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Netflix映画, "The Boys in the Band"にどハマりした人の個人的考察①

1968年のNY。誕生日パーティーの最中にやって来た意外な人物と、酔って始めたゲームのせいで、7人のゲイ仲間たちが、ずっと隠してきた秘密と感情をさらけ出す。—Netflixより引用(https://www.netflix.com/jp/title/81000365)

設定だけでも既に面白そうな雰囲気を醸し出しているこの映画。元々は、マート・クロウリー原作で1968年にブロードウェイで初演されました。2020年に映画化されたのがこのNetflix版です。日本でも安田顕さん主演の舞台がありました。

まずキャラクターが全員濃い。一人一人結構しっかりした記事が書けるくらい設定があります。そして序盤の軽快で皮肉っぽくて笑える掛け合いと60年代の良き雰囲気、そこからの酔って始めた「ゲーム」のせいで、雰囲気どシリアスになるというこの落差。

単純に序盤の会話がテンポよく面白いしキャラの魅力に引き込まれつつ笑いながら見ていくと後半で思わず口を押さえることになります。

本編を見ないと何がなんだか分からないうえにネタバレでしかないので、まだ映画や舞台を見ていない方はこの記事に戻って来なくていいのでぜひ作品を見てみてください。

※以下ネタバレ含む記事ですので注意してください。



目次
1. キャラクター紹介と関係性
2. 映画、音楽、キャラクターの考察(前半)
※基本映画の流れに沿って考察していきます。でもファンの推しポイントをただただ吐いてる部分もありますので解釈違いだったらすみません。


1. キャラクター紹介

9人全員、同性愛者であることをカミングアウトしている俳優陣が演じています。キャラクター紹介と言いつつ映画全体を踏まえての考察なので、既にかなり内容に入っていますしネタバレです。

①マイケル

本編主人公。失業手当で豪遊している。教会に通っている。翌日の罪悪感と毎日酒浸りという負のサイクルに耐えられず禁酒・禁煙中だったが、あまりにもひどいパーティーの現状に耐えられずグラス1杯の酒を飲みほしてからは兵器と化す。

本当に冗談では済まないくらいの差別的発言やとげのある言葉を吐くので目を瞑りたくなるシーンもありますが、このとげとげしさと痛々しさのおかげで核心に迫った映画になります。軽快・皮肉そのものといった面がまず見えるのに、底に何かしらものすごい重いものがあるなと最初から感じさせてくれます。

ジム・パーソンズが演じてますが、とにかく演技がうまいのでこれだけで見る価値あります。軽快さを見せながら不安定さもずっとあるのがすごいし表情の作り方が神業の域。手の動きとか声の上擦り方とかがクセになります。

②ドナルド

マイケルの恋人。とにかく顔が良い。こちらも世渡り上手な感じのユーモアがあるタイプですし、アランにお酒をついであげたり重い場の雰囲気を読み取ったりと、この劇の中ではかなりまともで気を使えるタイプに見えますが、鬱を患っています。まあそうとは思えないくらい元気に皮肉言いますが。

マイケルが禁酒中で自制心ありの状態だったのに酒と不安定さゆえに後半暴走するのに対し、ドナルドは最初鬱や心に根深いものがあるのを見せといて後半に行くにつれまともさが目立ち、マイケルを慰める役割に回るという対照的な構図になっています。

ハロルドとは不仲ですがお互いバチバチしつつ表面上はうまくやってる感じです。それがなぜなのかというと、ハロルドとマイケルが似たもの同士で、ドナルドはその正反対にいるという立ち場なのだからだと思います。ちなみに昔偶然ラリーと性的な関係になったことがありますが、一見プレイボーイなラリーも実はまともなのでそこに惹かれ合った部分はあるかもしれません。

③ハロルド

間違いなく裏主人公。動き、立ち振る舞い、全て「格が違う」感じが出てる強すぎるキャラ。言動全部が名言。登場して1分強喋らないくせに、口を開けば場を凍り付かせ場の主導権を握っていたマイケルも牽制するという怖すぎるお人。ユーモアも色気もある分、余計に「全てを知っている、見透かしてる感」が出ていて怖いです。

しかしこの人もユダヤ人かつ同性愛者というマイノリティーであり、見た目を気にしすぎて病的なほど準備をして遅刻し、自殺用の睡眠薬を溜め込み、ハッパをやらないと外に出られないという多くの不安定要素があります。圧倒的自信と人生への確信がありそうな立ち振る舞いなのに、その底にはこういう要素があるというのが面白い。

ただ、先ほど書いたマイケルとドナルドの後半につれての変化とは違い、ハロルドに関しては最後までほぼ綻びを見せず盤石な砦として機能しています。演じているザカリー・クイントの声色がマ~ジで天才でしかない。声で殺されます。

④エモリー

確実にこの映画のファンを増やした要因。(あえてこの表現を使いますが気分を害したらすみません、)いわゆるオカマという感じで、お尻を振ってモンローウォークしたり扇子をひらひらさせたりと優雅です。この人からも口からマシンガン攻撃のごとくユーモアと下ネタが飛び出ててくるので前半わちゃわちゃ部分の主役と言っても過言ではないです。

声色とかキャラのせいでなぜか品があるように見えるのが好き(吹き替えだとちょっと雰囲気が違いますが)。

多分スパニッシュかつ60年代のゲイ差別がある中で露骨に同性愛者っぽいので確実に生きにくさを抱えているんだろうなというのは予測できます。それでも自分を強く持てているのは、バーナードの我慢あってでもあり、しかしバーナードに責められてからすぐ謝ったりアランを許したりという面のおかげでもあり、ということだと思います。

⑤バーナード

図書店員で、知性と品格があり自分に満足している(実際Netflixの番外編インタビューでもそう言及されていました)という雰囲気。半袖タートルネックが似合いすぎてる。電車の中で良さげな男性を見つけて品定めしていたところご婦人から怪訝な目で見られて気まずそうだったので、体裁やプライドを割と気にする人なのかもしれない。

という性格なので、会わなくなって何年も経つのに電話番号や現在奥さんと離婚していることまで知っているほど好きな相手、その人に先陣切って電話をかけたのは多少の望みがあったからなのだろうと推測できます。そこで痛手を負い自分の知性や品格も否定された気持ちになったのは相当つらかったと思います。その後の「尊厳を失う」という言葉が重いです。

黒人かつ同性愛者で、同じく2つの点で差別を受けやすいであろうエモリーと仲が良いですが、傷ついた後に漏らした「エモリーがバーナードを下に見ることで自分自身を守っているからこそ関係が成り立っている」という旨の発言は普段なら絶対に見せないであろう弱い部分だったと思います。

⑥ラリー

いわゆるプレイボーイなタイプでハンクとは恋人。最初から男を引っかけてハンクと険悪な雰囲気になるしドナルドとも性的な関係になったことあるみたいなそぶりを見せるので、ついこっちが悪者かという先入観を持ってしまいがち。この人こそ世渡り上手というか会話の受け答えが軽妙な感じです。

でも映画が進むにつれ、人の言うことに一番笑うのは彼だし、ハンクを取られて露骨にアランに嫉妬してるし、重苦しい雰囲気を感じ取って一言入れたり傷ついたバーナードの手を心配そうに取ったりするのも彼だし、なんか以外とまともなのか?と思ってたら例のゲームではハンクに次いで一番愛を見せた男だったのでなんとも言えない気持ちになりました。

プレイボーイというのは事実ですが、どうせ人はみな浮気するんだから最初からそれを隠したくない、ハンクには愛する人だからこそ誠実でありたいという彼なりのポリシーゆえです。長くなるので電話シーンについては映画の考察の中で語ろうと思いますが、世渡り上手なくせにハンクに対しては不器用で素直というか素直になれないというか、とにかくいじらしいです。

演じているアンドリュー・ラネルズは歌が激ウマなんですが、普通に話しているときも声の使い方がめちゃくちゃうまくて何度でも聞きたくなります。アンドリュー・ラネルズのファンなのでラリーの話が多くなってしまうかもしれません、お許しください。

ちなみに現在ハンク役のタック・ワトキンスと実生活でも付き合っておりタックには代理母で生んだ二人の子どもがいるので、かなり映画と重なる部分があります。

⑦ハンク

数学教師でスーツ、つまりきっちりしています。胸元がばっと開いてるラリーとは見た目から正反対です。アランからすると唯一の話し相手で、異性愛者っぽいし一番社会人っぽい受け答えができる人です。他のキャラが濃すぎるので逆に馴染めてないというか浮いてる感じすらするので、我々鑑賞者も最初は「なんでこんな真面目な人がプレイボーイと付き合ってるんだ?」となります。

ですが後半に進むにつれ一番印象が変わるのは確実にこの人ですね。まず、一番そんなことしないだろうと思っているので電話のシーンでの愛の告白は衝撃を受けると思います。それに、ハンクは奥さんと子どもがいますがそれには違和感があり、自分は同性愛者の方に比重が傾きつつあるということに関して死ぬほど悩んだ末ラリーを選び妻子を捨てることになります。もちろんセクシュアリティの問題があるので普通の不倫とは性質が違うでしょうが、実は一番無茶してるのは彼なのではないでしょうか。

ラリーの何がハンクをそこまで駆り立てたのか、二人は正反対なのでそれが想像できないところがこの二人の面白いところだと思います。ただ逆に言えることとしては、今まで相手をとっかえひっかえしていたラリーがなぜハンクを固定して付き合う相手、他の人と区別して一番大事な相手として見出したのかも気になります。

⑧カウボーイ

ハロルドへの誕生日プレゼントとしてエモリーが買った男娼。顔と身体は魅力的なのに会話が成り立たないレベルの知性、というか単に空気が読めないしヘラヘラしてるのでみんなから散々怒られるし呆れられる。序盤に劇場?の前でアイスクリーム舐めてるんですがよく見ると男性しか目で追ってないのでわかりやすいです。

雰囲気のリフレッシュ剤としては効いていますがあまりにも場にそぐわないのでなんで登場させたんだ?と思いました。が、最後にハロルドに床上手なのか?と聞かれて返した台詞がま~あ切なくて見方が180度変わりますね。

日本語字幕だと「愛情は込めるよ」なので良さがわからないんですが、日本語吹き替えだと「相手を好きなふりはする、買われてるってことを忘れるために」、英語だと「愛情は示すよ、自分はなんて尻軽なんだって思いたくないから」というニュアンスなんですよね。これはマイケルのモデルでもある監督が実際に言われた台詞らしくて、ますますつらさが増します。

⑨アラン

この人も裏主人公と言えるでしょう。マイケル曰く「飛行機が落ちても動じないタイプ」なのに泣きながらマイケルに電話してきます。しかもパーティーには行かないと言ったのに突然現れたり、明日ランチに行くと約束したのに明日には帰ると言ったりとにかく劇中では言動が混乱してます。

唯一同性愛者というのを認めていませんが、ハンクに惚れ込んでいるようなそぶりを見せたり、露骨に同性愛者っぽい仕草をするエモリーにおかしいくらい嫌悪感を抱いていたり、同性愛者なのか異性愛者なのか微妙な立ち位置です。実際どちらとも公言はされていません。迷いに迷ってちょうどライン上に立っているような人物なのかもしれません。

実際奥さんのところから出てきてマイケルの家に来たからには何かしら自分の同性愛者的な部分を認めてしまいたかったからに違いありません。でも子どものことがすごく好きみたいですし最後は奥さんを選んだので異性愛者であることを選んだ(もしくは家族を選んだ)のかもしれません。最後奥さんに「なるべく早く帰る」と言っておきながらバーで物思いにふけってお酒を飲んでいるのも、夜なので交通手段が無かったとも取れるし、妻の待つ家に帰る前に何か悩んでいるとも取れます。


2. 映画、音楽、キャラクターの考察

まず冒頭、ハロルドがレコードを流し、"Hold On! I'm Comin' (待ってて!今行く)"という曲が流れます。歌詞とその時画面に映るキャラクターがかなり呼応してるので全部載せるべきなんですが、特に重なっている部分だけ歌詞のニュアンス和訳と合わせて見ていきます。

「悲しくなったことはない?」:マイケル、アラン
→誰も愛したことがないマイケル、愛の対象が自分の中で定かではないアランは寂しさを感じているかもしれません。

「つらいときは頼って、その日が来て君が弱っているときは トラブルの川に溺れているなら僕はそこから上がらなきゃ 」:ドナルド、ハンク
→ドナルドはマイケルを慰めるために自分の鬱のつらさを一旦封印しているかもしれませんし、ハンクはラリーにあくまで合わせてあげようとしていて自分のことは二の次感あるので合ってるかもしません。

「満足したいなら僕に手を伸ばして いい反応が欲しいなら僕の名前を呼ぶだけでいい」:ラリー
→丁度男を引っかけてるシーンなのでプレイボーイ的な側面が歌詞と合っていますが、それよりもこのあとダンスシーンで出てくる”Heat Weave”という曲でラリーがアップで移されるときにも「名前を呼ぶ」というフレーズが出てくるのでそこも意図的に重ねたのかもしれません。

「待ってて!今行く」:色んな人物が映されますが一番最後の部分のマイケルは、そのすぐ後にアランからの電話を取ろうとして「今行く!」と言っているのでここの重ね合わせは意図的だと思います。


その後はみんなそれぞれマイケルの家に集まります。それぞれ掛け合いが面白いのでぜひ映画を見てほしいです。

マイケルとドナルドの掛け合いは恋人と思えないような皮肉り合いなので恋人には思えないですが(笑)二人とも生き生きしてて面白いです。でもドナルドの身体にちょっとドキッとしてるようなマイケルの表情は絶妙ですし、ドナルドがシャワーを浴びながら「母は僕を失敗したときに特に可愛がってくれたから、僕には成功したくないっていう衝動がある」っていうのをさらっと告白するのは印象的です。

予告編に出ているシーンでもありますが、マイケルの「色んなところを旅したけど幸せだと思えるのは飛行機の中だけだったよ」という台詞と、その後に続く台詞はこの映画の中でもかなり推せる場面です。

"Run, charge. Run, buy, borrow, make, spend. Run, squander, beg. Run, run, run. Waste, waste...waste.  And why?"

話の流れ上、失業手当で豪遊して借金取りに追われてもなんにもならないというのを言っているのですが、単に物質的な意味だけではなくて精神的な虚しさも匂わせているのが「酒浸りの生活と馬鹿馬鹿しいサイクル、このメリーゴーランドに乗り続けてきたけどそろそろ降りないと遠心力で死ぬと思ったの」という後のマイケルの台詞からもわかります。こういうのって全ての依存症に言えるのではないでしょうか。

冗談ばかり言っていたマイケルがちょっと暗い部分を見せドナルドも心配するような表情を見せますが、マイケルはまた冗談めかして「終わり(フランス語)。拍手は?」、「自分を憐れむ以上に最高なことってないよね」、「私、安っぽい感傷に浸るのが大好きだから」と言ってごまかします。

ここらへんでは不安定で攻撃的な部分は隠して飄々としているし、酒に依存気味の生活からやっと抜け出して禁酒中なんだ、とわかります。その分、後半お酒のせいで本性が出てきたときに二重の意味で「やっちゃったな」感が強くなります。

一方、ハンクとラリーの乗っているタクシーに乗り込むエモリー。ここらへんのエモリーの声色はマジで貴婦人です。ラリーとの掛け合いがあるのですが
”(エモリー)Hi, doll face."
"(ラリー)You look cute."
"(エモリー)Always."
ってのがテンポ良すぎて笑えます。

ちなみにハンクとラリーはもう険悪なのでエモリーの「二人の間に割り込んで座るなんて嫌よ」という言葉に対しラリーが「別に俺は構わないけど」と返しますが、エモリーが喧嘩に勘づいて「楽しくなりそうね」と皮肉ります。良いメンタルしてます。

バーナードが合流するあたりではエモリーがさらに絶好調になっていきます(笑)マイケルに「(同性愛者じゃない)アランが来るから女っぽく振舞うのをやめて」と言われた直後に「メアリーお姉さまのためなら♡」って言いながらエモリーがデカい扇子広げ始めたのは最高でした。ちなみにキャラクター同士で時々MaryとかLauraとか女性の名前で言い合ってますが、同性愛者同士の間でこう言い合うのは当時だと普通のことだったらしいです。

あと日本語訳だとわからないんですが、”I'll be your topless cocktail waitress” とか”Connie casserole. No trouble at all. Oh, Mary, don't ask.”とかエモリーはよく言葉遊びをしています。この映画を翻訳するの本当に大変だっただろうなと思います… 

ちなみにマイケルが用意した蟹をみんな嫌がって食べないんですが(海外ではあんまり好まれないらしいです)、要らないと言いつつドナルドだけ食べてたのは何か意味ありげだと思います。やっぱり贈り物ってのは一方通行では成り立たないコミュニケーションなので、マイケルの理解者としてはドナルドくらいしか可能性が開けてないのを示しているのかな~と。ハロルドが一番の理解者だとは思うのですが、ここではハロルドはまだ登場してません。

そしてさっき言ってた"Heat Wave"という曲に合わせてマイケル、エモリー、バーナード、ラリーがダンスをし、ドナルドが近くで笑いながらそれを見ているシーンになります。歌詞も可愛いしみんなノリノリなので否応なく気持ちが昂るシーンです。エモリーが扇子をフル活用するのでぜひご覧ください(笑)

ラリーは曲に合わせてダンスしながらドナルドの名前を呼び、踊ろうと誘います。ここで歌詞が「彼が名前を呼べばいつでも」となり、冒頭のシーンと重なるんですね。このシーンのアンドリュー・ラネルズ、イケイケです。

一方、来ないと言っていたはずのアランが突然マイケルの家にやってきて、ハンクが出迎えます。さっきまで流れていたイケイケの音楽をハンクが止めて映画は急に無音になるし、マイケルはアランの前ではカミングアウトする前のお堅い自分でいたかったのに楽しく踊ってるとこ見られて動揺してるしで、場面が一気に凍り付きます。アランとマイケルは二人とも自分の言い訳をしてるので完全に会話が噛み合ってなくて最高に気まずい雰囲気です。

常識人っぽいハンクがなんとかアランに対応してあげて場が持ちますが、二人が仲良さげに話してるのでラリーはイライラし始めます。というのも、アランはかなり初手でハンクに「アスリートか何かかと思った、スポーツをしているように見えたから」と言ったりでちょっと変です(ラリーとエモリーは顔を見合わせて怪訝そうな顔をしているし、バーナードは何やら察したような顔をしてます)。多分、普通会ってすぐ恋愛対象ではない同性の身体をじろじろ見るか?っている違和感による勘づきだったんだと思います。

エモリーは女性っぽい仕草を隠そうとしないのでアランが露骨に嫌悪感を示してます。60年代のアメリカでは同性愛者に対して根深い差別があったのと、自分自身が同性愛に対して悩んでいる真っ最中なので気になるというか、でも目を逸らせないというかで気に障ったのでしょう。

ラリーは以前関係を持っていたドナルドに話しかけてハンクを挑発し、ハンクはそれ見て「何してるんだ」みたいな顔をします。一方ドナルドとイチャイチャしているラリーにイラっとしたマイケルは、アランの「ハンク、君は結婚してるんだね」の言葉に対して「ああ、ハンクは決まった相手がいる。ドナルド、氷持って来て」って2人の方を向いて言うしで雲行きが怪しい感じになってきます。

アランとハンクの会話が盛り上がり、マイケルが昔アランの奥さんとデートしてたという話になったときはラリーが飾っていた風船を割ります。嫉妬もあると思いますが、たぶんマイケルが嫌がる会話の内容だったので会話の流れをぶった切ったんだと思います。こういうとこ見るとまともだなあと思うわけです。アランがマイケルの嫌がる「ミッキー」のあだ名呼びで話しかけていたのもマイケルの神経を逆なでしてます(マイケルの返事が露骨に遅れてるので)。

そこで会話を切り替えて「町に住んでるのかい?」とアランがハンクに聞くと、その返答を横取りしてラリーが「うち?そうですよ」と答えます。もうこれはあからさまな嫉妬です。何も知らないアランに、自分はハンクと一緒に住んでいることをアピールしつつハンクとの会話をやめさせたってことですよね。

ハンクは「離婚調停中で、ラリーとは同居してるんだ」と、付き合っていることは名言せず説明します。するとアランは"I'm very sorry"と言って、そのすぐ後に「いやそういう意味じゃなくて…」と弁解します。これはおそらくsorryというのが「(離婚に対しての)残念だ、気の毒だ」と「(ラリーと同居してるなんて)がっかりした、そうでなければいいのに」のダブルミーニングに聞こえてしまい、後者になると都合が悪いので弁解したということですかね。アランはなんだか動揺してしどろもどろになって急に席を立ったりしてさらに怪しいです(アランが席を立って二人になったときにラリーとハンクがお互いの目を見ます。二人ともお互いにイライラしてるので何か言いたげです)。

ここでエモリーの振舞いにしびれを切らしたマイケルがアランを引き離すために二階に連れていこうとする際、アランがハンクに「悪いね、すぐ戻るから」と言うとラリーが「彼(ハンク)ならここでまだ待ってるよ」と、ハンクに近づきすぎだというのを当てこすりで言います。アランもなんかただならぬ雰囲気を感じ取りますがマイケルに連れられて二階へ。

その後のハンクとラリーの会話です。

"(Hank) What was that supposed to mean?(今のどういう意味だ?)" 
"(Larry) What was what supposed to mean(今のって何のことだ)?"
"(Hank) You know.(わかってるだろ)"
"(Larry) Do you know another beer?(ビールのおかわりは?)"
"(Hank) No. — You're jealous, aren't you?(要らない。— 嫉妬したんだろ?)"
"(Larry) I'm Larry. YOU are jealous.(俺はラリーだぞ、嫉妬するのはお前の方だ)"

険悪だけど駆け引きめいてます。1文目と2文目オシャレじゃないですか?ネイティブの方からすれば言葉遊び程度かもしれませんが、純ジャパからすると一瞬で1語変えてうまく返したラリー頭回るなってなりました。1文目と2文目は1秒も空いてないですからね。「嫉妬するのはお前の方だ」と言い返した後、その証拠だと言わんばかりにドナルドにまた話しかけにいくラリー。当てつけですね。

一方アランとマイケルは二階で二人っきりで話していますが、アランはハンクのことを魅力的だと言い、なぜか名前すら覚えていないラリーの職業を聞いてきたりします。それに対してはマイケルもなんか怪訝そうですが、アランがドナルドのことを気に入ったと言った挙句、エモリーのことをひどくけなし始め、その上自分の体裁だけは保とうとしたのでマイケルは機嫌を悪くします。いや当然です。ここで既にマイケルのストレス値が上がってきています。

マイケルが2階にいるアランを置いて下に降りてくると、例のハロルドへのプレゼントであるカウボーイがやって来ます。カウボーイは死ぬほど音痴なバースデーソングを歌った後ハロルドと間違えてプレゼントのキスをマイケルにしてしまうんですが、マイケルは焦ってるし、ドナルドは思わず目を背けるしラリーは爆笑してるしでカオスです。

場の重い空気が一旦リフレッシュされたところでアランが二階から降りてきて帰ろうとするわけですが、ここでまぁ目も当てられないような事件が起きて、混乱状態の中いよいよ裏ボスとも言えるハロルド登場ということになってきます。


長くなりすぎたのでここまでにします。次回は来週に書けたら書きます。

※語りたかったのでかなり映画の内容を言ってしまっていますが、何か不都合あればコメントでご報告ください。



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