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ブルーベリージャム~亡き祖父母を想いながら

島根県浜田市 やさかファーム さんのブルーベリージャム。3瓶まとめ買いをしたのだが、とうとう最後の1瓶。本当は生のブルーベリーが1番おいしい。皮もうすくて、みずみずしい。ちゃんと木で熟れてから収穫された甘味がある。だから、その収穫の時期だけしか店頭においていない。

子どもの頃、私は夏休みまるまる1ヵ月を島根の祖父母の家で過ごした。しばしば春休み、冬休みにも転がりこんでいた。私の趣味・嗜好が渋い(年齢詐称疑惑)のは、そのせいだと思う。小学生の頃、相撲や時代劇をみている祖父にむかって「千代の富士がでたら呼んでね!」「水戸黄門の印籠の場面になったら呼んでね!」と言っていたのを昨日急に思い出した。そう言っているうちに、もう二度とは口にすることのできない、祖母お手製ブレンドのドクダミ茶やシソジュースが恋しくなってきた。なんにもない、だだっ広い田舎の家と庭で自由に好きなように過ごさせてくれた。

じいちゃん、ばあちゃんと呼べる人が全員いなくなって約半年がたつ。

墓じまいが近日予定されている日本海に面した墓とは別に、分骨した二人と一緒に住んでいる。じいちゃん、ばあちゃんは…ずいぶんと小さくなった。

私が小学生の頃にはこんなハイカラなものが浜田駅にあるはずもなかった。饅頭とワカメとフグのみりん干しがお決まりの商品だった。もちろん定番商品は今も変わらない。だが、祖父母が入れ替わりたちかわり、入退院を繰り替えしだした頃から見舞いの帰りにこのブルーベリーを買って帰るようになった。

4人いる孫のうち、私以外は皆関東に住んでいるし、それぞれに家庭ももっている。毎度独り身で唯一隣県にいる私が高速バスにのり、往復した。母の手伝いをしながら、なんでいつも私だけと愚痴も言ったが、初孫として世話してもらった恩義のぶんだけ動いておいて良かったと、後悔はない。血は繋がっていても、そのあたりはなかなか難しいのが世の常らしい。

祖父の葬儀を終えて納骨のために島根に行ったのが年初。そのときに買ってかえったブルーベリージャムをいまヨーグルトとバナナにかけて食べている。ずっと食欲がおちていて、身体が思うように動かないので無理してでも食べようと冷蔵庫を開けた。

この最後の1瓶を食べつくしてしまったら、私と浜田を繋ぐものがまた1つ消えてしまう。夏になれば、今年も生のブルーベリーが店頭に並ぶだろう。なんだか、そこはかとない切なさもあって文字にして綴っておくことにした。

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