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仮そめのウチの子ら

電車で隣に人が座る気配を感じてチラ見、そして二度見。
ハタチ過ぎくらいだろうか、見事なまでのパンク系女子2人だった。

髪は虹色、足には全面タトゥー…と描写し出すとキリがないが、ヘヴィメタのバンドメンバーがステージ後にそのまま電車に乗ってきた感じ、と聞いて誰もがだいたい想像するような出で立ちの、さらに3割増しくらい。

ところが、その2人から漏れ聞こえてきた会話は、住むなら平屋がバリアフリーで耐震性も優れてていい、親戚の相続を考えたら遠方に出てしまうのはどうかと思う、などなど。
外見だけで敬遠しかけていた気持ちが一瞬で食い止められた。

しかし、向かいの座席に並ぶ、そんな会話が聞こえないだろう乗客は、やたらめったら顔をしかめてパンク系女子を眺める、いや睨む。

と突然、心の中に湧き起こる叫び声。

こんな外見やからゆうて、ウチの子らをそんな目で見んといてや!

やれやれ、いつの間に2人の保護者になったのか。

人は外見で判断してはいけないとはよく言うが、もし2人の身なりがふつうだったら会話すら耳に入ったか疑わしく、外見はその人の内面をどう捉えるかに大きく影響すると言えるだろう。

平均的な服装や言動をよしとしがちなこの国で、自分の流儀を貫く仮そめのウチの子らを応援しながら電車を降りた。

(2019/11/28記)

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