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愛するクラブがくれたもの【10】

V・ファーレン長崎を愛するサポーターの方からお話を伺い、応援することで得たもの、楽しさを多くの人に広める「愛するクラブがくれたもの」。
第10回は「しんさん」よりいただいたお話です。

※サムネイルの写真は2017年、昇格を決めた讃岐戦のもの。

長崎で生まれ育ち、スポーツ観戦が好きなしんさんにとって、V・ファーレンは悲願の「本物」でした。


テレビを通したスポーツ観戦に夢中だった学生時代

学生時代までを長崎県内で過ごした私は、幼いころからスポーツ観戦に興味を持ち、テレビを通してプロ野球やJリーグに熱中していました。
ところが、いつ頃からかそれは「どこか遠く、テレビの中にあるもの」へと変化し、傍観者として観ているだけ。そんな気持ちが芽生えていました。

年齢を重ねるにつれ、プロスポーツチームのない長崎に対して「何もない。つまらないところ」という思いを抱くようになり、社会人になるのを機に故郷を離れる道を選びました。

移り住んだ街で熱中するも、感じたもの足りなさ

その後はプロ野球球団やJリーグクラブがある街に移り住み、身近となったチームのファンとして再び熱中。
頻繁にスタジアムに足を運ぶようになります。
優勝や日本一。または昇格や降格。このような場面をスタジアムで目の当たりにすることは、非日常の興奮を味あわせてくれるものでした。

しかし同時に、何かもの足りないというような感覚も抱いていたように思います。
やはりどこか一歩引いた感覚で観ていたのか、特定のチーム、選手に夢中になることはありませんでした。

心が躍った、V・ファーレンのJ2昇格

そんな時、V・ファーレン長崎がJ2リーグに昇格したことを知りました。
長崎県外に引っ越していたこともあり、それまでV・ファーレンのことはほとんど知りませんでした。
しかし、Jリーグ参入の知らせを聞き「長崎に何か新しいものが生まれるのでは」。そんな予感に、心が躍ったことをよく覚えています。

その後、2013年5月3日のギラヴァンツ北九州戦にて、「県総(長崎県立総合運動公園、現・トラスタ)」で開催された試合を初めて観戦。ゴールデンウィークの連休で、ようやく初観戦の機会を得ました。

トラスタと空(しんさん提供)

目の当たりにしたのは、長崎のクラブが、長崎のスタジアムで、長崎の勝利を願うサポーターの前で懸命にプレーする姿。
誰かの真似ではなく、長崎県出身者の私だからこそ心底夢中になれるもの。
そう直感したことを、今でも覚えています。

また、それまで博多の森球技場(現・ベスト電器スタジアム)や国立競技場などでJリーグを観戦してきましたが、それと同じものが長崎に存在することに、不思議な感覚を抱きました。

「本物」を引き継いでいけるように

V・ファーレンは参入初年度からJ1昇格プレーオフに進出するなど、健闘をみせていました。ただし、集客は決して順調ではなかったように思います。
また、当時のスタジアムの観客は私も含めて中高年が多く、若い人が少なかった印象でした。クラブ経営も厳しいという話も漏れ聞こえていました。

2015年5月3日・岡山戦(しんさん提供)

ようやく長崎に生まれた「本物」を、多くの方が知らぬまま手放すことがないように。
「本物」のこのクラブを、次の世代に引き継いでいけるように。
V・ファーレンを応援する気持ちは、いつしかこのような思いを含むものに変わっていきました。
と言っても、私にできることは年間数試合を現地で観戦することぐらいでしたが。

2017年には経営危機が訪れましたが、ジャパネット体制へ移行し、J1昇格を達成。その後は目まぐるしい変化と目覚ましい発展を遂げています。
せっかく手にしたものを失う不安は、杞憂に終わりました。
今、トラスタには若い人たちの姿が溢れ、逞しく勇ましいゴール裏が最高の雰囲気のスタジアムを演出してくれています。

トラスタに向かうまでの道のり(しんさん提供)

願いは、すべての長崎県民の誇りとなること

私は現在も県外(福岡市)に在住していますが、近々、長崎県に帰住する予定です。
V・ファーレン長崎の応援を通じて、SNSなどで長崎に住む方々と繋がり、長崎の情報に接するにつれ、故郷への思いが大きくなっていったことが理由です。
また、家族に会うことができる、というのも大きな理由です。年齢を重ねるにつれ、家族の近くで生活したいと考えるようになりました。

今年10月には、長崎スタジアムシティが開業します。
V・ファーレンにヴェルカも加わり「何もなかった長崎」から「長崎にしかないもの」が続々誕生します。
スタジアムシティの成功は間違いないと思います。

願わくば、長崎市のみが盛り上がるのではないように。
これまでのV・ファーレンの存在がそうであったように、県北部や離島も含めたすべての長崎県民が「私たちの!」と誇れるものになることを切に祈ります。

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