桜の約束【百合小説】

「ねぇ、桜を見に行こうよ」
ソファーで本を読む杏奈に、となりでドラマを見ていた紗智子が声をかける。
いつの間にかTVはニュースに変わって桜並木が写っていた。
「いくっ!行きたいっ!」
忙しい紗智子とゆっくり外にでかけることが嬉しくて、慌てて返事をすると読んでいた本を閉じた。
 
 
――川沿いの桜が満開になっている。川沿いに立ち並ぶお店も観光客でにぎわっていた。
「この時期によく予約とれたね」
「そりゃ、杏奈と来たかったからね~」
嬉しそうにレストランの二階の窓からピンクの海を見つめる杏奈。
そんな彼女をみて紗智子は満足そうに笑った。
 
「美味しい」とニコニコしながら食事を終えると、デザートが運ばれてきた。
珈琲を飲みながら愛しい人を見つめていた紗智子は、窓からふわりと入ってきたさくらの花びらを手に取る。
二人が出会ったのも、こんな風に桜が美しいときだったこと、彼女は覚えているだろうか。
いろんな季節を一緒に過ごしてきたけど、やっぱり春が一番好きだなぁとしみじみ思う。
 
「杏奈ちゃん。手を出して?」
首をかしげる彼女の手のひらに桜の花びらを移す。
わぁと顔をほころばす杏奈を抱きしめると頭を撫でた。
「これからも、いつも一緒にいてね」


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