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ニコレッタ@
2022年6月17日 22:12
「ワシの誕生日は三つくらいあるんや」フミオはそう言うと、マッチでショートホープに火をつけた。「役所へ届けたのも学校に出す書類も毎回ちごうとった。だいたいそのへんやろって。まあ昔はみんなそんなもんちゃうか」まるで他人事のような口ぶりだ。周囲が「大変ですね」「かわいそうに」「えらいことなりましたな」と言う時ほど「世の中そんなもんじゃ」と、軽く流す。逆に他人にとってはどうでもいいことが、フミ
2022年6月13日 16:47
【第2話は、フミオの母孝江の回想バージョンです】孝江は4人の子を産んだ。邦男、フミオ、信子、由紀男。総じて大人しい普通の子。次男のフミオを除いて。「孝江さんとこの次男、フミオ言うた?あの子はなに考えてるのか、よお分からん子やね」「あんじょう育ててやらんとあかんよ」 孝江は耳が痛かった。言われなくても分かっている。 毎年夏休みに家族で行った和歌山の白良浜でも、フミオだけ「海はい
2022年6月24日 20:29
【3話はフミオの妻となる三枝子目線です】 親に言われるがまま、初めて見合いをしたら、1週間後には結婚が決まった。 3ヶ月後にはフミオの嫁になった。 三枝子の気持ちは重要視されなかった。 身体が弱く入退院を繰り返す父に代わって、母が懸命に働き5人の子を育てた。三枝子は長女で弟と3人の妹がいる。 母の願いはただひとつ、娘たちが成人したら順にお金持ちの家に嫁がせて、安心することだ