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ひとり旅の醍醐味とは

2019年は、どこの国にも行かなかった。
2013年から毎年どこかの国に旅していたのに、2019年に限ってはそれどころではなかったからだ。2019はわたしの人生の中でも、かなり大きな変化の年だった。

2013年、ようやく育児にひと段落がつき、ひとり旅を復活させた。行き先は、パリとバルセロナ。その後の旅は何年だったか覚えていない。台湾に3回、香港に3回、親子でセブにド短期英語留学。ベトナム、モロッコ、マウイ島。トランジットでフランスとスペインとタイ。比較的長かった滞在は、2018年のスリランカ。アーユルヴェーダを体験しに行ったんだった。

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わたしは数年前からずっと、世界一周を目論んでいる。
その時に考えていたルートは、メキシコシティーからキューバに入り、アメリカ経由でヨーロッパに入るというもの。適当にヨーロッパを周遊した後は、トルコかイランあたりにでも行って、東南アジアでまったりして帰ってくるというプランを想像していた。

この旅程を終始単独でやることをイメージしていたのだが、別に旅の連れがいてもいいのでは?と最近になって思えるようになってきた。今まで海外と言えば、そのほとんどが一人だった。それがわたしにとってのスタンダードだったからだ。誰かと行くという考え自体が皆無だったため、そういうアイデアすら思い浮かばなかったとも言える。

今までひとりで旅をしてきた経験で実感していることは、女一人だと何かにつけて面倒が多いということだ。寂しいとか心細いとか、そういうメンタルの話ではない。例えば声をかけてくる面倒な男性たちを避けるのに、いちいち手間がかかる。夜一人で出歩きにくい。そしてこれが一番の面倒かもしれない、どうやってもナメられやすい。ボッタくられやすい。(この手の経験なら山ほどある)
そうでなくとも、荷物で終始しんどい想いをするのが女一人旅の苦難だ。飛行機のダッシュボードに荷物を出し入れする際ですら、わたしには人の手がいる。小柄で非力なわたしは、今までどれだけの見知らぬ人にそれを助けてもらったことか。


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それでもわたしがひとり旅を好むのはまず第一に、道中で起こるすべての事柄に対する決定権が自分にあるという点なのだと思う。置かれている境遇的に、自分で決めなきゃ何も進まないのだ。どの街にいつ移動して、どういうルートで何を使って行くか?どの宿に泊まるか?どこで食事を取るか?何を食べるか?もっと言えば、ただ歩いていて次にどの道に行くかということですら、自分で決めなきゃならないのだ。
それがもう、楽しくてたまらない。もちろん怖いことだって起きるし、不安になることだって多々ある。自分の判断ミスで損をしたり、痛い目を見たことだって数えきれない。
だけども自分で全てを決めるということは、それくらい病みつきになることなのだ。多少のトラブルや不安をも上回る快感、モルヒネの如し。それが常に脳に行き渡る経験。これぞひとり旅だ。


第二の理由は、研ぎ澄まされる野生的な勘を味わえること。これに尽きる。
見知らぬ外国の街に一人で立たされると、確実なデータだけではない、自分だけの勘が必要とされる場面に多々遭遇する。例えば、どこかの街で大きな通りを外れて一本奥の道に入ったとする。それだけで、感じるムードが一変する。こういうことは旅の日常茶飯事だ。その際、この通りはヤバイ、早くこの道を出なくては。そういう指示がどこからともなくやってくる。これが、野性的な勘のいい例だ。もちろん、対他人に対してもこれは発動する。この人と関わってはいけない、逃げろ。これもパッと感じる瞬発的な勘の例。他にも、この食べ物はやめとけというのもあるし、あの車には乗るな、というのもある。とにかく、理屈じゃない指示がシュッと降りてくるのだ。このような指示が極めて明確に降りてくるのは、いつも決まって旅をしている時だ。これを肌でクリアーに感じ取ることのできる面白さ。これが第二の理由。


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普通に人生を生きていて何もかもを自分で決められるシーンというのは、そう多くはない。(いや、本来は誰もがそうやって人生を歩んでいくべきであり、わたしたちにはその権利がある。ただしそれが侭ならないのがこの社会だ)
だからわたしは旅に出るのだ。自分ですべてを決定することを楽しみたくて、全部を自分の責任の下に置きたくて、それでわざわざ一人で海を渡るのだ。自分が本来持っている正確な五感と、天からの突然の声を感じたくて、重い荷物を抱え一人で海を越えるのだ。


だけどもわたしがまだ知らない、信頼できる誰かとの旅がこの先の人生にあってもいいじゃないか。今はそう思えるようになってきた。一人ならではの醍醐味もあるが、二人だからこそ得られるそれもきっとあるのだろう。そのどちらも楽しむことができれば、わたしの旅も人生も、もっと面白くなるのかもしれないな。




ありがたく生命維持活動に使わせていただきます💋