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退職します③-ケアマネジャー-

キジキジ

2016年4月に新たなケアマネとしてやってきた男性は身長高めでパーマに金髪、そして補聴器を付けていました。
通称キジキジ。彼は身体障害者であり、歩行も少しふらついていました。出会って早々に事務所で転倒してましたし。
正直初めて会った時、その派手な見た目と障害があるという情報から色んな意味で「大丈夫かよ…」と思ってました。

そんな自分の心配は全くの杞憂でした。
彼はケアマネとして雇われていましたが、本業でコンサル業もやっており、所謂【仕組み作り】が上手い。
ぐちゃぐちゃになっていた現場を組み直し、業務を見える化。業務の中で何が必要で、不用かを洗い出していきました。

現場を変える時って、職員から反発される事って多いと思います。今のやり方に慣れた人達って中々変化を受け入れたがらない。面倒ですもんね。

けどキジキジは、本人の語り口調が穏やかってのもありますが、強引に変革せずに現場の意見と上層部の意見を聞きつつ、バランスを取りつつ現場を変えていく。だから文句や反発が少なかったですね。

元々は区役所でケースワーカーとして働いていたキジキジ。身体障害者になったのは、20代の頃に事故で。
その後、理学療法士の資格をとり、自身で事業所を立ち上げて運営する等、現場と運営の経験があるという中々珍しいケアマネでしたね。

そんな彼からある日「ケアマネ受けてみなよ」と言われました。

ケアマネ受けます

正直ケアマネになりたいと思った事はあまり無く、自分は介護福祉士として現場で働き続けようと思っていました。事務仕事は性に合わないと思ってましたし。

とはいえ上司から「受けてみなよ」と言われ、嫌ですと断る理由も特に無く2016年10月に受験する事になりました。

8月位から勉強を始めたんですが、まぁ中々覚える範囲が広くて毎日過去問と教科書をひたすら暗記してました。通勤時間や夜勤中も暗記・暗記・暗記…そして暗記。久々に勉強しましたね(介護福祉士はそんなに勉強しなくても受かりましたね)

その甲斐あって無事一発合格。喜んだのも束の間、登録の研修が3ヶ月あると聞いて青ざめました。休みの日に研修行くという地獄の日々が始まりました。

毎回グループワークやってた記憶しかないですね。あと喫煙所が外にあって、雨が降った日は傘をさして吸ってた。…研修内容の記憶ねぇわ(笑)
そんな感じで無事研修も終わり、2017年4月。
正式にケアマネジャーの資格を取りました。やったぜ!

バランス

記念として取り、別にケアマネとして働くつもりなど更々無かった自分。
そんな自分に「じゃあケアマネとして働いてね〜」とキジキジより命令が下りました。
…はぁ?俺、現場やりながらケアマネやるの?

そんなノリで事業所のケアマネとなりました。
キジキジは自分の教育係となりまして。

とはいえ彼からはケアマネジャーの業務の説明は特に無く。調べればわかる事は自分で調べてねってスタンス。
けど困難なケースの時は一緒に動いてアドバイスをくれましたね。

とある女性の利用者さんが経済的虐待+介護放棄を受けているケースで自分がどうしていいかわからない時には、何をして何を準備するのかの手順や方法を丁寧に教えてくれましたし。

その利用者さんをどう支援するかを関係者と話し合う【地域ケア会議】を開催することになりました。会議なんて何話せば良いかわからないし緊張しまくりな自分。
そんなテンパってる自分にキジキジは
「今、彼女の気持ちを代弁出来るのは、いつも一緒に過ごしている君しかいないよ。色々言ってくる人達もいるだろうけど、彼女の気持ちは歪めないで伝えないとね。」
と気合いを入れてくれました。

ケアマネなんてプラン作ってハンコ押してもらう事務仕事みたいなイメージが強かった自分。
介護福祉士みたいに直接関わることは少ないけど、利用者に寄り添い、一緒に戦うことが出来る職業なのかなぁ〜と思いましたね。
まぁ自分は介護職も兼務でしたから直接関わりまくってましたがね毎日(笑)

事業所の売り上げの管理方法や現場の仕組み作りが得意なキジキジですが、その一方で利用者の尊厳や権利を何よりも大事にする人でしたね。

売り上げを含む運営に関しても彼からレクチャーされました。売り上げ出さなきゃ上層部は意見は聞かない。逆を言えば売り上げという結果さえ出せばそれなりに意見を通す事が出来る。

「人が足りない」なんて介護施設で働いてる人は毎日言ってるでしょうし実感してるでしょうがね。どの部分にどれだけ足りないのか・人が居れば回るのか・増やした分どれだけ利用者を増やしたりサービス内容を変更出来るのか…etc。
問題点や課題を具体的に形にする。じゃなきゃ運営側から「数字上では人数足りてんじゃん」て言われて終わっちゃいますし。
そんな運営の基本的なことから学び始めました。介護しか経験の無い自分には、そんな学びも楽しくて。

運営だけ・利用者のことだけ。片方に全力を注ぐのでは無くバランスを取る。そんな事をキジキジから教わりました。

そんな彼は2020年3月に退職。ここから職場内に上司と呼べる存在がいない時代に突入していきます。

長くなったので次回に。また逢いましょう。

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