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No.3 "Si tu me olvidas"- あなたが私を忘れるなら : パブロ・ネルーダ

【翻訳メモ】

No.0の記事で触れた、薄い小さな詩集に載っている10編のうちの1つです。
CDでは歌手のマドンナが朗読しています(英題”If you forget me”)。
彼女の声と詩がこれ以上ないほどマッチしていて、CDの中でも白眉の作品と言えそうです。
ネルーダの”Los versos del capitán"(船長の詩) という詩集で発表されており、
男性から女性への詩として書かれていますが、今回の日本語訳ではマドンナの朗読のイメージで、女性的な語り口で訳しました。英語では、あまり違いがないですが、スペイン語や日本語では発話者の性別はどうしても文法的な約束や役割語で現れてしまいますね。
私自身の思い入れが強い詩で、この詩を作ったのと同じ時期に書かれた作品が読みたいのにどれかわからず、メキシコで偶然入った本屋で”Los versos del capitán"(船長の詩)の中にこの詩を見つけたときには、 嬉しくて飛び跳ねてしまいそうでした。
この日本語訳も、かなり気に入っています。自分で何度も読んじゃう。
ところで、スペイン語の capitán(船長) という言葉、”カピタン”の響きが可愛くて、好きです。

あなたが私を忘れるなら

パブロ・ネルーダ

ひとつだけ
知っていて欲しい

わかるでしょう、どういうことか
私の部屋の窓から水晶の月や
揺蕩(たゆた)う秋の紅い枝が見えたとき
火のそばに積もった細やかな灰や
皺だらけの薪の胴に触れたとき
すべてのものが私を あなたの元へ連れ帰す
まるですべてがそこに在るように
芳香、光、金属
それらが私を待つあなたの島々に
私を運ぶ小舟であるかのように

ねえ
もしあなたが少しずつ私を愛さなくなるなら
私も愛すのを止めるでしょう 少しずつ

もしあなたがふいに私を忘れるなら
捜さないで
私もあなたを忘れるているだろうから

もしあなたが 私の人生に吹きすさぶ風が
あまりに長く狂おしいと思うなら
そして
私が根を張った心の岸辺に
私を残していくと決めたなら

こう思って
その日
そのとき
私は両腕を上げ
この根を引き抜いて行くでしょう
他の土を捜すために

でも
執拗な甘さとともに
私があなたの運命だと感じる
そんな日やそんなときには
唇の一輪の花とともに私を捜す
そんな日には
ああ、愛する人、私のもの
私の中であの火はまた燃え上がる
私の中でなにも消えず、私はなにも忘れない
あなたの愛が私の愛の糧になる 愛する人
あなたが生きている間 その愛はあなたの腕の中にある
私の腕に抱かれたまま

Si tu me olvidas
Escrita por Pablo Neruda
Interpretada en japonpés por Keiko 
©Todos los derechos de la interpretación reservados

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