復活祭(2) 真夜中のミサ
死せるキリスト行列の翌日の土曜日、今度は同じ家の住人のオーストリア人女性と、サン・ダミアーノ修道院で行われる夜中のミサに出かけることにした。
サン・ダミアーノは、アッシジの城壁の外にあり、神がフランチェスコに語りかけたところ。彼が初めてその手で石を積み、修復をした教会だ。
アッシジの東の門を出て、オリーブの木々と糸杉の1本道を下っていく。すでに夜の11時半をまわっているので、あたりは真っ暗。丘の下の町の灯りが遠くに瞬いて綺麗。ふくろうが啼き、こうもりが飛んでいる。
昼間はこんな感じ。塀に沿って歩いていくと左側に入り口がある。散歩するのにとてもいい場所。
ミサはなかなか始まらず、たくさんの人が入り口前の小さな広場や道で待っていた。修道士に促されて中庭に入っていったのは、0時を過ぎていたと思う。
回廊つきの中庭に入ると、賛美歌が書かれた紙とローソクが配られる(ヘッダーの写真)。井戸のある小さな庭の真ん中にひとりの修道士が立って、彼について厳かに賛美歌の練習。それが終わると再び外に出て、それぞれのローソクに火が灯され、礼拝堂に入ってミサが始まった。
歌や祈り、福音書の朗読などが繰り返され、ミサは延々と続いていく。
夜中のこともあって、私はなんだかボーっとしながら、輝くような顔で賛美歌を歌う修道士たちや、壁にかかっている木彫りのキリスト磔刑像を眺めていた。
まだミサが終わらないうちに礼拝堂の外に出てみると、修道院の上にぽっかりと"姉妹なる月"(*)が浮かんでいる。
800年前、フランチェスコが生きた時代と同じ情景なのかと思いながら、彼の手で積まれた石の教会を眺めていると、ふたたび賛美歌が聞こえてきた。
*サン・ダミアーノの中庭。真ん中に井戸があり、清浄な空気が流れている。
*聖フランチェスコは「被造物の讃歌」という詩の中で、「兄弟なる太陽、姉妹なる月(ブラザーサン・シスタームーン)」とうたっている。
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