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第3章「自分が変化したいくつかの話」#27そんなことを考えながら、オージーのおじさんが消火器をぶちまけている。

英語で怒れるようになった。私、強くなったなあ。

2018年10月
オーストラリア・パース

私が住み込んでいたホステルは、常連が多かった。
ホステルでエクスチェンジジョブ(住み込む代わりにホステルのを仕事をすること。筆者は受付)の夜間受付をしていたある日

11ヶ月間いた中で、多分一番の常連のおじさんがいた。

パースでは、マイニング(鉱山業)で出稼ぎに行き、束の間に休暇で帰ってくるキーウィやオージーが多かった。
うちのホステルは安宿なわりに個室、しかも中心部なので、2週間滞在などの彼らに重宝されていた。

おじさんも、その1人。
お酒が大好きらしく、よくお酒を差し入れてくれた。
時々、共用スペースで一緒に飲むこともあった。

その時から、酔いすぎると暴走するなとは感じていた。

そして、その日は来た。

夜中の11時過ぎ。

宿泊客のイタリア人の友達が慌てて私のところに来た。

「おいバン!やばいよ、おじさんが消火器ぶちまけてるぜ!!」
「は?なにそれ??」

言われた場所に行く途中の廊下は白い粉まみれ。
フロント近くのドミトリーのドアを見ると、白い粉の山がこんもり。
階段の前には悲しく横たわる消火器。

当の本人は玄関の格子の柵を逆方向に押し軽めに破壊。

[I cannot go out from here—— Damm!!]
[外に出られねーよ、なんてこった]

と叫んでいる。

おい、まじか。

正直、その日は別の仕事で忙殺され、かなり疲労困憊。束の間賄いを食べている時で、めちゃくちゃ邪魔されたくなかった。という心情も後押ししたと思う。

[Are you gonna back to your room or not?]
[おじさん、外にそのままいるの?部屋に帰るの?うち、疲れてんだけど。]
[Oh— I’m sorry…ヘラヘラ]

私のものすごい形相に気付き、我に返ったのか、
そのあとものすごい勢いで謝り始めた。

ごめん、本当にごめん、僕が片付けるよ。ごめん。

こんな感じで。(ろれつまわってない)

190センチぐらいの身長
タトゥーがいっぱい入ったオージーのおじさんに、
こんな破茶滅茶なことされて、詰め寄られたら、

昔の自分だったら、

言ってる意味を理解するのに精一杯だし
大男が迫ってきて怖いし、
なんて言ったらいいか分からないし

で、きっとなにもできずにオロオロしていただろう。

しかし、今までの経験は私を強くさせたようだ。

「Please back to your room right now. PLEASE.」
[今すぐ部屋戻って。い・ま・す・ぐ・に。]

私がスタッフだから片付ける。もういい。早く戻ってください。

何度もおじさんに言い聞かせ、部屋に戻らせ
オーナーに連絡し証拠写真を送付
速やかに掃除

小一時間で全ての処理を終わらせた。

疲れてるのにもう。ふん。
そんな気持ちで終われている自分の行動を後日考えてみたら、

わー強くなったなあ。となんだかしみじみ。
喜ばしいことと受け取っておこう。笑

後日談
おじさんが次の日、本当に申し訳なかったと菓子折りを持ってきた。
オーナーに厳重注意され、その後はお酒の量も調整するようになったようだ。

誰がきても、よっぽどのことは動じない、対処する力。
英語環境でそれができるようになった自分にびっくりした。

このホステルは、格安ゆえに本当にたくさんのタイプの宿泊者がやってくる。

なんなのー!!!と泣き寝入りして落ち込むより、

うわ、もう笑うしかない。こんな人も世の中にはいるもんだ。と思う方が気が楽なことを学んだ。

もちろん、怖い人もいた。

[Leave me ALONE!!!]
[1人にして!!]

とブツブツ唱えながら、ホステルの中庭を延々と回るおばさまがいて、誰かが止めようとすると、狂ったように叫び出すのだ。
2日連続で叫び続けた為、
流石に、優しいオーナーもブチギレて警察を呼んで追い出した。

私が心鍛えられたのは、どんな時も私を気にかけてくれたこのマレーシアンのオーナーがいたからだ。
どんなに嫌なことも、他の仕事の辛いことも、なんでも相談に乗ってくれた。
何かあれば、彼に言えばなんとかなる、そんな心の余裕がとても重要であり、心落ち着かせて物事を対処できるようになる。

人は、支えられて、強くなる。
だから、いつも感謝を忘れずに。

いろんなことをたくさんの人から学ぶ。ワーホリって面白い。

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