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11月の読了

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ザリガニの鳴くところ

今年出会ってよかったと心から思う一冊。
人里離れた湿地で育った一人の女の子の、あまりに壮絶で濃密な人生。そこに絡み合う事件と、いつまでも彼女のそばにいた大自然と野生動物。
人間としての倫理と、大自然の中で生きる「命」としての倫理がこうも正反対で、でも紙一重なんだとこれまで考えたこともないようなテーマをひとり悶々と考えた。

これだけでひとつ記事書いたので、詳しい感想はこちらをぜひ。

傲慢と善良

5分でもあれば読み進めたくて、文庫を常に持ち歩いた。ってくらいはまった。

婚活で出会い婚約した架と真実。しかし真実が突然、姿を消した。
事件性はないとの理由から警察は動いてくれず、架は自ら彼女の地元、親、姉、友人と様々な人物と接触しながら彼女の行方を探す。
真実が消えたのはただのマリッジブルーではないことは自明で、この結果に至るまでの出来事、気持ち、周囲とのきまずい関係性、静かなマウンティング、いろんなものがとてもリアルでメンタルぐっさぐさ刺されました。

「あの子と結婚したい気持ち、今何パーセント?」
「ーーー七十パーセントくらいかな」

「今私、パーセントで聞いたけど、それはそのまま、架が真実ちゃんにつけた点数そのものだよ。架にとって、あの子は七十点の彼女だって、そう言ったのと同じだよ」

真実が架の前に婚活で出会った金居を「無理」と突き放した気持ちは私にもわかる。私だって「ジーンズのポケットからチェーンが出てるような感じの財布」を持ち、「信じられないくらいダサい」男性は結婚相手として考えられないなと思ってしまう。一生一緒にいるなら価値観は近い人がいい。こう思うことすら、傲慢なんだろうか。
じゃあ、結婚てなんだろう。一番好きな人とするのが結婚ではないのか。

どうしてみんなは、自分の一番好きな人の好きな人になれるんだろう。

私自身こじらせにこじらせている側の人間なので、こんなことを考えながらさらにこじらせるのでした。笑

たったひとつ、わかることは。
私がそんなふうに、見下すように「相手として見られない」と思ったその誰もが、私なんかと結婚しなくて、おそらく正解だったということだ。
彼らにちゃんと向き合えた人と結婚できて、きっと幸せだろうということだ。

「前に進めるような、そんな日が、私にもちゃんとくるのかな」
架とまだ出会う前。婚活で人に出会うたび、相手を結婚相手として見られるかどうか、疲れながら会っていた頃に、何度も感じていた気持ちだった。

雪下まゆさんの装画の本はジャケ買いしがち。読み終わってから改めて装画を見直すと、登場人物の外見のイメージのみならず内面までにじみ出てるな…といつも思う。

書く習慣

ずっと読みたかった「書く習慣」。
文章を書くことについての「ノウハウ」本ではなく、「構えずに書く」「とにかく世に出す」ことの楽しさを再確認させてくれるようなライトなメンタルセットができた本でした。

あなたの「日常」は他人には「非日常」かも。平凡な日常も、誰かにとっては面白くてタメになって、不思議な日常になる。自分の日常を「ありふれた日常」だと勝手に決めつけているのは、他ならぬ自分自身なのです。

自分の日常をなんでもないと思うのではなく、他人軸から俯瞰してみて「できごと」にすると文章を書くことはもっと楽になるなという学び。

私の日常は病院で働いていること、防護服を着ながら発熱者の撮影をすること、何十人というがん患者さんと接すること。きっとこれは他人にとっては超非日常。
でも毎日病院と自宅を往復し、同職種の人とばかり過ごしていると、このことを忘れてしまう。

なにもしなかった日などないし、自分の日常は他人の非日常。
3食自炊する私にとって料理は日常だけど、そうでない人にとっては非日常。
実家ぐらしからそのまま結婚し、家族がいて、子供がいる人にとっては私の自由気ままな一人暮らし生活はきっと非日常。

こう考えると毎日はネタにあふれているし、「これ書いても意味ないな」と思うものはない気がしてくる。自分の日常を発信することの価値を、自分が決めるものではないと思えた。

その文章の価値を決めるのは、自分ではなく「読んだ人」です。

私は友人の仕事の話を聞くのがすごく好きで、改めて考えてみると自分にとっての非日常の、知らない世界を教えてくれるからだなと気づいた。

広告代理店に勤める友人と食事にいったとき、「自分個人が気に入ったものばかりじゃないだろうし、他社の製品のいいところをたくさん見つけるの大変なときない?」と聞いて、「育毛剤の担当になったときは、確かに気持ち作るの大変だったなあ(笑)」と返ってきたのは笑った。

これは彼女にとっては日常。でも私にとっては「東京の広告代理店で働く」なんて非日常極まりなくて、話の一つひとつが面白くて仕方がない。そういうこと。


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