花時計前
JRだけ〈三ノ宮〉と「ノ」が入っているのは、鉄道黎明の明治7年開業時、東京の新政府内に「さんみや」「みつみや」と読む人が多かったからと言われている。
同時開業の西宮駅も〈西ノ宮〉だったが、西宮市の請願で〈西宮〉に。
神戸市も同様に〈三宮〉への改称をJRに申し入れているが、こちらは影響する範囲が大きすぎる(=莫大な費用がかかる)として実現していない。

戦後、新しい三宮の町は急激に発展して神戸の中心地となった。
ここから〈三宮〉が対外的にも神戸を代表する地となったのだ。

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神奈川県伊勢原市にも〈神戸(ごうど)〉という地があり、ここにも〈一宮〉〈二宮〉〈三宮〉などがあるらしい。
どの神社にも神戸があったというなら、神戸市・伊勢原市にとどまらず全国各地にきっと〈神戸〉や〈三宮〉があるだろう。

歴史っておもしろい。

(2021/12/27記)

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