滴る思い

開け放した窓の網戸越しに見える
霧雨を眺めていた。

仕事は私が1人いなくても成り立つ。

極端な話、いてもいなくても
誰も気付かない。
いやみんな気付かないふりを
しているだけなのだろうか。

現に今日はもう10時で、
始業時間から1時間も経っているのに
会社からは連絡が来ない。

雨の日は憂鬱だ。

直径0.5mmの霧雨の落下速度は、
毎秒70cmらしい。

1分で42メートル、1時間で2.5キロ
進むことになる。

私が会社に行かず家で過ごした1時間で
今日の雨達は2.5キロ進んでいた。

なんとなく、もう少し早く進むように
思えた雨の鈍間な歩みに親近感を覚える。

「この雨は、1年でどのくらい進むんだろう。」

「そして私はこの1年でどれくらい
進んだんだろう。」

雨が1年で進む距離を計算するのは
めんどくさくて、ベッドに雪崩れ込んだ。

なんとなく1年前から全く
同じ場所に留まっている気がする。

来年で30歳という節目を控えて、
殆どの同級生が家庭に入っていった。

なんとなく結婚する気にならなくて、
5年付き合った彼氏と別れたし、
その後紹介してくれるっていう
友達の誘いは億劫で、断ってたら今独り。

「別に嫌じゃないんだけどな。」

周りの目とか言葉の端々に
負い目を感じる時がある。

「女ってめんどくせえ。」

5月病で会社に行く気になれず
部屋から春雨を眺めていたら
12時を回っていた。

直径1mmまではほぼ球形を
している雨だが、より大きくなると
底面が饅頭型になり、直径8mmの粒は
空気抵抗に耐えられなくなって、
地面に到達する前に破裂する。

霧雨に似ている自分の歩みは、
地面に辿り着けるのに
どこにも辿り着けない雨粒が
あることに安堵した。

雨の解釈は国によっても異なり、
雨が多いイギリスなどでは
悲しいイメージとして捉える傾向が強い。

対してアフリカでは、
恵みの雨として幸福の象徴と捉える。

その為に重要視されている仕事が
雨乞いだ。

私はもし雨乞いの一族に
生まれ変わっても、
今みたくサボってしまい、
職務を全うできず、村八分にされて
今みたく、誰の目にも留まらず
隠れて生きていくのかも知れない。

そんな途方もない妄想に
なんとなく悲しくなった。

雨は気付いたら止んでいて、
コンビニに向かう。

道すがらなんとなく、
今週末は久しぶりに
綺麗な格好をしてみたいと思った。

暫くユニクロの服しか着ていない。

異なる形の雨粒が色んな解釈を
生むであろうワンピースを着て、
出かける相手を見つけたくて、
大学時代の同級生に

「今週末は晴れるみたいだね。
なんとなくどっか遊び行かない?」

とLINEしてみた。

https://plentyofsuns.com/#1

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