脱落博士奮闘日記①

※今回の日記は自身が博士課程にいた記録として残しておきたいために書きます。大変個人的な内容となっておりますので、興味がある方はお読みください。

就活に苦戦している。まず中途採用は職歴がないということで50社近く出したが全滅だった。色々と思いの丈を書いていこうと思う。

企業の人が博士の評価の仕方を分かっていない

今回の就活面接で1番感じたこと。博士課程に在籍した人間なら研究で培った論理的思考力や問題解決能力をアピールしたいところだが、採用担当者はイマイチピンときていない。つまり、現在の業務に合う人間は人事が経験してきた人としかマッチという判定を下せないのである。そのため、人事が博士課程を経験していない人なら博士課程で得られる価値はわかりかねるだろう。だからこそ質問してくれないので自分からどんどん開示していく必要がある。

論理的思考力や問題解決能力は全ての土台

論理的思考力や問題解決能力は博士課程を経験した人間なら誰しも有していたいところだ。実際に研究を進めるには自分で論文を読み込み、実験系を構築し、実験して、結果を考察し次の仮説構築というサイクルを回し、3年間以上にわたり幾つもの課題をクリアした結果、学会や論文発表という成果を挙げることが出来たのだから、高い自走力が養われていると考えて良いだろう。実際にこれらはあらゆる職種に従事する上で役に立つ。いわゆる地肩が強いということだ。このポテンシャルをいかに人事に分からせるかが採用されるかの境目となる。

なによりも長時間研究で培ったタフさ

私自身、週6日12ー16時間のペースで研究室で研究していた。なにより自分の中でもクレイジーだったなと思うエピソードが研究費申請書類作成のために2ヶ月間、2日に1回の睡眠で行ったことだ。競争的研究費とは、研究者が研究を続けるために外部から獲得する資金のことである。これがなければ研究に必要な機材や試薬等を揃えることができず、研究者にとっての生命線のようなものだ。申請書類には研究背景、実験計画、これまでの研究業績などをA4レポート7枚程度で作成する。たったこれだけで合否が決まってしまう。そのため、研究者は申請書類の作成に心血を注ぎ、研究費獲得は研究者の仕事の中で最重要な位置を占めていると言っても過言ではない。

私は研究費申請書類作成のために、その言葉通り寝食忘れて取り組んだ。2日に一回しか家で寝なかった。うち1日は完徹である。眠くても1時間くらい眠気に耐えると覚めてくることに気づいてから、睡眠時間を削れるようになった。朝方にシャワーを浴びに一瞬戻り、また研究室へとんぼ返りした。一回も家で腰を下ろすことはなかった。家で寝ると寝過ぎてしまうからだ。シャワーを浴びに帰るときにあまりに寝ぼけすぎて、ラボスリッパ(便所のスリッパみたいなもの)で帰った経験が3回ほどある。玄関をみて「靴がない…!」と無駄に驚いた。(結局ここまでやって、研究費が取れたのは5回中1回だった)

企業側としてはワークライフバランスを意識はしていても、困難に当たるとすぐ挫ける人や仕事にほとんどコミットしないと言ったいわゆる地雷人材の採用を避けたいと考えている。博士課程の人間は研究目標を達成するためにそこら辺のブラック企業並みの働きを自主的に行っていたことはタフさとしてアピールできることだろう。


博士就活に解決方法はあるのか?

現状、2つの解決策があるように思う。

①人事に判断可能な資格を身につける

これは人事の評価軸に合わせてあげるということである。業務で必要な能力があれば、それを先回りして資格取っておくや、その業務関係のアルバイトを2〜3年経験しておくと言ったことである。長期が無理ならインターンで中期なものも検討していいだろう。また、作品が作れるものなら何かしら作品を作っておけばよい(IT業界で言えばポートフォリオなど)

②視点の違いを話し、ポテンシャルをアピール

これは新たな風を事業部に吹かせてくれそうだという期待感を持たせる手法である。主に大手に効きそうである。幹部候補生として雇ってもらうのを狙う。これは博士課程の人の中でも優秀な人間に限られるだろう。

博士が就活で不利な点

新卒博士は他の新卒と比べ差別化は図れているが、新卒にしては年齢が高くデメリットに感じる人事も多い。新卒全員に同じ研修をやらせる予定のとこなら、博士も同じにしていいか迷うところだ。また、専門性高いだけでそれ以外のことはできないという一般的な認識に支配されているところも多い。また、博士課程の人の中には指導教官から指示を受けてやっただけの人間も中にはいるわけで、人事からしたら言われたことだけやるタイプなのか自分で考えてやるタイプなのか判断をすることができない。後者を採用してしまったら企業としてはリスクを負う羽目になる。


ベンチャーで大活躍を目指す

博士の能力が「問題を見つけて解決できる能力」が本当なら、自分で問題見つけて起業したら?という意見がある。たしかにそうなのかもしれないが、就業経験がないにもかかわらず会社を建てるなんて木刀で練習せずいきなり真剣で勝負するくらいなかなかリスキーである。そのため裁量が多く、意見がダイレクトに経営につながるベンチャーで大活躍を目指してはどうか?たしかに安定はない。それでも上述の能力を本当に博士課程で培ったならある程度は活躍できて然るべしなのかと感じる。


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