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#43 あなたに会うまで僕は・人生を語るフランス語

stand.fmで紹介した言葉と収録内容の概要です。
音声はこちらからどうぞ。 

https://stand.fm/channels/5fafb858c646546590cea001

Youtubeでもお聞き頂けます。


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Tu es entrée, par hasard, dans une vie dont je n'étais pas fier, et de ce jour-là quelque chose a commencé de changer. 

J'ai mieux respiré, j'ai détesté moins de choses, j'ai admiré librement ce qui méritait de l'être. Avant toi, hors de toi, je n'adhérais à rien. 

Cette force, dont tu te moquais quelquefois, n'a jamais été qu'une force solitaire, une force de refus. 

Avec toi, j'ai accepté plus de choses. J'ai appris à vivre. C'est pour cela sans doute qu'il s'est toujours mêlé à mon amour une gratitude immense.

君は、偶然、誇らしく思えていなかった僕の人生にやってきた。
その日から、何かが変わり始めた。

僕はより呼吸しやすくなり、嫌いなものが減り、存在するのに相応しいものを、率直に賞賛した。
君に出会う前は、君なしの時は、何物にも執着していなかった。

この力、君は時々からかうけれど、一度もただの孤立した力ではなく、拒否の力ではなかった。

君と一緒だと、より物事を受け入れられた。生きることを学んだ。だから僕の愛には、きっと計り知れない恩寵が混ざりあっていたのだ。

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ノーベル賞作家、「異邦人」の作者であるアルベール・カミュが、スペイン人の女優マリア・カザレスに送った手紙の中の一節です。

2人は、1944年6月、ドイツ占領下にあるパリで出会います。
アルジェリア出身のカミュは、妻を故郷に残していました。

マリア・カザレスはフランコ政権の手を逃れてスペインからパリに逃れ、新しい道を切り開こうとしていました。カミュ、30才、マリア、21才。

それから1960年にカミュが自動車事故で突然亡くなるまでの15年間、2人は865通の手紙や電報を交わします。
これらの書簡が本として出版されましたが、1300ページに及ぶそうです。

数年前に新聞で目にしたこの本の書評を読んで、いつか読みたいと思い、切り取っていたのですが、先日偶然昔の手帳から出てきました。
この機会に読みたいなと思っています。

この本に興味を持ったのは、書評に書かれていた、マリア・カザレスとカミュの関係が、情念の泥沼にはまり込むことなく、揺るぎない愛情と連帯で結ばれていたこと、彼らの手紙は、単に恋文にとどまらず、当時の文芸、演劇、映画界についても書かれている点です。

ピカソ、サルトル、ジッド、プレヴェール、コクトー、マルセル・カルネ、イブ・モンタンなど戦後のフランス芸術界を彩る人達の名前が出てきます。

Galimard(ガリマール)社から出版された『Correspondance 1944-1959』 というタイトルのこの本は、2017年にフランスで出版されましたが、その時にFrance Cutlureが、カミュとカザレスの当時の映像と共に2人の関係を紹介しています。



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