技術は受け継げない。
伝統工芸の技術に関して軽い誤解が蔓延ってないか?
とちょっと心配になりましたので書きます。
技術の継承とか、つい言っちゃいますが、
基本、技術って、受け継げません。
各々が、頑張って身に付ける、それだけです。経営基盤みたいなものとは事情が違っています。
(ロマサガ2みたいな感じだと楽なんでしょうが・・。)
スポーツ、サッカーでいうと、中村俊輔のフリーキックって受け継ぎようがないものですよね。だから、サッカー日本代表にとっては、これはもうずっと10年くらい「失われた技術」のままです。とてもイイものなのに。
・・・イチローのバッティングも、浅田真央のスケーティングも然り。
技術は身体と分かち難く結びついている。(=本田圭佑の無回転シュートは、あの比類なきフィジカルあってのもの。)だから、世代交代の度に失われる他、仕方がない。
スポーツだとコレ、当たり前。
ところが、伝統工芸だと受け継がれているという錯覚が発生してしまっているように思います。伝統というぐらいだから、受け継いでいるのだろうと期待されるのだと思いますが、もう全然、無理です。
やはり身体は世代を超えて受け継げませんから。だから、作り手は、いつもの時代も頑張って己の腕を磨いている訳です。
受け継いでいるのは、技術ではなく、技「法」=「ルール」。
でも、受け継がれているものがあるでしょ?それは何?
というと「技法」です。
個人的な解釈になりますが、
この技「法」はスポーツでいう「ルール」を表しています。「ルール」が何百年も変わらないから、世代を超えて同じ土俵に上がれる、という理屈です。
(技術を学ぶとか言ってるのは、実は「ルール」を把握する段階で四苦八苦している程度の話にすぎないと思います。ルールの習得がまず難しい。そういう意味では、麻雀や将棋と大して変わりません。)
めっちゃくちゃ長い間ルールが変わらない(・・起源も不明だったり) &めちゃくちゃルール通りにやるのが難しい、というのが伝統工芸という競技?の特徴です。
厄介この上ない特徴のようですが、プレイヤー視点でいうと、習得するまでは大変だけれど、一度ルールを身につけてしまえば、同時代のプレイヤーだけでなく、歴史上の人物といった名プレイヤーとも競うことができる、そういう魅力もあります。
(ただ、察しの良い方はお気づきかと思いますが、現代と過去、どちらの作家が優れているか、完全に比較することはできません。時代背景がどうしても違うから、です。
メッシとマラドーナ、どちらが優れているか?というヤツと同じです。
戦術やインテンシティが違っているので、究極的にはやはり比べられない。好みの問題にすり替わらざるを得ない。)
工芸とスポーツ、発展の構造は同じか?
こういう話をしていると、
「でも、技術の全部は継承できないとしても、受け継がれている伝統美みたいなものが、ちゃんとあるじゃないか。」
と好意的な意見を寄せてくださる方もあります。
ありがたい限りですし、なるほど、ご指摘の点に伝統工芸がサバイバルできた理由があるのかもしれない、と思えます。
作り手にとっては、ルールを守っていればそれなりのものができるし(質の保証)、また、やっているうちに、ついつい技術を磨きたくもなる(質の向上)。敷居は高いものの、そこには特有の引力のようなものが、確かにある。
作り手は、引力に導かれるままに、質の向上それ自体が目的化している面も否定できない(つまり楽しんでいる)。が、鑑賞者、ユーザーにとっては、質の保証と向上は歓迎すべきものに違いなく・・・。
一生懸命技術を磨いていたら、それだけで皆んなが応援してくれる構造が出来上がってると思うのです。
(この辺りも、スポーツと似ているのではないか、と思います。面白い競技に出会って没頭、自分の限界に挑戦していたら、皆んなが感動してくれたり、サポートまでしてくれる.
伝統工芸の作り手も、アスリートみたいにスポンサー契約とかする方がいいのかもしれません。)
優れた「ルール」を昔の人が考えてくれたから、もはや人気競技と言えなくなった現在にあっても、今だにどうにか細々と受け継げている、それが伝統工芸の実際なのかもしれません。
昔の人は、やっぱり偉かった・・。感謝を忘れてはいけませんね・・。
技術は受け継げない。
だから、いつの時代も腕を磨いている。
技術は受け継げない。
だから、作り手は、いつも頑張って腕を磨いているし、
それが生きがいにさえ、なり得る。
そんな理屈に少しは納得していただけたでしょうか・・?伝統工芸にちょっと興味が湧いた、応援したくなった、という方があれば、
シメシメ・・です。
身体のバックアップ、SFな技術が実現しない間は、技術は当代限りのものといって過言はありません。なので、これはという技術の持ち主、御眼鏡にかなう作家、職人と出会えたら、是非、目一杯サポートしてあげて下さい。
あとあと後悔しても遅いですから。
(↑あ、これも伝統的な脅し文句ですね。笑)
瑞々しくきらびやか。「これからの金彩」を模索しています。 ▼instagram https://www.instagram.com/takenaka_kinsai/