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二つの塔
頑丈な鉄骨で構築された四角柱の塔が立っている。錆びた梁が上から下までを六つの立方格子に区切り、東側の面を太い配管が真っ直ぐに上行し、頂上で鋭角に折れ曲がって塔の中心を下行すると、やがて漏斗のような物体がそれを受け止める。海辺のセメント工場はとっくに稼働を止め、臓物めいた装置を内部に支え続けた塔も死んでしまった。夜になると、黒々とした塔のシルエットの天辺に紅い灯が二つ、中腹と下部に二つずつ、さながら亡霊の目のように点灯し、眼下のJR駅や国道を走る車を夜警のように見つめている。
セメント工場の岸壁から、さざ波が広がる海を隔てた埋立地に、繊維加工工場のプラントがある。海岸堤防沿いにカイズカイブキの並木が続き、内陸遥か遠くに縦横の配管で構成された塔が立っている。周囲は背の低いプラント設備とせいぜいが二階建ての建物。冬枯れた草地を吹く風。その姿は遥かなアリゾナの砂漠で孤立する巨大な石柱を想わせる。昼間は背の高過ぎるジャングルジムのようにも見えるが、夜になると、塔の上から下まで賑やかな照明が灯り、傍らの地上から立ち昇る水蒸気を白く照らしている。生きているのだ。
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