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率先垂範

 士は、当に進むことを、己に求めるべきである。進むことを、人に求めてはならない。
 いわゆる、「己に進むことを求める」とは、道業学術の精(道徳による教化の事業と学問による技術の研磨の精神)である。[一方、]「人に進むことを求める」とは、富貴利達の栄(出世して、多くの富を有し、高い地位や身分を得る栄華)である。
 思うに、富貴利達の栄は天[の命]に在り、求めてはならない。[しかし、]道業学術の精は我[の志]に在り、求めてはならないことなどない。【牧民忠告 10:5 】

  昨晩、3年ぶりに再会した技能実習生2人と、秘かに3時間半に亘って、語り合った。本当に楽しくて、心から嬉しかった。3年前、実質20分ほどしか接していなかったにも拘らず、自分のことを覚え続けてくれ、信頼と尊敬してくれたのだ。

 そして、同時に、本当に悔しくて、腹立たしい気持ちで溢れかえっていた。彼ら彼女らは、私達が日常生活で必要不可欠な食品・日用品を販売するスーパーや、生産や製造する工場で勤務しており、ほとんど全ての日本人が毎日、見聞きする所ばかりだが、その待遇は、違法で不公平であり、劣悪で悲惨なものだった。

 不法な賃金の支払い、不正な隠し事や嘘の通訳、外国人差別や仕事の押し付け、低賃金の中で生産性の最大化、殴られた被害者の外国人を加害者の日本人に謝罪する要求、暴力事件やセクハラの隠蔽、有給の使用禁止、技能実習生3号や特定技能への移行を強要、休業手当の手続きをしない、コロナによる即刻解雇、警察や行政への正直な証言や告発を阻止、都合の良い虚偽や誤魔化・・・そして、実習生同士での対立や喧嘩に、万引きや失踪・・・再会したのは、2人だけだった。

 この二人も、3か月間、無職無宿で、企業や組合に見棄てられたが、「組合は技能実習生を大事にしていますよ~」の宣伝で、組合が都合よく「回収」して助けたのだ。その組合は、かつて最初に勤めた所であり、今の自分の「大事な客」(こんな言葉を書くことすら吐き気がする)の一人である。

 利益至上主義の資本主義社会と人材貿易のなかで、「邪魔者・売国奴」と誹謗中傷や非難されながらも、義理人情を貫き、奴隷廃止と博愛主義を堅持し続けた、上記の御二方に、深い敬意を示し、後ほどから、学ばせて頂く。

 そして今、偉大な儒学者の一人、張養浩の作品「三事忠告」を味読している。保身や私腹、追従や安定のための役人や官僚が蔓延る中で、悲惨な現実に、粉骨砕身して救国愛民であり続けた方だ。学ばせて頂く。


ありがとうございます。心より感謝を申し上げます。