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『デジデリオ ラビリンス』ルネッサンスの彫刻家の前世を辿る

森下典子さんの著書、『デジデリオ ラビリンス』(1995年初版)。
現在、知恵の森文庫から「前世への冒険 ルネッサンスの天才彫刻家を追って」というタイトルで出ている。

女優の杏さんが主演でテレビドラマ化もされているこの本は、著者の森下さんが自分の前世を追ってイタリアへ旅するノンフィクション。
出版された時だったのか、雑誌「CREA」で森下さんのイタリア旅の特集があった記憶がある。

2度文庫になっていて、その都度タイトルが変わっているのが時代を表していて面白い。
今は「前世」という言葉が前面に出ているけれど、
初版のときはそんな言葉は出せなかったのだと思う。
(TV番組の「オーラの泉」よりも前だし。あの番組で一気に「前世」という言葉が一般化したのではと個人的には感じている)

著者の森下さんが、前世が視えるという清水さんという女性の取材に行くところから話は始まる。
ルネッサンスの美しい天才彫刻家デジデリオ・ダ・セッティニャーノが自分の前世だと言われた森下さんは、疑いながらも清水さんの言う話が真実かどうか、数少ない資料を探し、ついにはイタリアとポルトガルにまで調べに行く。

私は、イタリアも歴史もスピリチュアルも大好物なので、
夢中になって読み、まわりのイタリア好きの友人たちにも勧めまくった。
やはり皆夢中になって、電車の中で読んでいた友人は途中下車して
喫茶店に入って一気読みしたという。

この本を読んだあとにまたイタリアに行くことにした私は、フィレンツェでは、本に出てくる場所を訪ねて歩くことにした。

森下さんが泊まった、駅近くの2つ星ホテル、アルベルゴ・デジレに泊まって、デジデリオが制作した彫刻がある教会を見て回ったり、
メディチ家礼拝堂の入り口で「ミケランジェロの小部屋を見せてください」というと地下への扉を開けてくれる、秘密っぽい地下空間にも行ってみた。

そうして、森下さんの旅を全てではないにせよ、ワクワクしながら辿って帰国したあと、自分のホームページに旅行記を書いた。

それからどのくらい後だったかわからないけれど、
知らない人からメールが届いた。
読み始めてびっくり。
それはフィレンツェで森下さんのガイドと通訳を務めた画家のNさんだった。

本の中ではフィレンツェに住んでいらしたが、日本に帰国されていて、
ちょうど森下さんがお家に遊びに来られた時、私の旅行記を一緒に読んでくださったらしい。
メールの詳しい内容は忘れてしまったが、
写真とともに載せていた私の旅の話を喜んで読んでくださったみたいで、本当に嬉しかった。

その後森下さんとは、当時所属していたフォトクラブ(青山のイタリア語学校の写真教室の仲間で作ったもの)の写真展に来てくださってお話したり、Nさんとはまた別の場所で会う機会を得た。

ノンフィクションなのでご本人たちが実在しているのは当たり前だけど、
本の中の登場人物が現実に現れたみたいで、ものすごく不思議な感覚だった。

そういえば、デジデリオが男の恋人ルビー(この人もいま日本人として生まれ変わっていて、文庫のあとがきにはそのことが書かれている)に贈ったというラピスラズリのベルトの存在が確認できないとあったけど、
それは今もまだわからないのだろうか。
今度フィレンツェに行った時、そのベルトも気にしながら歩いてみたい。

それにしても、森下さんとNさんとご縁があった私は、ルネッサンス期のフィレンツェで何をしていたのだろうか、と思う。
もしかして、デジデリオの工房で使いっ走りでもしていただろうか。

*イタリア、フィレンツェ、ルネッサンス、そして前世などの不思議な話が好きな方には本当にオススメの本です!

書くこと、描くこと、撮ることで表現し続けたいと思います。サポートいただけましたなら、自分を豊かにしてさらに循環させていけるよう、大切に使わせていただきます。