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wawabubu
2021年9月7日 16:22
みんぱく(国立民族学博物館)の帰り、山田駅へ向かう道すがら、おれたちは言葉少なだった。「暑いなぁ」口を開けば、そんな言葉しか出ない。大阪モノレールが頭の上を通過する。「ヒロ君、あんたの部屋に行ってもいいよ」「それは…どういうことや?」「言わすの?あたしに」上目遣いに、尚子が訊く。二人っきりになってもいいと、彼女がサインを出しているのだ。「わ、わかった。汚いとこやけど来て」「それ
2021年9月7日 14:05
「駒乃湯」はこのあたりの銭湯である。おれは、ここしか銭湯を知らない。京阪電車の車窓からもこのすすけた煙突を見ることができる。石鹸会社のロゴの入った、大きく「ゆ」と抜かれた藍の暖簾が重く垂れている。番台には、度のきつい眼鏡の老婆が座り、いつも目の前に置いた小さな画面のテレビを観ている。テレビはもう一台、脱衣場の、見上げたところにも大きいのが据えられ、皆が見られるようになっていた。今は、