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幼い彼らの夢を乗せ、はるか札幌から大阪まで駆け抜けた

かつて〈トワイライトエクスプレス〉という寝台列車があった。
大阪から札幌まで1,500kmほどを22時間かけて駆け抜ける、日本一の長距離寝台特急。

トワイライトエクスプレス経路(Wikipediaより)

最上位の客車は眺望のよい〈スイート〉で…という話は今日はしない。
鉄道マニアの僕がそれを始めると、この記事が何本あっても足りないから。
それはまた別の機会に委ねるとしよう。

とはいえどんなものかご存じない方のため、これだけはお伝えしておく。
豪華設備の「走るホテル」といわれ、絶景の日本海に沈む夕陽を眺められ、チケットは毎回ほぼ発売と同時に完売した大人気列車だ。

僕はこの〈トワイライトエクスプレス〉に何度か乗ったことがある。

25年前の新婚旅行もこの〈トワイライトエクスプレス〉を使った。
当時住んでいた東京から、わざわざ大阪まで出て札幌に向かったのだ。
毎日自宅近くの駅でキャンセルが出ていないか調べてもらい、ようやく空きを押さえたのは出発の1週間ほど前、そこから大慌てで準備をした。
新婚旅行が流れてしまう可能性もあるほどのプラチナチケットだった。

***

それから10年と少しが経った頃。
鉄道グッズにあふれる家で育った子供たちは、口々に〈トワイライトエクスプレス〉に乗りたいと言うようになった。

なかなか手に入らないことを説明したが収まらない。
そんなに乗りたいならサンタさんにお願いしてみたら? となぜか言った。
サンタさんも万能ではないのに…

子供たち3人で作戦会議が開かれた。
結果、3人で共同し、その年のプレゼントに〈トワイライトエクスプレス〉のチケットをお願いすると言ってきた。
うわ…

クリスマスの朝、真っ先に起きた長男がツリーに掛けられた手紙を発見。
「三宮の旅行センターに行ってみて」と、サンタさんからだった。

当時、愛媛の山奥に住んでいたから、僕が家族を代表して行くことに。
ドキドキしながら旅行センターを訪れたら…
さすがサンタさん、ちゃんと家族分のチケットが手に入った!
山で子供たちが首を長くして待っている、すぐ帰ろう!

***

翌年の夏、北海道旅行の帰りにその時は来た。

出発を待つ〈トワイライトエクスプレス〉(札幌駅)
札幌を出てすぐワクワク車内探検を始める子供たち
当時、長男10歳、長女7歳、二男4歳
B寝台2段ベッドの下段で絵を描く長女
同じく下段で指をチュパチュパする二男
とうとう終着・大阪で旅を終え、名残惜しそうにホームで列車を見送る長男と二男

今は大学生、高校生とすっかり大きくなった3人。
幼い彼らの夢を乗せ、はるか札幌から大阪まで駆け抜けた〈トワイライトエクスプレス〉、ありがとう。

(2022/9/6記)

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